〈あらすじ〉
香奈に、修一によるフレンドリーショットが炸裂









修「起きないなぁ……」

あれから何時間経っただろう。怨霊と間違えて撃ってしまった修一は、気絶させてしまった香奈を人気も妖気もないところに運んで寝かせ、様子を見ていた。

香「んっ……?」

修「おっ、お目覚めか」

目を覚ました香奈に修一が声を投げかけると、さっきまでの気絶が嘘だと思うほどの大きな声と力で、修一を突き飛ばして叫び出した。

香「やややややめてえええ!私美味しくないから!!!食べても不味いから本当に!!!」

叫びながら香奈は四方八方に微量ながら弾を撃ち、空想の存在に対して抵抗を行う。もちろん近くにいるのは修一だけである。

修「お、落ち着け香奈!」

その一言をキッカケに香奈の動きが完全に停止し、さっきまで叫んでいた表情も真顔になる。

修「うわぁ!いきなり落ち着くな!」

驚愕した表情の修一を、真顔の香奈が見つめ返す。こう、見つめ合うこと自体そんなにしたことがない修一は、緊張を隠せていない。

香奈はしばらくしてゆっくりと口を開いた。

香「修一さん?」

修「は、はい」

香「あなたが、私に向かって、弾幕を?」

笑顔で問いかける香奈の背中から、殺意を覚える。

修「あぇ?あ、いや!?多分~違うとおm」

香「怒涛『スリーディメンショナルアタック』!!!」

修「ぎゃああああ!??!」









目をさますと、身体中に激痛が走る。まだ肉体が完全に修復された訳ではないようだ。

油断していた、あのタイミングで、あのスペルカードをかましてくるとは……おかげで全弾被弾、死んでしまったというわけだ。自分の式神に殺られる主人とはこれいかに……

修「ぃぃ痛い痛い痛い!!!」

突然背中に激痛が走る。誰かに踏まれているような……

香「あなたを心配して探しに向かったというのに……あなたという人は……あなたという人は……!!!」

修「ちょ!悪かった!暗くて見えなかったとはいえ本当悪いと思ってるから!本当に!だから足どけて足!!!痛い痛い痛い!!!」

そう言うと香奈は、しばらく黙り込む。すると突然驚いたような声をあげ、その足をどける

香「すすすすみません!理性が完全にぶっ飛んでました……」

突然慌てて、修一に頭を下げる香奈の姿は、さっきまでの香奈とは全く違う雰囲気になっていた。(戻ったというべきだろうか)

修「こっちこそごめんな、確認もしないで攻撃したんだ……怒られたりするのは当然だから、気にしてないよ」

香「……ありがとうございます」

香奈の安心した顔を確認した修一は、長時間に渡る怨霊捕獲作業、香奈の看病、身体の再生……いろいろな疲労が一度に襲いかかり、ゆっくりと、深い眠りについた。








紫「全部捕まえたようね、お勤めご苦労様。因みに言っておくけど、アレは仕事じゃなくて義務だから、報酬は期待しないで頂戴ね」

香奈によって家に運ばれた修一は、そのまま布団で寝続け、結局完全に復活したのは昼前だった。

そんな修一と香奈の目の前には、紫の姿があった。

修「いいさ、報酬なんてなくても。原因作ったの俺だし、受け取る権利なんて元からないわけだ」

そう答えると、紫は何かを思いついたように口を開く。

紫「あらそう?少し請えば、私個人として、それなりの報酬を与えるつもりだったのだけれど……あなたがそういうのなら無理にとは言わないわ。残念ね」

香「紫様個人の……ですか」

そう言いながら、扇子で口元を隠しながらニヤリと笑う。紫個人としての報酬という言葉に少し動揺してしまうが、ここで緩んでは紫の思うツボだ、ろくな事がない。

しかし……私個人としての報酬がなんなのか気になりすぎる。

修「……私個人としての報酬って?」

香「え」

紫「へぇ~……それ、聞いちゃうのねぇ」

……

やばいやばいやばい、一番聞いてはいけないことを聞いちゃった……ものすごい嫌な予感がする。ほら香奈もドン引きしてる。やましい意味じゃないんだよ香奈!信じてほしいなぁ!!真相が知りたいだけなんです!!!

紫「それじゃあ、そのご褒美……」

と言うと、修一の足が地面への接地感を失う。

紫「とくと堪能しなさいな」

修「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」

香「修一さん!!!」

ものすごい声を上げながら紫のスキマに落ちていく修一。あまりにも突然の出来事に、香奈はそれを見送ることしかできなかった。

紫「じゃあまた後でね♪」

そういうと紫は、何事もなかったかのようにスキマへと姿を消す。

一人残された香奈は、この一瞬にいろいろ起きすぎたせいか、ただ呆然と立ち尽くしていた。

しばらくすると香奈は脳の処理が追いつき、修一がスキマに呑み込まれた事の重大さを知り、パニックに陥ってしまった。

香「あああああ!!!ちょちょちょっと!!!紫さん!!!修一さんを返してください!!!」

誰もいない空間に向かって叫ぶ香奈。その声が紫に届いたのか、香奈の真後ろにスキマができる。本人は気づいていないようだが……

修「がっ!!!!!!」

香奈の真後ろに、スキマに呑み込まれた修一が勢い良く落ちる。

香「ぎゃあああああ!!!!!!」

ボキッ









修「いっててて……」

ここは、またあの布団……ここは俺のリスポーン地点なのか?

香「本当ごめんなさい本当ごめんなさい」

布団の傍に目を移すと、座り込んだ香奈がいた。

落下した時に頭から落ちてしまった為に首が変な方向に曲がり、そこに追い討ち。驚いた香奈が蹴りを一発入れて骨がお逝きになる……ねぇ。いや、女の子とはいえ、流石は式神。素晴らしい力だ!おかげで死んだ!!

修「なーんかやっぱ慣れてきちゃったなぁ……」

香「あ゛あ゛あ゛あ゛」

頭を抱えながらへたり込む香奈に、復活した修一が手をかざす。

修「大丈夫大丈夫、不死身になった以上、死ぬことに慣れることも大事だと思うしさ。慣れてきて実はホッとしてたりするし。そんなに思い詰めなくてもいいよ」

香「……ほんどれずが……?」

鼻声の香奈は泣きながらそう返事をする。

修「大丈夫大丈夫。だから泣くな」

香「修一さ゛あ゛あ゛あ゛ん゛ん゛ん゛」

寝込んでいる修一の胸に、泣きながら飛び込む香奈。

修「あーわかったわかった!わかったからまずその鼻水なんとかしろって!!!」









〈あとがき〉
ほぼ2ヶ月ぶりの更新となりました。
大幅に遅れました。すみませんでした!
今回は、修一君を振り回してみました。書いてて楽しかったのは内緒です。ごめんね修一君!
余談ですがもう12月なんですね。つい最近まで夏だったのが嘘のようです。

では、次回もお楽しみに