このCDジャケットの写真は今年のコンサートものではないです


年末年始にウィーンでメスト指揮のコンサートを聴いて、久しぶりに素晴らしいニューイヤーでしたので、早速、CDを購入して聴いてみました。ニューイヤーコンサートのCDを購入するのは、実は20年ぶり以上なんです(最近のニューイヤーのCDは指揮者の年始の挨拶まで入ってるのは知りませんでした)。

今までのトップ3は、ボスコフスキー、カラヤン(87年)、クライバー(89年、91年)盤で、次にお気に入りは、キャンセル魔のクライバーの控え指揮者としてニューイヤーコンサートの楽屋でスタンバイしたことがあるアバド、ウィーンとの関わりが深く長いマゼールやメータのニューイヤーも素晴らしく、これらを超えるニューイヤーは2000年以降はあまりありません。ムーティさんは癖のあるテンポですし、日本でかなり売れた小澤さんのCDも買いませんでした。この10年は、バレンボイム、デュダメル、ティーレマン、ネルソンズさんら、ニューイヤーの音楽にはあまり相応しくない指揮者が登場していて、元旦の放送を観ていても、過去に取り上げられたお馴染みの曲が多く、退屈な年もありました。しかし、今年のニューイヤーは、演奏曲目の15曲のうち14曲がニューイヤー初登場の曲で初めて聴く曲が多く、これだけでもCDを買う意味があります。オーストリア人指揮者のメストさんは、シュトラウス一家の楽譜をほとんど読み込んだと聞きますから、指揮者と楽団側の気概が感じられるプログラムです。軽快でスピード感があるポルカが多く取り上げられており、メストさんの鋭い切れ味と手腕が発揮されています。初めて聴く曲でも、耳馴染みしやすい曲が多く、これが今回のニューイヤーの素晴らしいところで、多くの方が今年のニューイヤーを絶賛されるのだと思います。映像でも確認できますが、2011年のニューイヤー初登場だったメストさんはとても緊張していたようですが、今年はメストさんらしい神経質さはありましたが、余裕の感じれる指揮でした。また、ヨーゼフの曲が全体の半分以上を占め、お馴染みのヨハン2世の曲は2曲しかありません。2025年はヨハン・シュトラウス2世の生誕200周年なので、これは私の予想ですが、メストさんと楽団側は2025年を見据えて、今年はヨハン2世をあまり取り上げなかったのかもしれないです。今年のニューイヤーコンサートのチケットは昨年がコロナで半分の客席制限があり、昨年鑑賞出来なかったチケット保有者が今年のコンサートを優先して確保できたため、チケット争奪戦でしたが、2025年のニューイヤーは、今年いなかった中国本土の観光客が参戦しますので、かなりのチケット争奪戦が予想されます。


CDを聴いた感想としては、ジルベスターとニューイヤーの実演を2回聴いて、記憶に新しいのですが、実演ではあまり聴こえなかった打楽器、トロンボーン、チューバ、コントラストバスなどの舞台後方の楽器の音が明確に聞こえ、実演とは違う立体的で迫力のある演奏が楽しめました。楽友協会ホールの平土間の真ん中あたりで聴いていましたが、ホールの天井が高いので、舞台後方からの音がこもってしまうのか、こちらにはあまり聴こえませんでした。しかし、CDの音源にはこれらの音が明確に入っていて、違った体験ができました(さらに言うと、NHKの放映の音とも違いましたので、実演・映像・CDと3度楽しむことができました)。特に前半3曲目のジプシー男爵のカドレーヌ、後半1曲目のイザベラ序曲では音の立体感と多様感が随所に表現されています。これは、録音のエンジニアやプロデューサーの長時間かつスピード作業の力量によると思います。ニューイヤーのデジタル配信は1/6リリース、CDはヨーロッパでは1/13発売、日本では1/25発売ですから、かなりハイスピードのスケジュールです。ニューイヤーの当日の夕方には、お疲れのはずのメストさんがコンサートの音源をチェックして、スピード・リリースに向けて作業に入るようです。そのためか、12/31のジルベスターコンサートは21:45頃に終了し、メストさんは翌日朝(11:15開演)に備えるため、関係者との挨拶をほどほどにして、足早に猛スピードでご帰宅されてました。


ジルベスターコンサートもニューイヤーコンサートと同じ服装で指揮したメスト


コンサートの録音は12/30, 31, 1/1の3日間、30個ほどあるマイクでテストも含め録音されますが、1/1のニューイヤーでは、分かりやすいキズが無かったと思いますので、多くの曲は1/1に録音されたものが入っていると思います。このCDの音源は、立体的で、様々な楽器の音がクリアに聴こえるので、毎日のように聴くようになりました。ウィーン・フィルの他のコンサートのCDよりも、クオリティの高い録音と感じられるのは、このコンサートがマーケット的に大きいため、力の入れ方がハンパないからだと思いました。某巨匠指揮者はレコード録音を「音の缶詰」と言って批難していましたが、今回の録音はメストさんが生の音で聴いたことの無い「音の芸術」に仕上がってます。

実演のコンサートは、ホールの音響面で残念なところは仕方ないでしょうし、この点を期待して行く観客はあまりいないと思います。会場はたくさんの花の装飾で花の香りが溢れていて、ニューイヤーの平土間席はオーストリアの社交場となってます(会場にはテノール歌手のフローレスがお子様といましたし、なぜかドイツの元サッカー選手のシュヴァインシュタイガーもいました)。多くの人々の努力の結晶が感じられる今年のニューイヤーのCDを多くの方に聴いていただきたいです。2月中旬に発売されるBlu-ray盤も購入しようと思います。

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先週は1度もコンサートに行きませんでしたが、来週のフルシャ指揮・N響は楽しみです。