2019年12月にウィーン・フィル定期公演にデビューしたフルシャ


今日で2023年の1月はおわり。明日から2月ですが、世で言う「ニッパチ」と言われるくらい、日本のクラシック界の2月公演は見どころが少ないので寂しいです。2月はトリフォノフのピアノソロ、紀尾井定期、フルシャ指揮・N響に行こうと思いますが、都響のB定期、新国立劇場の「タンホイザー」と「ファルスタッフ」はパスします。特に新国立劇場のタンホイザーはステファン・グールドの一本足打法ですし、「ファルスタッフ」はアライモや脇園のような名歌手がいますが、このオペラは指揮者含めて、役者が揃っていないと難しいオペラです。先月のムーティさんの日経「私の履歴書」では、ベートーヴェンのミサ・ソレムニスとファルスタッフには相当の時間の勉強時間を要したとありますが、かなりの難曲なので、安易に聴けない作品だと思います。ファルスタッフは、1998年にアバド指揮・ベルリン州立歌劇場を観てから、これ以上のものはなかなか出てこないと思っておりまして、鑑賞を控えております。この時に印象的だったのは、レスタティーヴォのときに、アバドがオケピの指揮台の照明を毎回消すんです。こう言う指揮者は、今までアバド以外に観たことがないです。


話が脱線しましたが、2月の公演で最注目はフルシャ指揮・N響でしょう。ヤコブ・フルシャについて少し語ると、都響とチェコ・フィルで聴いたことがあるのですが、あまり記憶にありません。これは、オケの迫力の無さか、ホールの音響のせいかもしれないです。プラハのドヴォルザーク・ホールは音楽都市の中で指折りの音響の悪いホールなので、このホールに行くのはおすすめできません。雰囲気は、東京文化会館よりは素晴らしいですが。


2021/22ドヴォルザークホールのオープニングコンサート


フルシャの演奏記憶がハッキリ覚えているのは、2019年のウィーン・フィルの定期演奏会デビュー公演です(ちなみに、私はコンサート鑑賞記を日記などで書いていないので、全て記憶の中にあるものしか書いておりません)。この日は、もともとヤンソンス指揮の定期演奏会でしたが、ヤンソンスさんの体調不良で前からフルシャさんが代演することになってました。


ヤンソンス最期のウィーン・フィルコンサート告知


このウィーン・フィルの定期演奏会は今でも忘れられないのは、当日の朝、ウィーンにヤンソンス死去のニュースが入ってきて、楽友協会ホールには黒旗が掲げられていました。ウィーン・フィル幹部とフルシャとの協議の上、フロシャウアー楽団長からヤンソンスの訃報、追悼のための曲目変更と会場での会場全員が起立して黙祷のお願いをした上で、祝祭的なドヴォルザークの謝肉祭序曲からラフマニノフのエチュード(マツーエフ演奏)に変更されて演奏が始まりました。

コンサート開始前のヤンソンス死去の黙祷


その後は、マツーエフのソロでのチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番に続き、バルトークの管弦楽のための協奏曲で終わります。この時の定期演奏会がフルシャにとっては変曲点となり、フルシャとウィーン・フィルの関係は深くなります。22年の夏のザルツブルク音楽祭ではウィーン・フィルの演奏でヤナーチェクのオペラを指揮し、22年11月と23年5月のウィーン・フィルの定期演奏会に異例のペースで登場し、23年8月のザルツブルグ音楽祭のウィーン・コンサート(5人の指揮者による公演)に登場した後、9月のウィーン・フィルの欧州ツアー公演にもフルシャが指揮します。これはウィーン・フィルとかなり密な関係であることを意味しています。また、2025/26シーズンからはロイヤル・オペラの音楽監督に就任することが決定し、コンサートとオペラ活動の両方で認められている若手指揮者の中では、今一番注目すべき若手指揮者であります。昨年、ヨーロッパへの空路の機内エンタメで、フルシャ指揮のハンス・ロットの交響曲をたまたま聴きましたが、抜群のセンスを発揮していて、何度も聴いてしまいました。

フルシャがN響の来日公演で聴けることはとても貴重なことだと思いますし、多くの方にフルシャの公演を聞いて欲しいと思います(特におすすめはN響Bプロです)。また、5年以内にはウィーン・フィルのニューイヤーコンサートに登場すると予想しますし、ウィーン・フィルの来日公演でも聴けると思います。