一昨日のコパチンスカヤの公演の興奮が収まらないまま、今日はヴェルディ指揮者・ムーティさんによる正統的な「仮面舞踏会」に行きました。ムーティさんはここ数年は歌劇場でオペラを指揮することが無くなりましたが、春祭のようにアカデミー形式のプロジェクトではオペラを演奏会スタイルで指揮します。ムーティさんのヴェルディ・オペラを全曲聴けるのは珍しい機会ですし、アカデミーと言っても、オケのコンマスは読響コンマスの長原、隣にはN響コンマスの郷古、その後ろには東響コンマス小林、東フィルコンマス依田が座っていて、かなり豪華なように見えます。オケのメンバーは一部でソリストやオケの首席レベルですが、他のメンバーはどんな方は分からないです。バンタは大学生のような方が第3幕では演奏していました。今日の仮面は、正直、感動しませんでした。1週間以上のムーティさんによるリハ・指導があったのにも関わらず、オケからヴェルディらしい響きがあまり感じられません。特に木管と金管の鋭い響きがないのが、少し残念で、第1幕で帰ろうかと思ったほどです。フルートはフランス音楽をやってるような雰囲気でしたし、ピッコロは全くの鋭さがない点がヴェルディらしさを損ねていました。第3幕の大円団を聴きたいので、我慢して最後まで聞いていましたが、ヴェルディ音色は数カ所くらいしか感じられませんでした。もっと血生臭いヴェルディを聴きたかったんですが、普段からオペラを演奏していないコンサート・オーケストラのメンバーが中心ですから、仕方ないかもしれないです。ヴェルディの音楽はイタリア語の発音と直結しているので、イタリア語を習得していないと厳しいでしょう。そう1週間ほどでヴェルディが身につく訳ではありません。昨日の演奏は↓のリンクあるような筋肉体質の音楽ではなく、ピッコロにキレはなかったと思います。



私がヴェルディが好きになったのは、ムーティさん指揮のナブッコを観てからですが、↓のムーティさんのこのリハ映像でも、ヴェルディ音楽におけるイタリア語の重要性が分かると思います。


これが皇帝と言われたムーティ様のヴェルディだと思います!この当時の演奏に比べてたら、今日の演奏はいかに歯抜けか分かると思いますし、東京でのリハは生ぬるいです。


 歌手陣はどうかと言うと、幕の冒頭から幕切れまで、出演する歌手がムーティさんの前に2列で座っています。出たり入ったりしない形式なので、落ちついて聴くことができますね。今日のウルリカ(マトーチュキナ)とレナート(ヴァシレ)はキャリアや実力もあり、素晴らしかったです。特にマトーチュキナは今日の中ではNo.1でしょう。ヴァシレも、第3幕でかなり図太いバリトンを聴かせてくれました。一方で、リッカルド(ザダ)とアメーリア(エル=コーリー)は声量は小さく、この2人のイタリア語の発音もおかしくないですかね。ザダは体格が良く、太いテノールを聴かせてくれそうな雰囲気がありますが、体調が悪いのか、全く宜しくないテノールです。エル=コーリーも、物足りない歌唱なのに、会場からはアリアの後に「ブラボー!」が2回ほど出るのが不思議です。どなたがキャスティングしたのか知りませんが、メインの4人のアンバランスが、オペラとしてはあり得ません。アカデミーの研修後の「発表会」と言う立て付けならあり得ますが、マターチュナやヴァンシはミドル級レベル以上の歌手なんで、このアカデミーに入るのがフィットしません。と言うことで、久しぶりのムーティさんのヴェルディなのに納得感が少なかったです。合唱は世界基準で上手だと思います。来年もムーティさんのヴェルディ企画やるなら、もう少し歌手のレベルを揃えて欲しいですし、上野でやるのは避けて欲しいです。また、ムーティさんは良い指揮者と言うによりは、良い教育者になっていると思いました。


年齢のせいかムーティさんの指揮のキレも感じられませんでした。かつての筋肉体質のヴェルディではなく、贅肉体質の重いヴェルディでした。


(評価)★★ ヴェルディの凄みをあまり感じませんでした。

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演

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指揮

リッカルド・ムーティ

出演

リッカルド:アゼル・ザダ

アメーリア:ジョイス・エル=コーリー

レナート:セルバン・ヴァシレ

ウルリカ:ユリア・マトーチュキナ

オスカル:ダミアナ・ミッツィ

シルヴァーノ:大西宇宙

サムエル:山下浩司

トム:畠山茂

 

管弦楽:東京春祭オーケストラ

合唱:東京オペラシンガーズ