ドスッ

「うッ!」

「妖夢ッ!!」

妖夢が吹き飛ぶ。冷斗が足を使って蹴り上げたらしい。足を上に伸ばした状態で止まっている。

「お前ら…あんまり調子にのんじゃねぇぞ!!」

突然冷斗が叫ぶ。それと同時に冷斗の周りに不吉なオーラが漂う。

「なんだ…これ…!!」

「人符『現世斬』ッ!!」

斬るスピードが速すぎて全く見えない、あの技を繰り出す妖夢。

「遅えんだよ!!」

「きゃッ!」

冷斗の蹴りによって、妖夢が再び吹き飛ぶ。

「嘘だろッ!?」

あの技を初見で見破っただと!?

「チッ、水符『ディフュージョンウォーター』!!」

「甘ェんだよ!!」

ものすごい速さでこちらに走って来る冷斗。

「やばっ…」

「ぅおらァッ!!」

避けれなかった。冷斗の蹴りをまともに受けた修一は門に直撃した。

「い…つつ…」

刀を手放してしまい、冷斗の足元に落ちている。もういやな予感はしている。

刀を口に咥えている冷斗が、ゆっくりとこっちに歩いて来る。

このままだと殺されるのは明確なのに、体が動かない。

「…じゃあ、死ね。」

首元に切っ先を当てられる。

「な…」

ここまでか…と思った矢先だった。門のそばで地響きがすると同時に、ものすごい熱を感じる。

一瞬、冷斗がふらつく。刀が首元から一瞬離れる。

また何か邪魔者が来ると感じたのか、焦る冷斗。

「チッ、早く仕留めねぇと!!」

「そう簡単にやられるかッ!!」

他の事に気を取られたかどうかわからないが、体を動かせるようになる。首元から刀が離れた瞬間に飛び立つ。

「修一ッ!心配かけやがって!!」

「妹紅ッ!!」

予想はしていたが、やはりあの熱は妹紅だったか。

「滅罪『正直者の死』ッ!!」

いきなりのスペルカード発動に、妹紅の豪快さを感じる。

「おらァ!!」

豪快な弾幕が冷斗を襲う。

「はんッ、その程度かオラァッ!!」

「な、なんだと!?こいつ、言わせておけば…!」

どうこうしているうちに、スペルカードが効果を失う。

「今度は俺だッ‼」

「いや、私ね。」

今までに聞いた事の無い声が、屋敷から聞こえる。

「…誰あれ?」

「ッ!幽々子様!!」

幽々子?聞いたことないな…

「私の屋敷でこれ以上暴れないでもらえるかしら?」

「うっせえんだよ、このクソババァがぁッ!!」

一瞬、幽々子の眉がピクッと動く。

「あなた、口には気をつけないといけないわよ?」

「知った事かクソババァ!!」

「あらあら、言葉には気をつけないといけないって、言ったわよね?私を怒らせない方が身のためよ?」

「うっせぇクソババァ!!」

「『反魂蝶 -八分咲-』」

「遅ェんだよ!」

幽々子は扇子をバッと開き、口元を隠すように持ってくる。

「どうかしら?」

その瞬間、修一の経験上一番の弾幕が放たれる。今までの弾幕と比べても、恐ろしく圧縮している。

流石に避けきれない冷斗。次々と球が直撃する。

「ぐッ…!!がぁあああッ!!」

冷斗が叫ぶと共に、足から灰となって消えていく。

…って、あっさり倒した⁉

「え?あ、嘘だろッ!?」

「畜生…主人を…やらせる…わけ…には…」

それが冷斗の最後の言葉だった。














「…で、どうしてこうなったのかしら?何か派手なパレードでも通ったのかしら?」

白玉楼の惨状を見た幽々子は、ため息をつきながら修一を問い詰める。

「…あの、俺が誰なのかわからないんじゃ…」

「妖夢から話しは聞いてるわ。結構普通の人だけど、少し猪突猛進なバカみたいなヤツってね。」

「えッ!?」

修一はその発言に驚き、即座に妖夢の顔を見る。

…妖夢も驚愕していた。

「バ、バカなんて言ってませんよ!幽々子様!!」

「ふふっ、冗談よ。」

「冗談か…」

安心する修一の肩を、妹紅が叩く。

「おい修一…左腕が…」

「…ッ!忘れてた!!」

忘れるもんなのかよ!?と激しいツッコミが妹紅から放たれる。

「お前、蓬莱人になったんじゃなかったのか!?」

「これはかくかくしかじかで…」

事情を説明。

「なんてこった…」

妹紅が頭を抱えてうずくまる。

「妹紅…」

「…す。」

「は?」

「ぶっ殺すッッッ!!!!」

バッと飛び上がったかと思うと、背中に炎の翼を出し、門を破壊する勢いで超長い階段を下って行った。

「あ…行っちゃったよ…」

「…なんかわからないけど、深い事情があるのね?」

幽々子が話しかける。

「…はい。」

「…今回は仕方ないわね。妖夢。」

「はい。」

「また門の修理、頼むわ。」

口を開けて驚愕する妖夢。

「…俺はこれで…」

妖夢に八つ当たりされる前にここから離れなければ…

「…修一さん?」

「はいィッ!?」

「わかってますよね…?」

「お、俺の、俺の所為じゃないって…」

いや、、わかってる。わかってるからさ、刀を構えた状態でこっちに来ないでくれ…

「うわぁぁああ!!」

「待ってぇえええ!!」

修一は地上に戻ろうと、妹紅の後を追いかける。それを追いかける妖夢。

一瞬、幽々子が笑ったように見えた。