私的な現在の三大テノールは、フローレス、グリゴーロ、メーリだと思っており、このコンサートに行きました。ベチャワは昨年の8月のザルツブルク&9月のウィーン、今年の4月のウィーンで聴きましたが、演技力はあるのものの、声の線が細くなった気がします。カウフマンは昨年末のベルリンで明らかに歌唱力が落ちており、バリトンに近い領域でした。メーリは旧三大テノールで言うと、カレーラスを彷彿とさせる美声と歌い方です。メーリのオペラやヴェルディ・レクイエムは聴いたことがありますが、ソロによるコンサートは初めてで、メーリの歌唱を充分に楽しめるコンサートでした。メーリは歌い始めるまで、口を閉じながら、神経質に口の中を整えることをしていました。この神経質さによって音がはずないようにしているのでしょう。ここまで神経質な歌手はあまり見たことないです。

今回の曲目は前半はフランス・オペラから静的なアリアを中心とした4曲、後半はメーリの歌唱力が如何なく味わえるイタリアのオペラから動的な4曲でした。アンコールもトスカの「星は光りぬ」をはじめ、メーリの故郷のイタリアの3曲を歌ってくれました。前半の見どころは、3曲目の《ル・シッド》では崇高なアリアを見事に歌いきり、4曲目の《カルメン》ではカレーラスそっくりの歌い方で、美声を発揮していました。後半のイタリア・オペラはどれも、メーリの歌唱力が全開で、会場からは《フェドーラ》のアリアは絶賛ブラボーが出てました。指揮のチャンバは先日のパレルモ劇場のオペラを的確に指揮していた方で、存在感のあるオーラがありましたが、オケの東フィルが三軍レベルの見たことのない女性コンマスで、この方は終始、への字の顔でつまらなそうに弾いてます。他の東フィルメンバーもため息つきながらの演奏をしてましたから、期待できません。イタリア出身のチェンバはヴェルディの《運命の力》序曲などで、ヴェルディらしい音を出すために東フィルを煽りますが、オケが全然対応できていません。アリアの曲間の東フィルの演奏を聴いているのは時間がもったいないので、会場にいた脇園彩さんが代わりにステージで歌ってくれたから、メーリの曲間の序曲などは省略できて、より良かったと思われます。メーリには高齢女性のファンが多いようで、カーテンコールには前方席の高齢女性ファンがいち早くスタオベしてました。確かに、イケメンのカテゴリーには入るのかもしれないですし、メーリの笑顔が幸せオーラで素晴らしいです。この点も若きカレーラスに似てます。


(評価)★★★★ メーリの歌唱力を存分に発揮していました

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演


出演:
フランチェスコ・メーリ(テノール)
フランチェスコ・イヴァン・チャンパ(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

【演奏予定曲目】
マスネ作曲 歌劇「マノン」より “目を閉じると…”
マスネ作曲 タイスの瞑想曲

ラロ作曲 歌劇「イスの王様」より “いとしい人よ虚しくも”
マスネ作曲 歌劇「ル・シッド」 より
“ ああ!すべては終わった – おお裁きの主、父なる神よ”
ビゼー作曲「カルメン」より 第3幕前奏曲と“お前が投げたこの花は”


ヴェルディ作曲 歌劇「ルイザ・ミラー」序曲
ヴェルディ作曲 歌劇「ルイザ・ミラー」より
“ – 第2幕 ああ!自分の目を信じずにいることができたら!…穏やかな夜には”
ヴェルディ作曲 歌劇「運命の力」より 序奏と”天使のようなレオノーラ”のアリア
ジョルダーノ作曲 歌劇「フェドーラ」より 間奏曲
ジョルダーノ作曲 歌劇「フェドーラ」より “愛さずにはいられぬこの思い”

ヴェルディ作曲 歌劇「オテロ」より”神よ、あなたは私にあらゆる不幸を与えた”


《アンコール》

・ドニゼッティ:オペラ「愛の妙薬」より「人知れぬ涙」
・プッチーニ:オペラ「トスカ」より「星は光りぬ」
・レオンカヴァッロ:朝の歌