「最後の…技を使っても…倒せなかったら降参してやるよ!!」
修一はゆっくりと上昇し、咲夜と同じ高さまで上昇した頃、ポケットから札を取り出す。
「夏至『昼下がりの夕立』!!」
スペルカードを発動する。
空が突然曇りだす。まあ、異変と変わりないけど…
「…雨雲…ですね…」
「突っ立ってんじゃねえぞ!!」
突然の大雨が咲夜を襲う。
「きゃあッ!このッ!!」
「…俺より、上を気にしたほうがいいぞ!!」
「え…?」
雲から轟音が伝わってくる。
「…まずい!」
雷だ。今、咲夜はずぶ濡れ状態。そんなタイミングで雷でも落ちればひとたまりもない。
「くっ!」
ものすごい轟音と、雷が落ちる。耳がキーンとする。
もちろん、修一が放つ弾幕もある。前(弾幕)と上(雷)の、同時攻撃だ。
まあ、この雷はわざと外れるように、修一がコントロールしている。当たったらもうとんでもないし…というか、咲夜、キレて…る?やりすぎた…
「とどめッ!!」
「なっ!」
咲夜の周りに、こっちに切っ先を向ける大量のナイフが現れる。
「…まて、これは…!」
大変だ、たしか銀は、導体の中でもかなり電気を通す物質。もしあのナイフが純粋な銀で作られていたとすると、雷がナイフを伝って、咲夜に当たるかもしれない‼しかも、ナイフが浮いている範囲が広すぎて、雷を落とす場所がない!
落とさなければいいじゃないかと思うが、落とさなかったら、強制的に対象者を狙って落ちるように作ってしまったのが現実だ。
「咲夜、逃げろ!」
「誰が逃げると言いましたか!」
もうすぐ雷が落ちる…スペルカードは同時に2個も使えない…なにか、なにか他にできる事は…くそ、何もできないのかよ…!!
『もう一つ。俺にしか関係ないんだけど、能力にも障害が起こる。』
障害…前までの俺の能力は、《能力を創る程度の能力》と、《能力を見抜く程度の能力》…
後者は今も健在なんだが、もし前者の能力に障害が起こり、内容が変化していたとしたら…その能力にかけてみるか…?
そんな事できる気なんて、全くしないけど、やるだけやってみるしか…たのむぞ!!
「ふぅ…」
とにかく意識を集中させる。やるべき事は一つ、とにかく雷を咲夜に当てない。それだけだ。
「…っ…くッ!」
あるかどうかもわからない能力を使う…使い方はわからないが、それは勘だ。
「もうすぐ落ちる…頼むぞ…!!」
次の瞬間、雷が落ちる。
「ッ!くそ、止まれッ!」
当たるな…当たらないでくれ!!
「…やった!」
雷は、ナイフ一本に当たり、その他のナイフに伝わることはなかった。
普通に伝わらなかったのか、能力によって伝わらなかったのか、それはわからないが、今はいい、とにかく、咲夜に雷が当たらなかっただけ良かった。
「はあッ!!」
「…え、」
しまった、咲夜はまだ殺る気なんだった…
「詰んだな…」
「いっててて…」
「…あの、大丈夫ですか?」
体中に刺さったナイフは、思ったより深く、一回死んだ。そして、そのまま下に落ちた時、またさらに深くナイフが刺さった。おかげさまで回復が遅い。
死んでたから痛みはなかったけど…なんか…こう、スッキリしない。
「…それにしても、あの時雷が当たらなかったのは、あなたが雷を止めた…というような事だったんですね?」
「そういう事。っててて…」
まあ、どんな能力かがわからないから、自分で言うのもなんだけど、怖い。
「…咲夜、あの、洗濯物ごめん…」
俺の所為じゃないけど、謝っておかないと(個人的に)やばい。
「いや、それは修一様がやった訳ではないので。…悪いのは冷斗です…ッ!」
「そうか…まあ、ごめん。」
「…そうですね、では、この異変が終わり次第、なにか手伝っていただきましょう。」
「わかった。」
これはもう、断るわけにはいかない。
「…レミリアお嬢様、行きましょう。」
「そうね、さて…修一と言ったかしら。」
「え?ああ、そうだけど。」
「…覚えておいてあげるわ。」
「?…ああ…」
すると咲夜は修一の目の前から消え、レミリアの元に傘を開いた状態で現れた。
「…さて、次はどんな相手かしら?」
お前戦ってねえだろ。というツッコミは無い事にしておき、次の相手に備えて、傷の再生を待つ修一だった。