所用でイタリアに寄ってから、今日からウィーンにおります。ウィーンでの初日はマスネの「マノン」。フランス・オペラの典型のような音楽、ストーリー、舞台でした。
まず、シェルバンの演出手法が面白い。第1幕や第3幕などでの群衆は、↓の写真のように、オーケストラ・ピットの下手で歌っています。
ピットの下手から舞台には階段がかけられており、最終幕でマノンが息絶える時は、マノンが舞台からこの階段に倒れこみます。筆者は上手側の席でしたので、この様子がよく見えましたが、下手側の一部の席はこのようなシーンが観れないかもしれないです。
本公演の見どころは、マノン役のプリティ・イェンデでしょう。南アフリカ出身の38歳の黒人系ソプラノのイェンデでは、声質と体格がジェシー・ノーマンとキャスリーン・バトルの中間的なイメージで、声のハリも極めて良く、かなりの注目歌手です。2021月9月のシーズン開幕公演の椿姫で初めて彼女の歌を聴いて、スター歌手の一角になると確信しました。イェンデはウィーン国立歌劇場には定期的に出演しており、今年1月の「連隊の娘」でとイェンデが出演していました。また、昨日(5/3)には、イェンデがウィーン国立歌劇場でソロ・リサイタルをやるくらい、ウィーンでは認めてられており、日本でも新国立劇場さんかあたりが招聘してくれたら、かなりの評判になると面白いますが、既にイェンデは欧州内で引っ張りだこになっていると思われ、来日の可能性は低いかもしれません。前日に歌劇場の大空間でリサイタルをこなして、翌日のマノンですが、彼女らしいパワフルかつ繊細な部分もある素晴らしい歌唱でした。マノンの従兄弟のレスコーも、黒人系歌手でイェンデでと肌の色を揃えてキャスティングしているところが、ウィーン音楽界の人材の豊富さを感じます。相手役の騎士デ・グリュー役の線の細い歌唱でエレガントな歌唱でしたが、印象は弱かったです。オペラの巨匠、ド・ビリーは安定感のある音楽作りで、ブラボーも多かったです。舞台もフランスのらしさを感じ、ストーリーが追いやすい演出でした。総じて、今日はイェンデの活躍を十分堪能できましたし、イェンデの歌唱だけでなく、演技力も十分発揮されてました。カーテンコールのブラボーでは彼女が礼賛されてました。
コロナ前の例年のGWのウィーンは、気候も良いし、日本人が多いのですが、今年のGWは日本人観客が少なく、韓国・香港系の観客が目立ちました、やはり、円安でGWのヨーロッパ旅行は敬遠されているのでしょうか。その国の通貨の高さは国力を反映しているとも言われてますが、ユーロ円が高値水準なので、日本の国力の弱さを感じてしまいました。
(評価)★★★ イェンデの歌唱、ド・ビリーの音楽は素晴らしかったですが、他のキャストがインパクト薄かったです。
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*勝手ながら5段階評価でレビューしております
★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演
★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象
★★★: 満足、行って良かった公演
★★: 不満足、行かなければ良かった公演
★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演
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