〈あらすじ〉
久木を撃破。なぜか目の前には香奈が。
香「いたた……修一さん、やっと起きましたね!」
目の前の光景が理解できない。これは夢だろうか。頬を何度もつねるが、目がさめる気配はない。修一は教科書通りのような、唖然とした状態になっていた。
あの茶色い美しい長髪に、ふくよかな胸、淡い黄色の着物。確かに香奈だ……ただ、唯一違うのが、袖に幾つかの札が貼られているということだ。これは一体……
香「あ、わかりましたよ?どうせ『香奈、お前死んだんじゃ……』とか思ってるんでしょ?甘いですね~、羊羹より甘いッ!」
修「いや……あの……え」
超ご機嫌の香奈は、そそくさと修一の側に立ち寄ってしゃがみこむ。
香「思い出してください。私が生まれたあの時、あなたは阿求さんに私のことをなんて説明しましたか?」
阿求に説明……幻想郷縁起のことか。確かあの時、香奈は自分が作り出した人間だったが、そんなこと説明したらややこしいから、式神って言ったんだ。
修「式g」
香「そう!あなたは私を式神と言った。ちなみにあなたは私が本当に式神だと思ってました?」
……説明で式神と言っただけで、式神とは認識していない。むしろ式神じゃないと認識していた。出会ってきた人たちには形式上「式神」と紹介はしていたが、あくまで形式上。実際にそう思っていたかと言われるとそうではない。
修「思ってn」
香「常識を操る能力!!」
修「……はい?」
香「ここでまたこの能力の作用ですよ!この能力を消す前から既に!修一さんは私のことを『式神ではない』と認識していた。そうですね?」
起きた途端こんな話をされても頭はすぐ追いつかない。というかいろんなことが起こりすぎて頭がパニックだ。香奈がいただけで十分限界なのに、これ以上何かを詰め込まれたら頭がオーバーフローしてしまう。
香「いいですか?あなたは『式神ではない』と思っていた。それに常識を操る能力が作用すると、どうなります?」
改めて聞き直され、しばらく考える。すると頭の中でこの一連の流れが全て繋がった。
修「……まさか」
香「そう!そのまさかですよ!私は修一さんに作られた肉体で過ごしてきた……しかし修一さん。今ではあなたの『式神』としてこの場に存在しているんです!」
ドヤ顔の香奈を見て、修一はそれらが事実であることを確信した。夢なんかじゃない、ましてや嘘なんかでもない。香奈が生き返った。式神として蘇ったのだ。袖に貼られている札は、式神を召喚するためのものだったのか。声にならない声を出しながら、修一は座っている香奈の膝に崩れ落ち、ただひたすら泣いた。
霊「……めでたしめでたし、か」
開いた襖からその様子を見ていた霊夢は、静かに襖を閉じ、居間へ足を向ける。
霊「紫、あんたに感謝する時がくるなんて思わなかったわ」
霊夢のすぐそばにできたスキマの中から、紫が顔を出す。
紫「私は何もしてないわ。私はただあの子が本物の式神になっていることを伝えただけよ。あの子を式神として蘇らせるのに成功したのは、藍のおかげよ」
居間に着くと、炬燵に入ってお茶を飲む九尾の狐、八雲 藍がいた。
藍「修一……という人間と初対面ではありましたが……まぁ、霊夢さんにあそこまで懇願されると、断れないというものですよ」
紫と違い、胡散臭さのない笑顔で霊夢と会話を交わす。霊夢はこの時心の底から、紫に感謝するんじゃなくて藍に感謝しよう。と思っていた。
霊「本当ありがとう、今度油揚げあげるわ」
藍「油揚げ!?いえそんな、ありがとうございます!!」
油揚げというワードに過剰に反応する藍を見て、紫も霊夢も口を綻ばせる。一瞬我を忘れていた藍はすぐに我を取り戻し、恥ずかしさに顔を赤らめながらお茶を飲み直す。
藍「と、とにかくですね、寝ている修一さんを主人として構成しました。だから修一さんの意思が反映されていない今、香奈さんはまだ不安定な存在です。修一さんが起きたのなら、もう一度召喚し直してもらいます」
藍「……と、言うわけで、召喚のほど、よろしくお願いします」
修「はぁ……」
香奈が突然煙になって消え、再び唖然とした修一の元に、藍が現れた。その一連の話をしてもらい、自分が香奈を召喚する必要があると言われた。だが式神の召喚なんてしたことがない。そもそも式神がどんなものなのかさえ、自分は理解していない。とはいえ、不完全な香奈を完全にする為だ。考える前に行動しよう。
修「えっと……」
……と思ったがやっぱり無理だ。方程式も知らないで数学の式が解けないのと同じで、何から手をつけていいのかが全くわからない。
修「全然わかりません」
藍「じゃあ……まずは香奈さんの霊を呼び出しましょう。作り物だったとはいえ、生きていた以上魂は存在していたはずです」
修「霊の呼び出し……だめだ、全然わからない」
霊「白玉楼に行けば?あそこならわんさかいるし、香奈の霊もいるんじゃない?」
霊夢が眠たそうな声でアドバイスをしてくるが、その場においてそれはとても名案だった。確かにそうだ。霊を呼べないなら会いに行けばいい。能力を失った今、白玉楼に行けるかどうかはわからないが、行ってみる価値はある。
修「藍さん、白玉楼で召喚って……」
藍「うーん……試してみる価値はあります。行くというのならお付き合いしますよ」
藍さんにも確信はないようだが、試す価値はあるらしいので、巻き戻したから初めて行くことになるが、もう一度白玉楼に行ってみることにしよう。
藍「紫様、境界の件だけお願いします」
紫「そうねぇ……借りは今のうちに作っておきましょうか」
まるで隠す気のない本音を語るが、こんなやつしか頼れない今は、全く不本意ではあるが頼るしかなさそうだ。
頼むと頭をさげると、まぁなんと趣味の悪い笑顔を浮かべることやら。もっとこう、素直に笑えないのかね……風貌は美人なんだから非常にもったいない。つくづく思う。
修「よし、行こう」
修一と藍は、涼しい風に乗るように、空高くへと飛び始めた。
〈あとがき〉
最近全然寝られなくて、困ってます。寝られない日はこうして小説の方を更新してるんですが……更新の頻度からみてどれだけ寝られない日が続いているかわかるかと思います……更新できないに越したことはないのですが、もっと違う形で更新頻度を上げたいと思う今日この頃です。
とか思ってたら、ハッシュタグ機能なんてものが追加されたんですね……せっかくなので使ってみました。これから先使うかはわかりませんけどね。
さて、今回は香奈の甦った理由と、ちゃんとした召喚のために香奈の魂を求めて白玉楼に向かうというお話でした。
次回もお楽しみに。