筆者は今年に入ってから、欧州に3回渡航しておりますが、その内、2回はドイツとイタリアでディレイ・ラゲッジ(飛行機寄託荷物遅延)にあっております。かつては、ロスト・バゲッジと言われましたが、最近では、ロスバケの定義は飛行機に預けた荷物が完全に紛失することを意味し、ディレイ・ラゲッジとは航空会社側では区別して扱っております。昨年末にウィーンに渡航した時は日本の航空会社から渡航前のメールで「ヨーロッパ方面への飛行機への預けた荷物が遅延することが多く、生活に必要な荷物は飛行機に手荷物として持ち込んで欲しい」と言う下記のメッセージが来たほどです。

フランクフルトおよび欧州内の空港の最新状況と影響についてご案内いたします。
【欧州内の状況】

 ・欧州主要航空会社の欠航便の増加
 ・欧州の主要空港における空港職員の人員不足による混雑
【影響】
1)乗り継ぎ
 ・お預けいただいた手荷物がお乗継便に搭載されず、最終目的地に届かない場合がございます。
  *手荷物のお届けに、平均して5日から10日間程度の日数を要する場合があります。
 ・お預け頂いた手荷物が最終目的地に届かないことに備え、身の回り品など、旅行中および
  帰国後に不可欠なものは、飛行機に預けず、機内持込みをお勧めいたします。

これを読んで、必要な荷物は全て機内に持ち込みたいところですが、ヨーロッパ系の航空会社は機内持ち込みの荷物の大きさと重量に厳しい場合もありますし、1週間以上の旅になると全て機内に持ち込むのは難しいでしょう。そこで重要なのは、飛行機に預けた荷物遅延で「生活必需品」対してカバーされる海外旅行保険です。この保険は日本発の直行便で乗り継ぎ無しで行けるヨーロッパの都市や、ハワイなどのアメリカの都市に行く場合は、あまり意味はありません。アメリカでは入国して乗り継ぐ際に荷物をビックアップしないとなりませんので、日本からの直行便であればアメリカの到着地でほぼ確実に届いてます。しかし、ヨーロッパの乗り継ぎのある都市へ行く場合は、先のディレイ・ラゲッジに遭遇する可能性があるので、この保険は重要です。かつては航空会社が遅れた荷物に対して、ビジネスクラスだと1件あたり10万円(シャツやコートなどの衣類含む)まで補償してくれたことがありましたが、例えば、現在のルフトハンザ航空は搭乗クラスに関わらず、1日あたり10000円程度しか補償してくれません。今年に入り、ドイツとイタリアの空港でディレイ・ラゲッジに遭った際に、空港係員からはスーツケースは滞在ホテルに早くても2-3日、通常だと4日以上かかると言われ、驚きました。また、空港からホテルまでの配送業者運搬が遅いので、スーツケースを空港まで取りに来た方が確実みたいなことも言われました。ヨーロッパは物価高および円安の影響で、日常の衣類やトイレタリー用品を買うと、かなりの費用になります。そのため、ヨーロッパへ乗り継ぎ便がある場合、別途、飛行機寄託荷物遅延をカバーする海外旅行保険に加入することをオススメします。例えば、損保ジャパンの保険は使いやすく、出発当日までにネットで保険加入できますので便利です(この保険は出発の2日前に加入すると飛行機遅延費用もカバーしてくれます)。



航空会社の補償が少ないとなると、クレジットカードを持っていれば、カード付帯の海外旅行保険が適用される(=自動付帯)から安心だと思われますが、これに関しては、カードによって保険適用されるかは異なりますので、注意が必要です。いわゆる保険の「利用付帯」というもので、例えば、アメックスやJALカードは、当該カードで航空券などを買った場合に適用されるなどの条件がありますし、カード付帯の保険での飛行機寄託荷物遅延の保険金額はせいぜい1件あたり2-3万円です。先の損保ジャパンや三井住友海上などの保険ですと、1件あたり10万円まで補償してくれます。例えば、日本が暖かい気候の時に、寒いヨーロッパ北部に行く場合に、追加でマフラーやコートなどの衣類を購入する費用を補填してくれるので、本当にありがたいです。クレジットカード付帯の海外旅行保険は死亡や手術などの場合はカバーしてくれるとなってますが、このようなケースはほとんどありません。ヨーロッパへよく渡航する筆者の経験ですと、明らかに飛行機寄託荷物遅延はよくあるケースですので、今後、夏休みなどでヨーロッパでの乗り継ぎがある場合は必ず海外旅行保険の飛行機寄託荷物遅延にかけた方が良いでしょう。しかも、1週間の滞在で3000円程度の保険料ですので、発生確率と保険内容からすると、かなりリーズナブルです。保険会社は「皆さまの安心を」と標榜していますが、あくまで利益追求企業であります。例えば、昨今の台風などの災害件数が多くなり、火災保険料が高騰してますし、昨年の1月のコロナ蔓延期ではコロナ保険を発売していた某生保は、コロナ感染者数が多すぎて、途中で保険の発売を中止するなど、保険会社はあくまでもアコギな利益追求企業なんです。そんな中、海外旅行保険の飛行機寄託荷物遅延は、穴場だと思います。今後、金融工学の専門家のいる保険会社はこの海外旅行保険の条件を見直す可能性はありますが、近いうちにヨーロッパに行く方はこの保険をうまく利用して、荷物遅延にあったら10万円までの衣類や化粧品などを購入すると良いでしょう。ちなみに、損保ジャパンと三井住友海上の両保険に入ると、それぞれから補償が受けれますので、1件あたり20万円までカバーされます。高級なシャツやスカートなどが生活に必要とされるものであれば、保険会社が払ってくれます。

一方で、可能性としてあり得る「携行品損害」は、スーツケースが壊れた、スーツケースの中身が壊れた、スマホが盗まれたなどに適用されますが、過去3年間で3回しか補償してくれず、保険会社間の情報ネットワークで過去の保険申請歴はチェックされるので、毎月のように海外に行く人は注意が必要です。しかも、携行品損害は100万円の時計が盗まれても、1件あたり10万円ですから、意外と使えない保険なんです。さらに過去3年間で3回携行品損害を申請した人は、海外旅行保険自体に加入できないと言う条件の保険会社もあります。これは、過去に海外に行く度に、デジカメが盗まれたなどと自己申告で申請したヤカラが多く、そのデジカメを質屋で売ったりしていたことが問題化して、携行品損害の制度が改悪・厳格化されたものです。この他には、病気の治療費用で、ほとんどの保険は歯科治療費用はカバーされないと言う例外的な条件がいくつかありますので、保険契約する際は注意事項をよくお読みになられた方が良いと思います。海外旅行保険には、穴場と落とし穴の両方が混在しているのです。