今日はネルソンス指揮のウィーン・フィルのコンサートです。ザルツブルク音楽祭のウィーン・フィルのコンサートは毎年5プロありますが、今年はティーレマン、ネルソンス、ムーティ、メスト、フルシャが担当し、いずれもウィーン・フィルとの関係性の良い指揮者です。現地で人気なのは、ムーティ、ティーレマン、フルシャの順にチケットが完売し、ネルソンスのチケットは当日でも余っていました。

(日本人の若い女性が当日券売り場で、€155からのチケットしか売ってないので、高いと言って、そのままお帰りになりました。円の弱さを示す象徴的な残念な出来事です)


前半は、アルバン・ベルクのヴァイオリン協奏曲で、ソロのハーデリヒは子供の時に全身の大火傷をして、復活してヴァイオリニストになった方で、今もお顔に痛々しい痕跡があります。彼は来年2月に来日予定ですが、かなり興味深いアプローチの演奏をする方なので、来日公演には行ってみようと思います。ベルクのコンチェルトは、なかなか主旋律がつかめないですが、ハーデリヒは思慮深く、感情を表に出さずに、何かを主張してるかのような不思議な演奏です。彼の中にはきちんとした世界観があるのでしょうが、ベルクの音楽自体が理解不明なので、結果、ハーデリヒの良さが伝わりにくいコンチェルトでした。アンコールはバッハの無伴奏Vnソナタで、深くて濃厚な音が出ていました。アンコールの映像は↓のリンクでご覧になれます。


ハーデリヒは来年2月に来日予定


ネルソンスは毎年のザルツブルク音楽祭のウィーン・フィルの演奏会ではマーラーを取り上げていますが(マーラー・チクルスと言って良いでしょう)、今年はマーラーの4番です。コンマスのホーネックさん、シュトイデさんの2人が座っており、第2楽章でお2人によるソロの部分もありますので、強力な布陣です。ネルソンスは、彼の最近の芸風となっておりますが、遅いテンポで始めます。彼の指揮ぶりは少し不器用な動きで、あまり巧いとはずっと思っていましたが、美しい旋律の紡ぎ方や出し方は、かなり巧いです。マラ5の第4楽章の雰囲気が随所に出ていて、全体としては美しいマラ4でした。第1楽章では謝肉祭のような写実的な表現が出てきたり、マーラー的な宇宙や天上を表現が出てきたり、俗世的な音楽と非俗世的な音楽が何度も往復して展開されます。このような緻密に計算されたマーラー演奏は珍しいと思います。終演後は、盛り上がって、ソロ・カーテンコールがあると思ったのですが、13時過ぎてのランチのためか、ソロ・カーテンコールはありませんでした。ネルソンスの公演は2019年以来なのですが、最近は横も奥行もかなり太りしたね。オケのコントロールはうまくいっているようですが、食欲のコントロールはうまく行っていないようです(^^)。日本ではお寿司を大量食いするみたいですが、食べ過ぎないようにして欲しいです。これ以上太ると、音楽的才能が勿体無いことになってしまいます。


(評価)★★★★ ネルソンスのマーラー演奏の深い解釈を堪能できました

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演


A.ネルソンス指揮
ベルク:ヴァイオリン協奏曲

マーラー:交響曲第4番 
独/A.ハーデリヒ, ヴァイオリン

C.カルク,ソプラノ