2020年12月のクリスマスの本番当日の朝に、
ダンス・インキュベーション・フィールド岡山の公演の
中止が決まって、1年3ヶ月の道のりの中、
先日2公演、出演者が欠ける事無く、
終演する事ができた。

 2020年から嫌と言うほど、公演の中止を経験していて、
国や地方自治体が何か方針を発表すれば、
開催できるのか?できないのか?の協議。
リハーサルや打ち合わせですら変更の嵐。
多くの仕事では、しょっちゅうPCR検査や抗原検査を
させられうんざりするぐらい。
それでも公演を実施する為にルールに従いながら
仕事をしている。

本番前日のリハーサルで楽屋入りする時から、
1年3ヶ月前もここまで来ての中止だったので、
本当に最後まで気を張って過ごしていた。

今回もロシアのサンクトペテルブルクで研鑽した
ピアニストYuriのピアノで歌った。
ロシアの素晴らしさは、軍事力や核兵器では無く、
本当は、文化、芸術、文学なんだけどな。


今回の公演のカーテンコールは、
役得で大トリでの登場!

この瞬間に1年3ヶ月前の中止も、
1年3ヶ月の歩みも、色々な事が報われる瞬間であり、
時間であり、場所である。

ダンス・インキュベーション・フィールド岡山。
財団所属のバレエ・ダンスグループ。
芸術監督のダンサーの高谷さんらが立ち上げた!
ダンス・インキュベーション・フィールド岡山のメンバーは、
全員岡山在住の人達。
ここが、私は素晴らしく思っている。
地元のアーティストを育てるにあたり、
または、地元のアーティストの活動拠点に
あたり。

今回のメンバーは、小学6年生から、大人までのメンバー。
学生達は、この先プロを目指すなり、人生の支えとなる
表現者であれ、人生が豊かなものになればと思う。

ダンス・インキュベーション・フィールド岡山の
顔は、スイスで研鑽しこのDIF岡山の講師でもある
岡田吉加さん。

写真は、舞踊家清水フミヒトさん、吉加さんと私。
やはり、ヨーロッパの風を吹かせれる人の存在は
私はとても大切に思っている。

コロナ禍で色々な事が変化していく中で、
地方においても、都市部に負けじとできる
時代によりなっていく様に思う。


そして、今回だとバレリーナの万代祐梨子さん、
あみちゃん、OGのあんなちゃんの存在は大きい。
あんなちゃんもカナダで研鑽を積んだバレリーナ。

この作品を、構成、演出、振付したのが
祐梨子さん。一緒に共演していても彼女の表現力に
感性に素晴らしい!!!
東京にいるから、欧米にいるから上手い訳では無いし、
プロの定義は非常に難しい。
私は、ダンス・インキュベーション・フィールド岡山の
メンバーをプロとして接している。
それは、本気さと、踊る事への愛、表現力を感じるから。
2日目の本番直前のリハーサルで
1人過呼吸になった高校生がいて、
その子を手当している間に、ぱっと代役で
祐梨子さんが演じている姿もモニターで
見ながらなんか感動した。

私は、もっともっとこういう才能豊かな人達を
クローズアップするべきだと思うし、
彼女を取り上げた山陽新聞は素敵に思う!


今回、新しい10期生とも共演した。
小学生から高校生までいて、彼女たちの純粋な眼差し、
ひたむきに踊る姿、そして、優しさを感じる舞いに
感動した。特に他のダンスと違ってバレエは、
勢いで誤魔化せないから、非常に繊細な動きが
求められる。その年齢、年齢に感じる繊細な動きに
優しさや、エレガントさを感じた。

清水さんのコンテンポラリーダンスと
私の歌うYou raise me up。
歌詞の内容は下記の内容。


「私の気持ちが沈んで
心も疲れたとき
困難に見舞われ
心に重荷を背負ったとき

私は静かに
静寂の中で待つ
あなたが隣に来て
座ってくれるまで

あなたは私を勇気づけてくれる
私が困難な山に立てるように
あなたはし私を励ましてくれる
荒れ狂った海を渡っていけるように
私は強いの
あなたがそばにいてくれるから
あなたのおかげで
今以上の私しになれる」


清水さんの舞が、何か心や魂の舞に感じながら歌った。
もし、魂や心が可視化さえれたら躍動し続けている
だろうなあと。ウィーンの我師匠やマスタークラスで
ビトマーが喜びであれ、悲しみであれ、怒りであれ、
エネルギーは同じだけ使っているとよく言う!
まさに、そうだなあと思う。

このYou raise me up
あなたの支えがあれば、あなたがいれば
私は強く居れ、強く生きれると。
この流れから、いのちの歌に繋がる。

今回私の脳裏に
ロシアのウクライナ侵攻の映像があった。
破壊されるウクライナ。
子供が病院に運ばれ6歳の少女が亡くなる。
避難する男の子が、お父さんは、ウクライナに
残るって。ひょつとして戦うのかもしれないと
涙を我慢しながら語る様子。
自分の無力感、そして、音楽って何なの?
音楽の空間は何の為にあるの?という
自分への歯がゆさ。

そして、目の前に、純粋な瞳の
バレリーナ達が目の前にいて、
何か優しさに包まれる様な、
温かい気持ちになる。
天国と地獄が同じ場所にあり、
ここにある命があり、旅立った命がある。
皆の舞を見ていたら、その双方の心や魂、
命が交差し存在している世界に思えた。


初日のG.Pで初めて自分の出番以外の作品を
見たが、岡山在住の人材で、私を含め岡山以外から
ゲストを5人で、ここまで作り上げるのは凄い事だと思った。

これは2月のリハーサルでの
マイム俳優のいいむろなおきさんとの
写真だが、いいむろさんのマイム作品で、
例えばバレエやダンスで硬さがある子がいたとして
このマイムでは良さとして表現できたり、
面白い!!!何度も書いているが、
いいむろさんは昨年の東京パラリンピックの
開会式のメインで演じていた人。
そういう人ともDIF岡山のメンバーは
共演でき作品を作れるの財産に思う。
踊りと言っても、バレエ、ダンス、マイムと、
色々あり、それぞれが発揮できる場所が
あるのもいいなあと。

表現の世界の何が面白いかって、
日常において、社交的な子も、シャイな子もいて
差がある様に感じるのに、踊りだすと差がなくなるという(笑)
私自身が歌っている時やステージの上が素直な自分で
いれるので凄い分かる!言葉が苦手だから、
アートだったりスポーツだったり、音楽だったり踊りだったり
表現方法はさまざまだから。

そして、DIF岡山を支えてきたスタッフの
善ちゃんが中止になった年の秋に旅立った。
千穐楽の日、善ちゃんのお母さんが遺影を持って
会場に来ていた。
また、DIF岡山の立ち上げからのスタッフ達が
組織編成でいなくなっての延期公演で、
千穐楽に善ちゃんのお母さんと一緒に
来てくれて、皆涙していた。

色々な想いがありながら、
私達の延期公演を見届けてくれる
心に想いにグッときた。
舞台と言うのはスタッフのサポート、
支え無しには成立しない。
この1年3ヶ月の道のりは、
演者も制作サイドも大変だったと思う。

2020年からのコロナ禍、
今起きているロシアのウクライナ侵攻で
世界はますます混乱していくと思う。
経済が疲弊すれば文化、芸術は締め付けられて
行くと思うし、文化行政や財団もどんどん
予算削減していくと思う。
2011年の東日本大震災以降、企業はメセナから
エコにシフトした様に、厳しい時代に突入した。

私自身、音楽の在り方、
音楽人としての歩みをあらためて
考える。

今回、公演前の前日のリハーサルは、
感情がぐちゃぐちゃで、
感情だけで歌ってしまい、非音楽的な
歌になり反省し、舞踊家の清水さんに
本音をポロっと言った時に、
「無力に感じたり、変える事ができなかったり
それでも岳君の歌で救われるものがある!」
という言葉が心に沁みて、本番修正できたと
思う。

そして、バレリーナの皆の
なんだろう、純粋でひた向きで、
優しさと愛に満ちた、そして何か包み込んで
くれる想いというかなんというか。
だから、小学生や若きアーティストからも

たくさんの学びをもらった。

ご来場してくれた方々、応援してくれた方々
に心から感謝。
生きている今日は、亡き人が
生きたかった明日である事を忘れずに。

音楽人としての自分の
歩みを模索しようと思う。