「大丈夫か?」

「あぁ、私はもう大丈夫だ。」

冷斗の件から、もう一週間が経った。ちなみに今は魔理沙の…じゃなくて、藍さんの所に来ている。今は回復しているらしく、普通にお茶と煎餅を食べている。正直、服装とのギャップがすごいがために、びっくりした。魔理沙の服装ならショートケーキとか、でなければ紅茶…などが似合いそうなのだが…あ、話がそれた…ちなみに藍さんも近くにいる。無言だけど。え?どうやって来たかって?もちろん紫の能力ですよ。一度行ったことがある場所へなら、簡単につなげられる。ただ、一度も行っていない、イメージを持っていないなどの状況なら、つなげられない。この点は不便である。これはオリジナルの能力と比べて内容が違うと思うので、俺が真似た能力はオリジナルより少し性能に衰えがあるのでは?という疑問を持たせた。

「ていうか、博麗神社はどうなったんだ?」

「あぁ、俺と霊夢と…ほかの妖精達に手伝ってもらって再建した。それも元の形に戻した訳じゃなく、少しリフォームもした。」

「ほぅ。どう変わったんだ?」

早く教えてくれよ~。って、好奇心溢れる魔理沙の発言。まぁ教えない理由もないし、いいけど。

「例えば。部屋を増やした。俺が泊まる時、部屋に少し困ったからな。」

「そんなの、お前と霊夢が同じ布団で一緒に寝ればいいじゃねぇか。ほれほれ、この色男め。」

「うるせぇ‼殺されるッ‼」

なんという事を言うんだ。ドキッとしたぞ。ほら、まだ心臓がバクバクしてる。

「それより、よく倒せたな。あんな奴をよ。」

「え?うん、なんとか…ただ、憶測だけど、冷斗は復活するんじゃないかって紫は予想してる…今回よりも強くなって。」

根拠は無いが、そんな気がしてならない。

「おいおい、それってまずいんじゃないか?あいつ、スペルカードルールを知らないうえに肉弾戦だぜ?無理だって。まずいって。」

「…俺もそう思うんだけど。今回の冷斗が序盤にすぎないとしたら、これからはとんでもなく恐ろしい敵になると思う。」

「もう既に恐ろしいんだけど。」

「俺もだよ…なんとか倒せたレベルなんだから。」

実際、あのスペルカードがなければ負けていたと、内心思っていた。

「じゃぁさ、これからあいつを倒す手助けをしてくれそうな奴を探さないか?」

「え、…でもそんな、迷惑かけるわけには…」

ふと、ある言葉が頭をよぎった。
『戦力は一つでも多いほうがいいだろ』
この前阿求に向かって言った言葉だった。

「…じゃぁ、話だけ聞こう。」

「決まりだな、よし、いくぞ。まずは私と面識がある奴からな。」

魔理沙がすっと立ち上がる。

「おぉぉ、大丈夫か?」

「あぁ、バッチリだ…激しい動きは危なっかしいだろうけど…」

「まぁ、病み上がりだし…あれ、魔理沙は病気とかじゃないから病み上がりって表現じゃないよな…じゃぁなんだ?…怪我上がり?…んな訳ないか…じゃぁなんだ…怪我仕立て?それじゃぁ意味もガラッと変わるよな…じゃぁ、怪g…」

「何ブツブツ言ってんだ、ほら、行くぜ?」

え?と振り向くと、既に魔理沙が準備していた。

「あぁぁ、ごめん、行こうか。」

「よし、まず向こう当たりかな?行くぜッ!」

土煙を散らしながら魔理沙が飛ぶ。それについて行くように修一も飛ぶ。

「…結局、私の出番は無かったな…一言ぐらい喋りたかったんだが…まぁいいか。さてと…買い物に行くか。えっと…豆腐と味噌と、油揚げと…」

遠くなって行く二人の姿を見ながら、今日の買い物のリストを考える藍であった。

























「…で、誰の所に行くんだ?」

「そうだな…レティ•ホワイトロック…そろそろ冬も終わるし、どっかに行くだろうから無理だな…橙は…藍次第だとして…アリスは…大丈夫だな。リリー•ホワイト?あれは無理だ。プリズムリバー三姉妹?無理だ。妖夢には来てもらえそうだが…幽々子は無理だな。」

「…何を言ってるんだ?」

話についていけない修一。無理もないと魔理沙が言う。

「まぁ、とりあえず一番頼りになりそうなアリスの所は置いといて、妖夢の所に行くか。」

なんで頼りになりそうなヤツの所を飛ばすんだよ!と思ったが、魔理沙と面識があるなら、暇な時にでも行くんだろう。と、とりあえず理解しておいた。

「というか、ようむってだれ?どこに住んでるんだ?」

「冥界。」

「は?冥界?」

予想もしないキーワードに思わず聞き返してしまった。

「め、冥界って…死後の世界じゃなかったっけ?」

「まぁそうだな…でも死にはしないって。」

「?」

疑問を抱えるが、今は魔理沙について行くしかない修一であった。
























「お、修一、あれがさっき言ってたプリズムリバー三姉妹だ。」

「どれどれ…?」

修一の目に映るのは、ヴァイオリンを持った人、トランペットを持った人、そして、キーボードを抱えた人の三人だ。

「…楽器関係か?」

「そうだな。ヴァイオリン持ったヤツは、確かルナサで、トランペット持ったヤツがメルラン、んで、キーボード持ったヤツが、リリカ…だったっけか。」

「ふ~ん…なぁ、ちょっと寄っていいか?」

「ん?あぁ、別にいいぜ。」

ふら~っと、プリズムリバー三姉妹の元に飛んで行く。

途中で三姉妹は気づいたらしく、こちらに向けて弾幕を…って⁉

「うぉあ⁉まてまて‼」

抵抗しないよ‼という仕草をして、なんとかやり過ごそうとする。

「俺は戦いたいんじゃないって‼」

そう叫ぶと、声が届いたのか知らないが、弾幕が止む。その間に、三姉妹の元に駆け込む。

「…あんた、魔理沙といるから私たちを潰しにきたのかと思った。」

ヴァイオリンを持った人が、そうつぶやく。なんか、暗いというか、そんな雰囲気が。服を白黒っぽいし。魔理沙っぽいけど、なんか違うな。

「…キミが、ルナサ…か?」

「そう。ルナサ・プリズムリバー。」

なるほど。覚えておくか。

「それでそれで、私がメルラン‼メルラン・プリズムリバーッ‼」

や、やけにテンション高いな…服も明るい色だし。

「メ、メルランな…ok…」

なんか暗かったり、明るかったり、不思議な三姉妹だな…

「で、私がリリカ・プリズムリバーよ。」

あ、この子は普通だな。

「それより、あなたは誰?」

「あ、俺は修一、暁 修一だ。よろしく。」

「よろしくね。」

軽い挨拶を交わした頃に、魔理沙が後ろからゆっくりと飛んでくる。

「で、修一はなんでプリズムリバー三姉妹の所に寄ってったんだ?好みの娘がいたのか~??」

何か裏があるような笑みを見せる。

「いや、そうじゃなくて。」

なんだよ。と言いたげな顔つきになる魔理沙。

「実はここ最近、楽器に触れてなくてさ、久々に吹いてみたいな~って…」

「…何?あんた、楽器の演奏ができるの?」

ルナサが疑問をぶつける。

「まぁ、フルートを吹いてた。今もだけど、幻想郷に来てから吹いてないんだよ。」

「幻想郷に来てから?まさかあなた、外の世界から迷い込んだ人間?」

リリカも疑問をぶつける。

「まぁ、うん。」

「ねぇねぇ、どうしてここにやって来たの??ねぇねぇ‼」

メルランも疑問を…って、疑問ぶつけられすぎじゃないか⁉

とりあえず、各々の疑問には答えた。

「…で、フルートは上手いのかしら。」

ルナサがつぶやく。

「まぁ、上手ではないな…」

「ちょっとまって…フルートか…」

何やらリリカが持っていたであろうカバンをあさり出す。

「…これね。」

リリカの手には、横長の箱が持たれていた。

開けて中を見ると、リングキー仕様のフルートだった。

「リングキーか…で、H足部管ときたか…」

俺のフルートはリングキーじゃないし、足部管なんてC足部管だぞ。そんな高価な物、買えない買えない。

「あら、割と詳しいのね。」

リリカが意外と言った顔を見せる。

「まぁ、ある程度は…ちょっと借りるよ。」

久々にフルートを吹く。

「んー…ちょっと、音が揺れてるわね…もう少し息のスピードを安定させたら良いかもしれないわね。」

「それ!よく言われる。」

「それ以外に言うなら…圧力をもう少し安定させて…」

それからなぜかレッスンが始まった。というか、こんな専門用語というか、そんな言葉をバシバシ言いまくって、大丈夫なのか⁉


























そしてレッスンが終わり…

「じゃ、また今度な~。リリカ、ありがとう‼」

「どういたしまして~!」

「まったね~‼‼」

「また今度。」

三姉妹そろって、別れを告げる。にしても、不思議な三姉妹だったな…あれ、本当に三姉妹なのか?と思うぐらい性格がバラバラだったけど。






































そしてしばらくして…

「だいぶ上に来たな…魔理沙ぁ、疲れたぁ…」

「あったぞ。あれだ。」

「…ん?」

よく見ると空の上によくわからない空間の歪み?か何かが見える。なんていうか…結界で遮っている感じ。

「あれを越えるのか?」

「ご名答。」

「うわ~…疲れるなぁ…魔理沙、箒につかまっていいか?」

少しおねだりをしてみる。

「いや、これも慣れないとな。後少しなんだし、頑張れよ。男だろ?」

「いや、まぁ男だけど…分かったよ。


渋々普通に飛んで行く。距離的には本当に少しだった。例えるなら…電信柱2~3本分ほどの距離だった。…割近かったんだな。

「越えるぜ!」

「ぁ、うん。」

結界を越える。この結界は異様な程に薄く、簡単に越えられた。

結界を越えた時、修一は愕然とした。

「…嘘だろおい、これって…」

「さ、着いたぜ。今から階段登るからな。」

「がぁぁぁ…」

「けど今日は病み上がりだからな…無事に越えられそうにはないな…とりあえず修一、行くぜ。」

目の前にあるのは、頂上が見えないほど長い階段だった。これを魔理沙は越えると言うのだが、正直そんな体力は残っていない。飛んでも歩いても一緒だと思う。

「…まぁ、行くか。」

階段に足を乗せ、進んで行く。一歩一歩踏み込むたびに、足に負担がかかるのが分かる。飛ばない理由は、歩く負担と、飛ぶ負担は少し違っていて、歩く負担は、簡単に説明すると、疲労そのもの。飛ぶ負担は、また少し違って、精神的に疲労がたまるため、心身ともに疲労がかかる。ただ今回は、長時間、上昇だからまた少し違うのだろう…まだそういう理由は分からないけど。

そして、下が見えにくくなる程の高さあたりで、

「はぁ…はぁ…はぁ…こ、これで、半分か?」

自分より上にいる魔理沙に尋ねる

「いいや、まだ半分の半分以下ぐらいだろうな…俺もそろそろ疲れて来た…」

「魔理沙…大丈夫か?」

「え?あぁ、大丈夫だ。とりあえず、行くぞ。」

そして再び歩み始める。正直なところ、喉がからっからであった。













それからさらに進む。

「…はぁ…はぁ…はぁ…ま、魔理沙…だい、だい、大丈夫…か?」

「ごめん…そろそろ…俺も…やばいかも…」

魔理沙が一瞬フラッとする。

「おっと…危ない危ない…魔理沙、大丈夫じゃなさそうだな…」

「いや…大丈夫…だ。よし、行くか…」

魔理沙が進んで行く。すると、足を滑らせたのか、階段から落ちてしまった。

「ちょ!嘘だろ!」

すぐさま魔理沙の真後ろにつき、受け止める。

「…うぇぇい。大丈夫じゃぁないな。おぶっていくよ。」

「…ごめん。」

とりあえずおぶる。ただ、ここでいくつか問題が起きた。

まず一つは、体にかかる負担がぐっと上がったこと。

そしてもう一つは、おぶるのはいいが、そうすると、腕が自然と『いろいろヤバイ』所に行くので、心拍数が半端じゃない。その上に、修一の顔の横には息を切らしている魔理沙の顔。このシチュエーションで登り切ることが出来るのかどうかは、正直無理だと思える。だが下ろすと言うことも出来るわけがない。もう、登るしかない。

「…ふぅ。」

一息整え、再び歩き出す。






















3000段目。

「ぜぇ…ぜぇ…」

頭の中は既に真っ白だった。もうなにも考えていなかった。とにかく、進んで行く。それしか頭に無かった。魔理沙の件も、それどころでは無かった。今の修一は、とにかく進む。それだけだった。

























6000段目

「つ…着い…た…のか…?」

目の前にあるのは、大きくそびえ立つ門だった。

「くっ…開…け…!」

ぐーっと片手で門を押す。この状況を例えるなら…もの○け姫のあのシーンを想像して頂きたい。

「あい…た…」

人一人分が通れるぐらいに門を開け、中に入る。

「もう…無理…」

体力の限界、身体共に疲労困憊、緊張の糸が切れる、これらが重なり、修一は魔理沙をおぶったまま、前にぶっ倒れた。















それを建物の天井から見ている一人の男がいた。

「…ここに来てどうするつもりなんだ?別に何も変わんないのに…無駄な努力なのにな。」

ぶっ倒れた修一をみて嘲笑う男は、屋根の奥の方へと姿を消した。