今年のウィーン・フィル(以下、Wph)のニューイヤーコンサート(以下、NYC)は、コンサートの3時間前に能登半島地震が発生し、日本での生中継は中止となりました。元旦の中継が無くなるのは人生初のことですが、被災者の方には心よりお見舞い申し上げます。筆者は昨年夏の段階ではNYCを観に行く予定がありましたが、キャンセルをして良かったと思っております。日本で大地震が起きている中で、優雅な気持ちでコンサートの実演を聴くことは難しいです。ダニエル楽団長がNHKの放送で日本で起きた大地震へのお見舞いの言葉と「美しく青きドナウ」は日本の皆様に捧げますと言う言葉は素晴らしい配慮だったと思います。今日のブログではWphメンバーとの会話を含めてのNYCの所感を書きたいと思います。


NHKによる録画放送が先週土曜日にありましたが、楽友協会ホール前で特設スタジオで収録しているのはNHKだけで、毎回、かなりお金をかけています。開演前は、昨年は環境団体による抗議騒動があり、警察沙汰になってました。確か、ホール正面左側にあるロレックス招待者専用の扉あたりでのアクシデントでした。ロレックス招待者の人数は多く、開演前と休憩時間は楽友協会のブラームス・ザール(小ホール)でレセプションを行なっています。今年は環境団体による抗議行動に加えて、テロ対策含めて、例年以上に多くの警察が動員されたいたようで、NHKの放送でも確認できます。


今年のティーレマンさんのNYCに関しては、ご本人が「実はニューイヤーコンサートの指揮は初めての曲が多いんです。ウィーン・フィルは何回も演奏していても、私にはそんな経験ないんです(^^)!」と皮肉ながら言っていたように、ティーレマンさんによるウィーンのワルツの指揮は合っていないのではと思います。Wphの楽団員はティーレマンのワルツは「遅くて重すぎ」、「ワルツを交響詩のように指揮する」などと言われていて、今回のNYCでの感動度合いは低かったです。筆者が特に気になったのは、「美しく青きドナウ」のコーダの前に、6秒ほどの長いパウゼを取っていた点です。確かにスコアには「G.P.」と書いているのですが、クライバーやカラヤンなどの歴代の指揮者がここで長いパウゼをする演奏を聴いたことありません。また第2部の前半では眠気を誘うくらい、少しだるく感じました。その後、ブルックナーからラストまではテンポ良い展開ではありましたが、昨年のNYCの方が圧倒的に良かったです。もっと気楽に指揮された方が良いと感じましたが、やはりティーレマンさんはワーグナーやブルックナーで本領を発揮される方であると思います。私の予想ではティーレマンさんのNYCの再登場の可能性は低いと思います(今年はブルックナーのメモリアルイヤーですので、ティーレマンさんになったと思います)。それに加えて、今回のNYCの聴衆のマナーが良くなかったと言われています。演奏中に話している人が多く、第2部冒頭の「くるまば草」序曲は比較的有名な曲ですが、曲の途中で拍手が起きてしまいました。この部分はCDではどうするのでしょうか。

かなり重い「美しく青きドナウ」の演奏


休憩時間のNHKの放映では、Wphの若手育成プログラムの様子が取り上げられていて、その中でティーレマンさんが若手のアカデミーメンバーに対してのアドバイスが秀逸でした。「皆さん、ミスを恐れてはダメです。萎縮するのが一番よくありません。人は、時には失敗も必要で、失敗しないと、何も生み出すことができません。」これは、多くのビジネスパーソンにも響く言葉ではないでしょうか。また、現地オーストリアのORFの放送では、休憩時間にブルックナー生誕200年と言うことで、↓の「ブルックナー: 発見の旅」と言う映像を流してました。


最後に、筆者は神経質なところがありまして、余計なことに気づいてしまうのですが、NHKの放送で12/28(プレビュー公演の前々日)のリハーサル映像が出ていましたが、その時のフルート首席はアウアーさんでしたが、元日の本番映像では別のフルート奏者でした。この理由は今度、機会があれはヒアリングしてみようと思います。

12/28に行われたリハーサル映像


1/1に行われた本番映像