今日のフルシャ指揮ウィーン・フィルの公演(楽友協会主催)は、2022/2023シーズンのウィーン・フィル公演で最も期待していたコンサートです。フルシャは明日と明後日は同じプログラムで定期演奏会を行い、その後、欧州ツアーになります。今年の夏にもフルシャとウィーンフィルはザルツブルグ音楽祭の後に欧州ツアーに出るので、この両者の関係はとても良さそうです。また、今シーズンの10のプログラムのうち、2つはフルシャ指揮によるものです。ソリストは、マツーエフの演奏が聴けないご時世で、プロコフィエフの3番を聴くにはトリフォノフがベストでしょう。明日のブログで今年の来日公演のプログラムの着目点について語りますが、このプログラムが来日公演に入っていたら、かなり聴き物になっていたと思います。コンマスは昨日の「マノン」と同じシュトイデさん。昨日のマノンの演奏であくびを10回くらいしていたのは、この公演のリハでの疲れでしょうか。しかも、今年のニューイヤーに始まり、先月のムーティ指揮の定期に続き、シュトイデさんのコンマスの機会が多いです。他のコンマス3人はどうしたのでしょうか。


1曲目のヤナーチェクの「嫉妬」は初めて聴く曲です。オペラ用に作曲されたのですが、途中で断念し、この曲だけ独立して演奏されるようです。チェコ生まれのフルシャは、コンサートの最初にチェコ出身の作曲家を取り上げることが多いですが(今年2月のN響定期Bプロや8月のザルツブルグ音楽祭など)、この曲はチェコの民族音楽らしさは、あまり感じない曲でした。


2曲目のプロコフィエフのコンチェルトは期待通り、絶品でした。トリフォノフの弾くピアノは、ファツィオリかと思ってましたが、本日は久々のベーゼンドルファーです。このベーゼンドルファーがかなりの重厚音を出していました。冒頭からロシア人らしいパワフルな演奏で、演奏がない時のトリフォノフは哲学者のように中空を向いてます。緩徐部分では繊細なタッチで弾きながらも、豪快なプロコフィエフを久しぶりに聴きました。トリフォノフの完璧なテクニックと天才的な解釈による、このような名演はなかなか今後も聴けないかもしれません。アンコールはプロコフィエフのシンデレラで、一転して美しい流麗な旋律でした。


3曲目のショスタコ5は、何度も聴いておりますが、

フルシャの独自の解釈で、第1楽章はじっくりと遅めに、最終楽章の冒頭はかなり速度を上げたかと思いきや、終結部では堂々とした重みのある速度でオケをコントロールしていました。ピッコロを鋭く鳴らしていて、かなりスパイスの効いたショスタコの印象です。この曲の圧巻は悲壮感漂う第3楽章でで、指揮棒無しのフルシャの演奏はかなり重い演奏で驚きました。この曲の初演時に会場で泣いた聴衆がいたようですが、それが今回の演奏でよく実感できました。会場の観客も納得の盛り上がりでスタンディング・オベーションで終わりました。しかも、ウィーン・フィルがベルリン・フィル並みの爆音で、多くの奏者の揺れを感じる公演は久しぶりでした。


今日は楽友協会主催なので、アメリカからなどの観光客が多く、楽章間で拍手が出たり、楽章間がずっと騒ついたりしていて、フルシャが指揮するタイミングを遅れせる場面がありました。明日の定期演奏会も期待したいです。

(評価)★★★★★ 今日のプロコフィエフは久々の名演でした!

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演

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ヤコブ・フルシャ指揮

ダニール・トリフォノフ(ピアノ)


ヤナーチェク:嫉妬(序曲)

プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番

ショスタコーヴィチ:交響曲第5番