今日はパーヴォのN響定期へ行きました。2021年の9月に来日して以来ですが、久しぶりの登場のように感じます。前回の来日は池袋でバルトークだったと思いますが、コロナの隔離措置のせいか、ぱっとしない公演でしたが、今日は快演でした!R.シュトラウスの曲で1番好きなオペラが「ばらの騎士」、オーケストラ曲は「アルプス交響曲」は断トツで1番の好みです。カラヤン先生が大得意としていたR.シュトラウスのアルプスを聴いてから、この曲が大好物になりましたが、この曲はオケの編成が大規模で、ある程度キャリアを積んだ巨匠でないと指揮はできないと思います(もちろん、アルプス山脈を見たことない指揮者は論外でしょう)。この点はブルックナーの交響曲でも同じようなことが言えるでしょう。そして、この大編成のアルプスを演奏できるケイパビリティを持ってるのは、日本ではN響くらいだと思います。他の日本のオケではエキストラ奏者がいないと成り立ちませんし、パワー不足のオケだと厳しいです。今日なトランペットは前半が首席の菊本さん、後半が首席の長谷川さんで、アルプスではN響のティンパニ首席の植松さんと久保さんが乗っており、N響の総力をあげたような、この公演への並々ならぬ気合いが感じられます。また、マイクが30本以上設置されていましたので、パーヴォのR.シュトラウス・シリーズとしてCD化されるでしょう。


前半は、バレエ音楽「ヨセフの伝説」の交響的断章です。ヨセフの伝説は大編成の曲ですが、交響的断章はオーケストラの編成を縮小したバージョンですが、それでも編成としては大規模です。この曲は「ばらの騎士」と同じような曲調や室内楽風テイストを感じることができます。今日の曲目解説は一昨日の都響のひどい音楽解説者で、この方は「サロメ」と似ていると書いてありますが、違う気がしますね。↓に曲目解説がありますが、音楽評論家かつ国立大学の教授であれば、ファクトやエビデンスに基づいた解説を中心にしてもらいたいです。しかも、この方は毎回、的外れなことを散文的に書いているのが特徴ですね。アルプス交響曲の解説はセクション毎の解説が無く、初めてN響のコンサートに来た人や初めてこの曲を聴く人にはかなり不親切な解説だと思います。Bプロの神部さんの解説は基本をきちんと抑えていて、素晴らしいです。

https://www.nhkso.or.jp/concert/phil23Apr.pdf


後半のアルプス交響曲は圧巻でした。冒頭から弦楽セクションが気合いが入りまくり、この曲の肝心のパートのホルン陣はほぼミスなく、素晴らしい演奏でした。パーヴォはN響首席時代と比べて、力むことなく、この大曲を自由自在にオケをコントロールしており、コロナ禍を経て、巨匠感が明らかに出ています。パーヴォのN響首席決定後のコンサートのマーラー1番の名演を思い起こさせるくらいのオケからの音の凄みが感じられます。この曲は、R.シュトラウスが若い時にアルプスを登山した時の経験がもとになっていて、アルプスの登山の一連のシーンを描写している音楽ではありますが、筆者は山脈の道のりと人生の道のりと重なり合うと解釈し得ると感じております。「日の出」は生命の誕生、「林の道に迷う」や「危険な瞬間」などは人生の苦難、それを超えて人生の「頂点」に達します。その後は過去を回想しながら、この曲の終結部の「夜」は死の動機を感じさせる旋律と思われるからです。会場の拍手はパーヴォへの絶賛でした。


(評価)★★★★ 久しぶりの素晴らしいアルプス交響曲でした

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演

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指揮 : パーヴォ・ヤルヴィ

曲目
R. シュトラウス/「ヨセフの伝説」から交響的断章
R. シュトラウス/アルプス交響曲 作品64