2025年のウィーン・フィル(以下、Wph)のニューイヤーコンサートコンサート(以下、NYC)の指揮者はムーティさんにになりました。昨年末の当ブログではムーティさんになるのではと予想していましたが、その通りになりました。


この予想は、Wphの幹部や最古参のメンバーらと会話していると、ある程度予想ができます。WphのNYCの指揮者の歴史を簡単に辿ると、1979年のボスコフスキーまではウィーン生まれの指揮者が担当していましたが、1980年からフランス生まれのマゼールが7年間連続担当します。Wphを引退した方の話によると、当初のマゼールのNYCはあまり評価できなかったが、だんだんとウィーンらしい演奏になってきたようです。そして、1987年のカラヤンからは毎年、指揮者が変わることになりますが、Wphとしては毎年の人選はかなり慎重だったそうです。カラヤンの後は、アバド、クライバー、メータ(インド出身ですが、ウィーン国立音楽大学卒)とウィーン音楽を指揮できる人選でした。1991年には初のアメリカ出身のバーンスタインが指揮する予定でしたが、NYCの2ヶ月半前にバーンスタインが他界し、代役としてアバドが指揮しました。ここで、NYCの指揮者の人選の法則が導いだされます(この法則はWphメンバーとの話によるものです)。


(1) ウィーン・フィルとの関係性が長く、定期演奏会やザルツブルク音楽祭でのコンサートに常連であること

(2) 同じ指揮者は2年連続登場しない(視聴率やCDの売上などの観点から2年連続だと弱いです)

(3) 指揮者の年齢が50歳以上が望ましい(やはり全世界で生中継している大仕事なので、経験を積んだ指揮者が望ましいようです)


以上が何となくのNYC指揮者の人選の法則ですが、(3)の原則を外したことによる失敗したNYCが、ドゥダメル(2017年)とネルソンス(2020年)です。二人とも30代から40代でのNYCデビューでしたが、映像や録音を聴いても失敗作だと思います。二人ともその後、NYCの指揮者に呼ばれてません。加えて、複数回にわたってNYCを指揮していないのは、カラヤン、小澤くらいですが、カラヤンは晩年でしたので仕方ないです。そのくらい、WphのNYCを複数回指揮するのは難関なのでしょう。ウィーンフィルの古参メンバーからは、クライバーのNYCが頂点で、次に1987年のカラヤン、2023年のウェルザー=メストが優れていたと言われてます。来年のムーティさんのNYCは7回目の登場ではありますが、独特のテンポでウィーンの舞踏会の音楽に馴染まない演奏なので、あまり評価されてません(今年のティーレマンさんはもっと酷い評価ですが、これについては明日書きます)。女性初のNYC指揮者が一部で期待されてますが、もし女性指揮者ならシモーネ・ヤングが一番可能性があるでしょう。彼女はウィーン国立歌劇場およびウィーンフィルのコンサートの女性初の指揮者としてのパイオニア的な存在ですが、上記の(1)の条件があまり基準に達してません。彼女がこの数年でウィーンフィルの定期演奏会に指揮するのを見たことないですし、ザルツブルク音楽祭のコンサートを指揮した記憶がありません。


ちなみに、昨年発刊された下記の↓のウィーン・フィルに関する本はかなり詳しく裏側を紹介していますが、その中で1989年にクライバーがNYCに初登場する際に、キャンセル魔で有名だったクライバーの代役として、アバドがNYCの当日に楽屋でスタンバイしていたと噂が書かれています。この噂については、以前からWphの古参メンバーらに何回か尋ねたのですが、「アバドがたまたま招待されていたんじゃないの」とか、煙に巻いてこの問いと関係ない話をする人ばかりで、この噂話はかなりの緘口令が引かれているように感じます。


明日は今年のNYCの感想について、WPhメンバーの感想を踏まえて、ブログしたいと思います。