〈あらすじ〉
怨霊の回収を命じられた
修「よっ」
半分は薄暗い青、もう半分は紅く染まった空。そこをまるで魚のように飛び交う怨霊を、修一はスキマを使って旧地獄跡に送り返していた。
修「はぁ……疲れた……」
かれこれ一時間ほどこの作業をしているが、一向に怨霊が減る気配がない。それもそのはず。この怨霊達は、数日間もの間地上に出続けていたのだ。一時間やそこらの時間で片付く量ではない。
さすがの修一も、この量の前には屈服せざるを得ない。それでも続ける理由は、止めようとする度に、紫が直々に懲らしめてくるからだ。つまり、やめたくてもやめられない状況に置かれていた。
修「あぁもうやめたい」
紫「自分から引き受けた仕事でしょう?だったら最後まで遂行しなさい。男でしょ?力仕事は十八番でしょうに」
薄ら笑いを浮かべる紫は、その顔を扇子で隠す。
修「うるさいn」
紫「じゃあ頑張って頂戴ね」
紫はそう呟くとそのままスキマへと消えていった。一人残された修一は、深いため息をつきながら、再び作業にとりかかった。
修「ふう……」
山や森を、スキマを駆使して駆け巡り、気が着いた時には日は完全に沈み、魔法で作った炎を頼りに怨霊を探していた。炎が怨霊に見えてしまうのが、少し皮肉だ。
周囲を目を凝らして探していると、一体の怨霊を見つける。慣れた手つきでスキマへと誘導し、旧地獄跡へと送り込む。この作業のおかげでスキマの使い方が上手くなったと自負したいところだが、上手くなったところで何かを得るわけでもない。
修「終わったかな……終わったよな」
終わっていてほしいと心から願うが、実際のところは、自信も確信もない。ただそうあっていてほしいだけだ。
ふと、足元の茂みから草の触れ合う音が聞こえる。飛んでいた修一は、怨霊を見つけやすくする為に炎の明かりを弱め、目を凝らしてその付近を凝視する。
?「……へっくしっ!」
修「そこかッ!!!」
声のする方向に向かい弾幕を放つ。怨霊の気配がしない時点で、人か妖怪だという見当はついていた。だがこの深夜に人が森をうろついているとは到底思えない。だとしたら潜んでいるのは妖怪。声がしたら弾幕を放とう。という発想だった。
しかし現実はそうではなかった。弾を撃った地点に降り立つと、弾をもろに食らって伸びている何者かの影がそこにはあった。修一が炎でその顔を照らす。
修「……は!?」
香「くきゅう~……」
妖怪でもない、人でもない、そこにあったのは式神である香奈の姿だった。
修「ご、ごめん」
〈あとがき〉
一週間前に最新話更新したんじゃないのってぐらい、時間感覚が狂って参りました。
季節もそろそろ冬に向かっていきますね……一番好きな季節は冬なのですが、その理由としましては、虫がいないということです。
さて、世間話はここまでで……今回は怨霊退治の回でした。修一がこの場面で一人で喋るというのは違和感があるので、今回は頑張って、セリフというのを減らしてみました。この作風スタイルはこれからも保っていきたいとは思っております。
では、次回もお楽しみに