予定にはなかったのですが、今年に入ってから戦争、詐欺、迷惑投稿、地震などネガティブなニュースばかりで、気晴らしをしたいと思いまして、日本のフルートの第一人者である工藤重典さんのコンサートに行きました。学生時代、受験勉強で利用していた喫茶店がバッハやモーツァルトなどのフルート曲ばかり流れており、それ以来、フルート曲を毎朝のように聴いているくらい大好物なんです。今回の曲目はチマローザ以外は名曲ですが、工藤さんが指揮しながらの吹き振りするという点が珍しいです(ヴァイオリンやピアノの弾き振りや歌手が歌いながらの指揮は見たことありますが、フルート版は初めてです)。工藤さんは前からこのような室内楽のコンサートをやりたかったようで、1曲目のバッヘルベルは工藤さんは指揮だけでした。工藤さんの指揮は、どこで学んだのか不明ですが、基本を抑えた柔らかな動きの指揮で、沖澤まどかさんのようなおぼつかない指揮とは異なります。2曲目のヴィヴァルディは工藤さんのフルートと指揮の吹き振りでした。楽譜をめくりながら、器用に要所要所で指揮を入れていきます。また、工藤さんはかなりのトーク好きで、オヤジギャグからシュールなギャグまで、色んなタイプの冗談を入れながらのトークは面白いです。冒頭のトークでも会場から笑いを取ってました。

そう言う意味で言うと、今日の工藤さんは、フルート・指揮・トークの三刀流で、フルート界のレジェンドだと思いました。3曲目は有名なバッハの管弦楽組曲ですが1番から6番までは若手の石井さんと瀧本さんによるソロで、最後のパディネリは工藤さんもフルートを持って、フルート3人による豪華な演奏でした。

後半のチマローザは初めて聴く曲ですが、モーツァルトと近いアプローチの曲で、随所にモーツァルトのような音色が楽しめました。チマローザは、モーツァルトと同じ時代のイタリアの人気の作曲家なんですね。この曲のソロは石井さんと瀧本さんで、工藤さんは指揮に専念していました。最後は、フルートの名協奏曲であるモーツァルトの1番です。これは、工藤さんの吹き振りで、工藤さん持っているフルートの音色が、若手の石井さんや瀧本さんとは全く異なるアプローチながらも暖かい音色がします。工藤さんは今は68歳ですが、第1楽章のカデンツァ部分では息継ぎがきつそうでしたが、あとはこの曲らしい軽快で明るい演奏でした。アンコールは、工藤の大好きな曲であると言うハイドンのVn協奏曲のフルート版、ヴィヴァルディの4つのVnコンチェルトをフルート3本、Vn1本で演奏すると言う珍しい試みでした。次回のコンサートもどんな企画や工夫がされているか楽しみです。


(評価)★★★ 期待以上に工夫されていていました

*勝手ながら5段階評価でレビューしております

★★★★★: 一生の記憶に残るレベルの超名演 

★★★★:大満足、年間ベスト10ノミネート対象

★★★: 満足、行って良かった公演

★★: 不満足、行かなければ良かった公演 

★: 話にならない休憩中に帰りたくなる公演

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出演者: 工藤重典(Fl・Cond),石井希衣,瀧本実里(Fl),森下幸路(コンサートマスター) 他曲目: パッヘルベル:カノン~J.Fパイヤールへのオマージュ~ヴィヴァルディ: フルートとヴァイオリンのための協奏曲ニ短調J.S.バッハ: 管弦楽組曲第2番チマローザ:2本のフルートのための協奏曲ト長調モーツァルト:フルート協奏曲第1番ト長調K.313《アンコール》ハイドン:ヴァイオリン協奏曲 ハ長調 Hob.VIIa:1から 第2楽章
ヴィヴァルディ:4つのヴァイオリンのための協奏曲 op.3から 第2楽章