階段を降りていく修一は、少し気になることがあった。そう、冷斗の能力だ。すべてを見抜いている時、それはわかった。前の冷斗の能力は、能力を無効化する内容だったのに対し、今回の冷斗の能力は、『対象者の怒りの感情を増加させる程度の能力』といった内容だったのだ…恐ろしい事に、能力を2つ持っていたということだ

「それでムキになってたんだな…」

「ん?なんだ?」

つい独り言をしてしまい、それに反応する魔理沙。

「え、いや、独り言。」

「あっそ。」

納得したらしく、また前を向いて進みはじめる。また沈黙の時間ができる。

ある程度進んだ頃、

「なぁ、修一。」

「なんだ?」

魔理沙から話しかけてきた。

「おまえさ、能力で博麗神社に繋げられないのか?」

「あ。」

しまった。いまは紫の能力が発動できる状況じゃないか。とその時気づいた。

「ちょっとまって…はい。」

能力を発動した修一は、自分と魔理沙の前にスキマを作り、博麗神社につなげた。

「おぉ、ありがと。ほっ」

スキマに飛び込み、境内に着地する魔理沙。修一もそれについて行く。

「よっと…」

綺麗に着地出来た。快感だった。

「あら、修一に魔理沙じゃない。どうしたの。」

神社の後ろから姿を現したのは、霊夢だった。

「いや、魔理沙と色々まわってたんだけど、とりあえず帰ってきたというかなんというか。」

「そんな感じだ。ま、そういう事だから、邪魔するぜ。」

「あ、ちょっと魔理沙、勝手に上がらないでよ。」

魔理沙が神社に上がり、それを追いかける霊夢。それをその場から動かずに見る修一。はぁ…何これ。と思いつつ、二人を追いかける修一だった。















「…魔理沙、その八卦路なんだけど。」

「ん?なんだ?」

これの事か?と、懐から八卦路を取り出す。

「そう、それ。それってさ…武器にしてる訳か?」

「え、まぁ、一種の武器だな。」

ふふふ…と、胸を張る魔理沙に、ははは…と愛想笑いをする。

「…弾幕勝負とかに武器持ち込んでもOKなのか?」

そう、正直生身では、冷斗は倒せないと考えていた。なら、弾幕以外の武器等で戦うのも有りかと考えたのだ。

「ま、まぁ、いいんじゃないか?」

「なんで疑問形なんだよ…」

まぁいいけど…と、つぶやく。

「何?武器か何か作るつもりなのかしら?」

「まぁ、そうだな。」

今の実力なら、コインを使ってレールガンとかもできると思う。そうなればすごいと思うけど、ファンの方々からパクリパクリ!と言われそうだから、やりたくない。でも、それ以外のアイデアあるのか。と言われると、正直無い。あるとしても、輪ゴム鉄砲ぐらいだ。勿論、威力は言うまでもない。

「どーすっかな…」

「身近な物を使えばどうかしら。」

「すぐに使えるようにもな…確かに身近な物って結構使えそうなんだよな。」

かと言って、霊夢のような多量の針を使う戦術は、外の世界の人間、ましてや中学生が、そんな数の針を使う。しかも戦うごとに集めるなんて事、容易では無い。コストもかかる。

「あー、もう。」

悩んだ。とにかく悩んだ。

「…もしかして、身近な物に心当たりが無いわけ?」

嘘でしょ…と言わんばかりの霊夢に、

「身近な物って言ってもさ…わりと無いもんだよ。」

「ほら、私みたいに針とか。」

その件に関してはすでに考えた。

「いや、外の世界じゃ針を集めるには案外お金とかかかるし、簡単じゃないんだよ。」

はぁ…と、ため息をつく。

「あれよ、身近な物でも、特に身近な物は、近くにありすぎて見えないって、どっかで聞いた事があるわよ。」

「身近な物でも、特に身近な物…?」

あって普通の物か?空気とかか?使い道ねーよ…

「なんか適当に武器になりそうな物挙げてってくれないか?」

みんなの意見を聞いてみるのもいいよな。

「針。」

「却下。」

霊夢はどんだけ針が好きなんだ。

「お札。」

札か…

「…それはとどめておく。魔理沙、なんかあるか?」

「え?あぁ…そうだな…男なら、刀とかだろ。でもやっぱり、喧嘩はどんな手を使ってでも、勝ったらいいんだぜ‼」

刀というアイデアはいいが、その後の発言が少々よろしく聞こえなかったのは俺だけだろうか。

「でも刀を買うほどの金はないからな…」

「もう、拒否ばっかりじゃない。修一はどんな物が良いのかしら?」

「まず携帯可能、使いやすい、威力がある。案外集めやすい。」

これは絶対条件としておきたいな。

「針じゃない。」

「確かにそうだけども‼」

針は恐ろしい。下手したら重症になるって。というか、武器ってそういうものだけど…

「まぁ、納得のいく物が見つかればいいわね。」

「まぁ、そうだな。」

先ほどの絶対条件をに当てはまる物を考え、再びじぶんの世界に引きこもる修一だった。