2019年3月のベルリンフィル定期に出演したコパチンスカヤ


2月中旬から3月上旬にかけて、あまり世界基準の魅力的公演が少ないです。これは、N響定期や来日オケがあまりないのと、新国立劇場が無理して、小粒の指揮者、歌手を集めて、大作のタンホイザーやファルスタッフを連日上演し、話にならないレベルのホフマン物語を展開しているせいでもあります。それでも新国立劇場は「アゴラ」などの記者に全ての公演をベタ褒めするステルス・マーケティングに近いことをやっております。2月の新国立劇場の「ファルスタッフ」をアゴラのライターは『奇跡の名演』と書いてましたが、このライターはあまりにも世界基準のものを観てなさすぎで、これ以上、新国立劇場の小粒な歌手陣などにゴマするような記事はやめてもらった方が良いですね。ファルスタッフの名演は欧州でもなかなか名歌手が揃わないので、実現が難しいのです。この点は、来月のブログできちんと総括的に問題点を指摘したいと思います。


さて、3月は10日にはあまり期待していない東フィル定期(オルガン付き)がありますが、それ以降は、都響の復活、都響とコパチンスカヤ、ムーティ指揮の春祭「仮面舞踏会」と3月中旬以降は充実しております。ムーティさんの本領は、やはりヴェルディであることは、一昨年の春祭マクベスでも体感された方が多いと思います。私も実はムーティさんのヴェルディ以外、あまり感動したことがないんです。特にシューベルトやブラームスのシンフォニーは酷いものがあります。また、春祭の室内楽でも魅力的なコンサートがありますので、行く予定です。

今月の注目は、なんと言っても、5年ぶりに来日するコパチンスカヤではないでしょうか。前回はムジカエテルナで、強烈で過去最高のチャイコンを聴かせてくれました。今回の来日では、コパチンスカヤが近年、ベルリンを中心にヨーロッパで演奏しているマニアックな音楽かつコパチンスカヤが歌うなど変わった趣向のプログラムです↓。 

指揮/大野和士
ヴァイオリン&声/パトリツィア・コパチンスカヤ*/**
合唱/栗友会合唱団***

リゲティ(アブラハムセン編曲):虹~ピアノのための練習曲集第1巻より[日本初演]
リゲティ:ヴァイオリン協奏曲*
バルトーク:《中国の不思議な役人》op.19 Sz.73(全曲)***
リゲティ:マカーブルの秘密**

この二つのリゲティはとても珍しい曲で、聞き馴染みもあまり良くないのですが、コパチンスカヤは哲学的に曲を解釈して、聴衆に《聞いて、考えて、感じる》ことを要求します。ただ聴いて、良い音楽を聴きたい方には、かなりきつい時間になるかもしれないです。最近のコパチンスカヤは正統的なベトコンやチャイコンを演奏する回数は少なく、演奏に演劇要素を入れたり、かなり前衛的な演奏会をプロデュースすることが多いのです。これに日本の聴衆がついてこれないと、コパチンスカヤの再来日が遠のくと思われますので、覚悟して聴かれると良いと思います。睡眠不足の方は要注意です(^^)。


↓ピエロの姿で、独自のプログラムを演出・演奏するコパチンスカヤ(2019年3月、ベルリンフィルのレイトナイトコンサートより)