ジョン・ウィリアムズ指揮サイトウ・キネン・オーケストラ(SKO)の公演では都響のコンマス・矢部さん含め、10人以上の首席レベルの奏者が参加していて、この時のメンバーは、中2日のコンサートなので、さすがに全員が今日の都響の定期公演には復帰していませんでした。筆者が見たところではコンマス首席の吉松さんが乗ってましたが、他の方は降り番のようでした。そのため、都響の演奏能力が少し不安が残ります。指揮のゲッチェルは良い意味でスコアに忠実で、あまり創意あふれる演奏をしないイメージがあるので、台風の状況次第ではサントリーホールに行くのをやめようかと思っていたのですが、雨が止んだので、ホールに向かいました。目的は、ヴァイオリン・ソロのネマニャ・ラドゥロヴィチです。日本ではあまり知名度のない鬼才と思っていたのですが、ホールには彼のファンクラブからの花が出ていて、一定のファンが日本にもいるようです。


ラドゥロヴィチはレゲエ風のロン毛で髭を生やし、真っ黒なスーツで黒の厚底靴を履いて、190cm近い長身で、堂々したオーラを出しながら登場します。ベートーヴェンのVn協奏曲は中学生くらいの時にはまって夢中に聴いていましたが、今はモーツァルト同様、あまり興味が薄いコンチェルトの一つですが、やんごとない風貌のラドゥロヴィチがどんな演奏をするのが楽しみです。指揮者とコンマスの山本さんの席までのスペースが広いので、ラドゥロヴィチが動きながら演奏することが想像できます。第1楽章がはじまり、ソロパートまで時間がかかりますが、笑顔でノリノリのラドゥロヴィチはソロパートの前に一部の1st Vnパートを一緒に演奏します。ゲッチェルの指揮はやや遅めのスピードで、たっぷりラドゥロヴィチ節のソロを聴かせてくれました。かなり艶のある音で、ところどころにジプシー音楽やジャズ風のテイストを入れながらも正統的な演奏しています。第1楽章のカデンツァは今日の演奏の白眉ですが、フリッツ・クライスラーをたっぷりと美しい旋律で表現していました。25分間以上続いた第1楽章の後に、ラドゥロヴィチはコンマスの山本さんとチューニングします。風貌とは違い、少し神経質な方なんですかね。第2楽章も比較的ゆったりとしてテンポで展開され、第3楽章のラストのカデンツァも秀逸で、ラドゥロヴィチは足音を何度も立たせながら「俺のカデンツァはこれなんだぞ!」と主張するような凄みのある演奏でした。今日のコンチェルトはラドゥロヴィチの一人舞台のように見えましたが、演奏後は一部の観客がスタンディングで拍手をするくらい期待に応えた素晴らしい演奏だったと思います。アンコールは、ラドゥロヴィチの同郷の歌手、スコヤコヴィッチの作品でした。ここで、既に20時近くになっていて、大満足でしたし、隣のお客様の体臭が微妙でしたので、前半で帰ることにしました。後半のコルンゴルドはゲッチェル指揮ですと特に特徴が無さそうなので、大変申し訳ございませんが、ここで失礼します。コルンゴルドは昨年11月のペトレンコ指揮ベルリン・フィルで聴いたのですが、インパクトが弱く、つならない曲だったので、少し苦手な作曲家です。


🔳デジタル・コンサートホール: ペトレンコがコルンゴルト指揮

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今日の曲目解説は2つの曲ともに丁寧に書かれていて、素晴らしい解説だと思いました。


(評価)★★★ ラドゥロヴィチの独壇場でした

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演

指揮/サッシャ・ゲッツェル
ヴァイオリン/ネマニャ・ラドゥロヴィチ

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 op.61

【ソリスト・アンコール】
ヤドランカ・ストヤコヴィッチ:あなたはどこに
 (ヴァイオリン/ネマニャ・ラドゥロヴィチ)