今日の午後は本来はイスラエル・フィルを鑑賞予定でしたが、既報のとおり、イスラエルとハマスの衝突で、イスラエル・フィルの来日公演は中止となりました。ここにきて、イスラエルの国家運営やパレスチナ系との対立激化により、しばらくイスラエル・フィルは国外での演奏会はできないでしょう。とても残念なことです。イスラエル・フィルの来日公演中止は公演の3週間前に発表されましたが、日本でのコンサートの主催者は一般的にどれだけの損失になるのかをざっと書いていきたいと思います。


1)オーケストラとの契約

オーケストラとの契約書(出演者のギャラなど)の個別ケースによりますが、オーケストラが来日できない場合は契約不履行で解除ができ、契約面での損失はあまりないです。もちろん、契約までの打合せや出張費などの諸費用がマイナスになります。


2)プレイガイドへの手数料

コロナ禍含め、これが1番大きな損失になり得ます。プレイガイドは中抜き産業の最たる存在で、チケットが売れた場合の手数料が約10%だとすると、公演中止によるチケット購入者への払い戻し際の手数料も約10%発生し、公演が中止になった場合は1枚あたり合わせて20%の手数料を主催者はプレイガイドに払わないといけません。例えば、チケット価格の平均が20000円程度だったイスラエル・フィルが仮に完売状態だった場合、サントリーホールは2000席なので、約800万円の手数料をプレイガイドに払う必要があり、これが最大の損失項目になります。サントリーホールの使用料が1日300万円程度ですので、これは音楽事業者にとってはかなり痛手だと思います。プレイガイドの中抜きなどの批判は様々な方から問い合わせがきており、この件はまとめて後日解説させていただきたいと考えております。


3)飛行機、ホテル、バスなどの旅行関連

オケメンバーたちのアゴ・アシ・マクラ部分ですが、音楽事業者は大手の旅行代理店と丸ごとお願いしていて、キャンセルするタイミングにもよりますが、旅行代理店との関係性や交渉などにより、キャンセル費が無しまたは僅かな金額で済む場合もあるそうです。旅行代理店はこの点、プレイガイドとは異なり、弾力的に対応してくれます。


4)広告宣伝費、ホール使用料

公演中止に伴う損失費用としては、広告宣伝費(チラシやぶらあぼの広告など)ですが、これは公演の規模にもよりますが、1公演あたり100-150万円が相場でしょうか。また、ホールのキャンセル費用は、それぞれのホールの規定によりますが、公的なホールは理由によってはキャンセル費は取らないところが多いです(コロナ禍の時もそうでした)。民間のホールですと、キャンセル・ポリシーはバラバラですが、これもホールとの関係性で柔軟に対応してくれるホールもあるようです。また、11月のドレスデンの来日中止になった時に、ジャパン・アーツさんは別の公演を企画して行うことで、ホール使用料のキャンセル費を無しにすることもできます。

1番高いサントリーホールでも300万円ですから、前述のプレイガイドへの手数料が法外に高いことが分かります。これは、主催者泣かせの損失項目です。


補)興行中止保険で対応できるのか

コンサート(イベント)が中止の場合の興行中止保険というのがありますが、この保険料はかなり高く、この保険に加入しない主催者がほとんどではないでしょうか。コンサート事業収入の5%程度が保険料になり、中止になるリスクが低いとを考えると払いたくない項目です。興行中止保険は、例えば、スポーツイベントですと、競技ごとに雨による中止リスクが異なるので、野球は高め(ドームでない場合)、ラグビーは安めの保険料と決められていて、過去10年間の天気など調べて、個別に保険料が算出され、驚くくらいの金額になってます。やはり、保険会社はアコギな商売です(^^)。