先週土曜、雨の日の渋谷スクランブル交差点に変装して現れたコパチンスカヤ


今日の都響のサントリー定期演奏会は、普通の定期と言うよりは、コパチンスカヤ・スペシャル・ナイトですね。しかも、プログラム内容は、最新のミシュラン三つ星レストランの奇妙奇天烈なコース料理のようになってます。例えていうならば、味が薄く、インパクトを抑えた前菜はリゲティの「虹」、食べたことのないスパイスの効いたメイン一品目がリゲティの「ヴァイオリン協奏曲」、休憩挟んで、メインの二品目は肉肉しいメイン二品目がバルトークの「中国人の不思議な役人」、見たことのないような見栄えのデザートは、リゲティの「マカーブルの秘密」となるでしょう。本来、バルトークは今日の最終曲であるべきですが、バルトークの後に、リゲティの「マカーブルの秘密」にしていた理由は、マカーブルでコパチンスカヤが登場した時にわかりました。

リゲティの「虹」(アブラハムセン編曲)は日本初演で、美しい音色ですが、印象の薄い、あっと言う間(演奏時間約4分)に終わる曲でした。この後にインパクトの大きい曲が控えているので、前菜としてはこれで良しでしょう。


リゲティの「ヴァイオリン協奏曲」は、今年47歳になるコパチンスカヤのために作曲されたような曲ですね。5楽章からなる編成ですが、聴きどころは第2楽章と最終楽章でしょう。第2楽章は、「アリア、ホケトゥス(しゃっくり)、コーラル」の3つの要素から構成されていますが、ホケトゥス(しゃっくり)の部分では、コパチンスカヤは踊りながら、ピチカートをします。第5楽章は「アパッショナート(情熱的に)」と「アジタート・モルト(非常に苛立つように)」はコパチンスカヤ全開です。飛び跳ねながら演奏したり、指揮台の前の弦楽セクションの前を歩きながら、演奏を煽ります。ラストのカデンツァは、口笛を吹いたり、歌ったり、騒いだりと、やりたい放題のカデンツァでした。アンコールは、コパチンスカヤの紹介で明日、都響を引退するコンマスの四方さんとのリゲティの二つのヴァイオリンのための曲。コパチンスカヤと四方さんのテンションが違い過ぎます。この時点で、既にお腹いっぱい状態でした。


後半のバルトークの「中国人の不思議な役人」で、やっと少しはマトモな曲になるかと思いきや、この曲の舞台の内容は変態です。不思議と書いてありますが、実際は変態または奇人でしょう。ですが、音楽面ではリゲティよりは聴きやすく、役人が登場して娼婦に興奮する場面は「ウェスト・サイド・ストーリー」の喧嘩のシーンと似ているテイストを感じました。今回はよく演奏される組曲ではなく、全曲演奏なので、合唱団やオルガンなど全て揃えるのは大変なことです。


最終曲のリゲティの「マカーブルの秘密」は、演奏が始まる前に、楽団員が新聞紙を読んでます。なんで新聞読んでるかと思っていたら、新聞紙が飾られてるドレスを着て、ピエロのメイクしたコパチンスカヤが登場。大野さんがいないまま、演奏が始まり、大野さんは途中から本を読みながら登場します。本来、この曲はバルトークの前でも良かったのですが、前半後の休憩、着替え、メイクのための、マカーブルが最終曲になったのでしょう。また、アンコールが前半の終わりにあったのは、四方さんラストコンマスの演奏なので、普通の容姿の時を選んだ為でしょう。このピエロを含めた演出はコパチンスカヤらしいもので、ピエロ姿で演奏するコパチンスカヤはベルリンでも観ましたし、一昨日の渋谷のスクランブル交差点でもコパチンスカヤはピエロ姿で歩いてました(^^)。本当にコパチンスカヤはピエロが好きみたいで、この曲では、パントマイムをしながら、楽団員と一緒に笑ったり、パンデミック下では出来なかった演出でした。観客の多くの人に笑いがながら、見てもらいたかったのでしょうが、大野さんの「栗山監督のセリフ」は申し訳ないですが笑えませんでした。コパチンスカヤはヴァイオリンを演奏しながらも、ほとんど歌っているか、話したり、奇声を出していて、音楽を聴くというよりは、パフォーマンスを観る感じでした。この奇妙さ満載の名演は日本における今年1番のコンサートでしたので、急遽、明日も行くことにしました。明日も、違う観点でレポートしますし、明日の大野さんのギャグが同じかどうかも注目したいです。




(評価)★★★★★ 世界的にも前代未聞のコンサートだと思います!

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演

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出演

指揮/大野和士
ヴァイオリン&声/パトリツィア・コパチンスカヤ*/**
合唱/栗友会合唱団***

曲目

【リゲティの秘密-生誕100年記念-】
リゲティ(アブラハムセン編曲):虹~ピアノのための練習曲集第1巻より[日本初演]  

リゲティ:ヴァイオリン協奏曲* 


《アンコール》

リゲティ: バラードとダンス(二つのヴァイオリン編)


バルトーク:《中国の不思議な役人》op.19 Sz.73(全曲)*** 
リゲティ:マカーブルの秘密**