アルプス交響曲に出てくるような不安定な天候の中、今日もパーヴォ指揮N響のAプロ2日目に行きました。目的は筆者の大好物のアルペン目的ですが、全体としては昨日の方が良かったかもしれません。「ヨセフの伝説」は昨日とほぼ同じ印象でした。パーヴォは昨日同様に無駄な指示を出さずにスマートに指揮をする余裕さを感じました。



後半のアルペンは昨日とは異なるものでした。「夜」「日の出」までは素晴らしい演奏で昨日の演奏を超える勢いがありました。ところが、「氷河」あたりから、トランペットとホルンの決定的なミスがあり、聴いている側としてのテンションが下がってしまいました。ここから、「頂点」でのマロさんと郷古さん含めた弦楽セクションが、金管のミスをリカバリーすべく、全身を動かしながら、オケとしての最大限のインパクトを出していました。ベルリン・フィル並みのパワフルさはこのセクションで感じましたが、これは昨日のTV収録とは異なると思います。筆者のアルプス交響曲の決定盤はカラヤン先生のものであることは昨日申し上げましたが、カラヤン先生盤を超える奇跡的なセクションが現れます。「終末」(Ausklang)からオルガンが加わる終末への旋律は、カラヤン先生の壮大で美しいアルペンを超えるものがあり、涙が出てきました。オルガンから始まるセクションは教会音楽で、その後のホルンとトランペットは天国へ導くような響きでした。この終末のセクションは、やはり単なるアルプスの登山の風景というよりは、人生を回想している深みのある音楽であり、カラヤン盤にはない美しさと哀愁が感じられました。NHKホールの大オルガンの音がこのセクションを拡張させた効果を出していましたが、今日のアルプス交響曲は前半の多少のキズはあったものの、カラヤン盤に並ぶレベルの素晴らしい録音になる可能性があります。パーヴォとN響のCDシリーズは購入したことはありませんが、今回のアルペンがエンジニアやプロデューサーさんによって、秀逸なCDなりそうであれば、必ず買うと思います。NHKホールのオルガンの前にもマイクが設置されてましたが、今後はエンジニアさんらの録音制作陣の力量によりますね。

今年の7月にギルバート指揮・都響によるアルプス交響曲がありますが、今日のN響のパワフルな演奏と比べると、都響は比較にならないくらい弱いですし、文化会館にはオルガンがないので敬遠しようと思ってますが、世界一のホルン奏者であるシュテファン・ドール(ベルリン・フィル首席)がアルペンに乗ると言うので、かなり迷ってます。

 

今回の奇跡的なアルペンは、N響とパーヴォのかつての首席時代の関係性を超えた信頼関係があったからこそと成立したと思います。N響の弦楽セクションが動きが揺れていたのは、先週のヤノフスキのマイスタージンガーをはるかに超えるほどの凄みがありました。昨年9月からルイージが首席になり、ヴェルディ・レクイエムをはじめ、首席就任記念公演はお互いの関係性や期待値を感じさせる公演はありました。しかし、N響の団員さんによると、ルイージさんとN響の関係は就任当時ほど、今は良くないみたいです。むしろ、1月のソヒエフや今回のパーヴォの方が、N響メンバーはマエストロの期待以上に応えているようです。これはNHKの放送でも確認できると思います。本来はパーヴォがN響首席を契約更新した方が良かったと思います。


最後に1番重要なことを言うのを忘れてました。この4月からなぜか、NHKホールはゴミ箱が廃止になりました(ドリンクの自動販売機専用のゴミ箱は例外)。そのため、ゴミは自分で全て持ち帰りしないといけないそうです。NHKホールで鼻血が出た場合は全部自分で持ち帰りせよと言うことのようです(^^)。従いまして、NHKホールはアルコール提供無し、ゴミ箱無しと言うホールになっております。コロナ明けたのに不思議ですね。

(評価)★★★★ 金管のミスが無ければ、五つ星でした

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演

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指揮 : パーヴォ・ヤルヴィ

曲目
R. シュトラウス/「ヨセフの伝説」から交響的断章
R. シュトラウス/アルプス交響曲 作品64