今日の都響サントリー定期は、ポーランドの指揮者・ヴィトによるポーランドの作曲家のクリスマスをテーマにした2曲に加えて、やや浮いた形で反田恭平のピアノによるラフマニノフの2番です。反田のコンチェルトがショパンであれば、ポーランドの作曲家に統一できたのですが、ショパンのコンチェルトは先月も弾いているので、今日はラフマニノフなのでしょうか、あるいはラフマニノフ生誕150年記念だからでしょうか。


前半の1曲目は、映画音楽で有名なキラールによる「前奏曲とクリスマス・キャロル」ですが、今日のプログラム・ノートのp37によると、「(キラールは)1970代になると、前衛から距離を置いて、1972年に発表されたこの曲はその先駆の一つ」とされていますが、聴いている感じですと、まだまだ前衛的な曲だと思えます。冒頭の第1部と第3部は、1st VnとVcの後ろにオーボエ奏者が演奏していました。優しいオーボエと弦楽は前衛的で全くクリスマス感が無く、周りの観客の方が眠り始めます。シンプルな音型が続くので、眠気を誘うのでしょうか。第2部は神聖な雰囲気ではありますが、クリスマス感は無く、単調な旋律が続きます。隣と後ろの観客のイビキが協奏曲のように重なって聴こえます(^^)。第3部は第1部と同様な旋律で、クリスマス感を全く感じず、終わってしまいます。ここで、日本一目立つサスペンダーおじさんが遅れてホールに入ってきて、ご自身の脚できちんと歩ける状態ではなく、車椅子で扉まで入ってきますが、であれば車椅子席に座れば良いのに、彼のわがままでサントリーホールのスタッフ3人が支えながら、最前列まで誘導しており、ホールスタッフが大変そうでした。このサスペンダーおじさんは不動産持ちで、昔からほとんど仕事していませんが、主催者泣かせのクレーマーですので、早くご引退して頂きたいです。

前半の2曲目のラフマニノフの2番は反田が何度も弾きこなしているので、安定感のある演奏ですが、反田とマエストロ・ヴィトとのコミニケーションがうまくいってないように思います。この曲の冒頭はピアノ・ソロから始まりますが、ヴィトが30秒以上、指揮の準備で構えているのに、反田はなかなか演奏しません。先月のギルバートと反田とのコミニケーション・ロスを感じましたが、最近の反田はマエストロとのコミニケーションを疎かにして、独自に進める傾向があり、反田のこのような姿勢が続くと、あっという間に欧米のオケのソリストとして呼ばれなくなると思います。また、この曲で眠気を誘うことはあまり無いのですが、今日の第2楽章は筆者にも眠気を誘いました。オケとピアノが合っていないところがありましたが、反田はいつものように前傾姿勢で、スムーズに演奏していました。第3楽章では緩急を強調していたと思います。アンコールは、先月のNDRエルプフィル来日公演と同じ「献呈」でした。


後半は、指揮者と作曲家として活躍したポーランドのペンデレツキによる「クリスマス・シンフォニー」ですが、こちらもクリスマス感がありません。初めて聴く曲ですが、プログラム・ノートの小室さんの解説は構造的に分かりやすく、スコアに表記はないですが、便宜的に第1部から第6部に分割しているため、この曲の全体像が理解しやすかったです。しかし、第1部から暗い旋律で始まり、クリスマスと言うよりは、冷戦時代の暗くて混沌とした社会や死をテーマにしたようなイメージがあります。この曲も眠気を誘うテイストがあり、隣のご婦人は今日の3曲全部で寝ていました。寝るためにサントリーホールに来たことになります(^^)。「きよしこの夜」の旋律が一瞬ではありますが、第1部・第3部・最後の第6部に出てきますが、第3部は亡霊のように出てくるだけで、この曲は全体的に暗い旋律で進みます。第6部での「きよしこの夜」が一番クリアに聴こえてきましたが、一貫してクリスマス感がありませんでした。筆者はヨーロッパには200回以上渡航していますが、ポーランドにはワルシャワ、クラクフ、アウシュヴィッツを一度訪問して、独特の街と人々の暗さと、食事が美味しくないので、再訪したことがありません。ポーランドの暗雲立ち込める雰囲気が今日の曲想にも影響されているのでしょうか。クリスマス感を感じたのは、サントリーホールのロビーの装飾くらいで、音楽としてはクリスマス感はありませんでした。ヴィトの指揮はずっと眠気を誘うもので、カーテンコールも緩い感じでしたが、都響の演奏能力は秀逸でした。今年のコンサートは残りは第九の2回のみで、通常のコンサートは今日が最後ですが、内容的には少し期待外れの残念な結果でした。

ヨーロッパでのクリスマスはイギリス、ドイツ、イタリア、チェコなどそれぞれの国で過ごし方が異なるので、今日のコンサートを通じて、クリスマスの多様性を感じました。

(評価)★★ あまりクリスマス感がなかったコンサートでした

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演


指揮:アントニ・ヴィト
ピアノ:反田恭平
東京都交響楽団
曲目
キラール:前奏曲とクリスマス・キャロル(1972)
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 Op. 18
ペンデレツキ:交響曲第2番 「クリスマス・シンフォニー
《アンコール》
シューマン(リスト編曲):献呈(ピアノ・アンコール)