「大丈夫か?」
「あぁ、私はもう大丈夫だ。」
冷斗の件から、もう一週間が経った。ちなみに今は魔理沙の…じゃなくて、藍さんの所に来ている。今は回復しているらしく、普通にお茶と煎餅を食べている。正直、服装とのギャップがすごいがために、びっくりした。魔理沙の服装ならショートケーキとか、でなければ紅茶…などが似合いそうなのだが…あ、話がそれた…ちなみに藍さんも近くにいる。無言だけど。え?どうやって来たかって?もちろん紫の能力ですよ。一度行ったことがある場所へなら、簡単につなげられる。ただ、一度も行っていない、イメージを持っていないなどの状況なら、つなげられない。この点は不便である。これはオリジナルの能力と比べて内容が違うと思うので、俺が真似た能力はオリジナルより少し性能に衰えがあるのでは?という疑問を持たせた。
「ていうか、博麗神社はどうなったんだ?」
「あぁ、俺と霊夢と…ほかの妖精達に手伝ってもらって再建した。それも元の形に戻した訳じゃなく、少しリフォームもした。」
「ほぅ。どう変わったんだ?」
早く教えてくれよ~。って、好奇心溢れる魔理沙の発言。まぁ教えない理由もないし、いいけど。
「例えば。部屋を増やした。俺が泊まる時、部屋に少し困ったからな。」
「そんなの、お前と霊夢が同じ布団で一緒に寝ればいいじゃねぇか。ほれほれ、この色男め。」
「うるせぇ‼殺されるッ‼」
なんという事を言うんだ。ドキッとしたぞ。ほら、まだ心臓がバクバクしてる。
「それより、よく倒せたな。あんな奴をよ。」
「え?うん、なんとか…ただ、憶測だけど、冷斗は復活するんじゃないかって紫は予想してる…今回よりも強くなって。」
根拠は無いが、そんな気がしてならない。
「おいおい、それってまずいんじゃないか?あいつ、スペルカードルールを知らないうえに肉弾戦だぜ?無理だって。まずいって。」
「…俺もそう思うんだけど。今回の冷斗が序盤にすぎないとしたら、これからはとんでもなく恐ろしい敵になると思う。」
「もう既に恐ろしいんだけど。」
「俺もだよ…なんとか倒せたレベルなんだから。」
実際、あのスペルカードがなければ負けていたと、内心思っていた。
「じゃぁさ、これからあいつを倒す手助けをしてくれそうな奴を探さないか?」
「え、…でもそんな、迷惑かけるわけには…」
ふと、ある言葉が頭をよぎった。
『戦力は一つでも多いほうがいいだろ』
この前阿求に向かって言った言葉だった。
「…じゃぁ、話だけ聞こう。」
「決まりだな、よし、いくぞ。まずは私と面識がある奴からな。」
魔理沙がすっと立ち上がる。
「おぉぉ、大丈夫か?」
「あぁ、バッチリだ…激しい動きは危なっかしいだろうけど…」
「まぁ、病み上がりだし…あれ、魔理沙は病気とかじゃないから病み上がりって表現じゃないよな…じゃぁなんだ?…怪我上がり?…んな訳ないか…じゃぁなんだ…怪我仕立て?それじゃぁ意味もガラッと変わるよな…じゃぁ、怪g…」
「何ブツブツ言ってんだ、ほら、行くぜ?」
え?と振り向くと、既に魔理沙が準備していた。
「あぁぁ、ごめん、行こうか。」
「よし、まず向こう当たりかな?行くぜッ!」
土煙を散らしながら魔理沙が飛ぶ。それについて行くように修一も飛ぶ。
「…結局、私の出番は無かったな…一言ぐらい喋りたかったんだが…まぁいいか。さてと…買い物に行くか。えっと…豆腐と味噌と、油揚げと…」
遠くなって行く二人の姿を見ながら、今日の買い物のリストを考える藍であった。
「…で、誰の所に行くんだ?」
「そうだな…レティ•ホワイトロック…そろそろ冬も終わるし、どっかに行くだろうから無理だな…橙は…藍次第だとして…アリスは…大丈夫だな。リリー•ホワイト?あれは無理だ。プリズムリバー三姉妹?無理だ。妖夢には来てもらえそうだが…幽々子は無理だな。」
「…何を言ってるんだ?」
話についていけない修一。無理もないと魔理沙が言う。
「まぁ、とりあえず一番頼りになりそうなアリスの所は置いといて、妖夢の所に行くか。」
なんで頼りになりそうなヤツの所を飛ばすんだよ!と思ったが、魔理沙と面識があるなら、暇な時にでも行くんだろう。と、とりあえず理解しておいた。
「というか、ようむってだれ?どこに住んでるんだ?」
「冥界。」
「は?冥界?」
予想もしないキーワードに思わず聞き返してしまった。
「め、冥界って…死後の世界じゃなかったっけ?」
「まぁそうだな…でも死にはしないって。」
「?」
疑問を抱えるが、今は魔理沙について行くしかない修一であった。
「お、修一、あれがさっき言ってたプリズムリバー三姉妹だ。」
「どれどれ…?」
修一の目に映るのは、ヴァイオリンを持った人、トランペットを持った人、そして、キーボードを抱えた人の三人だ。
「…楽器関係か?」
「そうだな。ヴァイオリン持ったヤツは、確かルナサで、トランペット持ったヤツがメルラン、んで、キーボード持ったヤツが、リリカ…だったっけか。」
「ふ~ん…なぁ、ちょっと寄っていいか?」
「ん?あぁ、別にいいぜ。」
ふら~っと、プリズムリバー三姉妹の元に飛んで行く。
途中で三姉妹は気づいたらしく、こちらに向けて弾幕を…って⁉
「うぉあ⁉まてまて‼」
抵抗しないよ‼という仕草をして、なんとかやり過ごそうとする。
「俺は戦いたいんじゃないって‼」
そう叫ぶと、声が届いたのか知らないが、弾幕が止む。その間に、三姉妹の元に駆け込む。
「…あんた、魔理沙といるから私たちを潰しにきたのかと思った。」
ヴァイオリンを持った人が、そうつぶやく。なんか、暗いというか、そんな雰囲気が。服を白黒っぽいし。魔理沙っぽいけど、なんか違うな。
「…キミが、ルナサ…か?」
「そう。ルナサ・プリズムリバー。」
なるほど。覚えておくか。
「それでそれで、私がメルラン‼メルラン・プリズムリバーッ‼」
や、やけにテンション高いな…服も明るい色だし。
「メ、メルランな…ok…」
なんか暗かったり、明るかったり、不思議な三姉妹だな…
「で、私がリリカ・プリズムリバーよ。」
あ、この子は普通だな。
「それより、あなたは誰?」
「あ、俺は修一、暁 修一だ。よろしく。」
「よろしくね。」
軽い挨拶を交わした頃に、魔理沙が後ろからゆっくりと飛んでくる。
「で、修一はなんでプリズムリバー三姉妹の所に寄ってったんだ?好みの娘がいたのか~??」
何か裏があるような笑みを見せる。
「いや、そうじゃなくて。」
なんだよ。と言いたげな顔つきになる魔理沙。
「実はここ最近、楽器に触れてなくてさ、久々に吹いてみたいな~って…」
「…何?あんた、楽器の演奏ができるの?」
ルナサが疑問をぶつける。
「まぁ、フルートを吹いてた。今もだけど、幻想郷に来てから吹いてないんだよ。」
「幻想郷に来てから?まさかあなた、外の世界から迷い込んだ人間?」
リリカも疑問をぶつける。
「まぁ、うん。」
「ねぇねぇ、どうしてここにやって来たの??ねぇねぇ‼」
メルランも疑問を…って、疑問ぶつけられすぎじゃないか⁉
とりあえず、各々の疑問には答えた。
「…で、フルートは上手いのかしら。」
ルナサがつぶやく。
「まぁ、上手ではないな…」
「ちょっとまって…フルートか…」
何やらリリカが持っていたであろうカバンをあさり出す。
「…これね。」
リリカの手には、横長の箱が持たれていた。
開けて中を見ると、リングキー仕様のフルートだった。
「リングキーか…で、H足部管ときたか…」
俺のフルートはリングキーじゃないし、足部管なんてC足部管だぞ。そんな高価な物、買えない買えない。
「あら、割と詳しいのね。」
リリカが意外と言った顔を見せる。
「まぁ、ある程度は…ちょっと借りるよ。」
久々にフルートを吹く。
「んー…ちょっと、音が揺れてるわね…もう少し息のスピードを安定させたら良いかもしれないわね。」
「それ!よく言われる。」
「それ以外に言うなら…圧力をもう少し安定させて…」
それからなぜかレッスンが始まった。というか、こんな専門用語というか、そんな言葉をバシバシ言いまくって、大丈夫なのか⁉
そしてレッスンが終わり…
「じゃ、また今度な~。リリカ、ありがとう‼」
「どういたしまして~!」
「まったね~‼‼」
「また今度。」
三姉妹そろって、別れを告げる。にしても、不思議な三姉妹だったな…あれ、本当に三姉妹なのか?と思うぐらい性格がバラバラだったけど。
そしてしばらくして…
「だいぶ上に来たな…魔理沙ぁ、疲れたぁ…」
「あったぞ。あれだ。」
「…ん?」
よく見ると空の上によくわからない空間の歪み?か何かが見える。なんていうか…結界で遮っている感じ。
「あれを越えるのか?」
「ご名答。」
「うわ~…疲れるなぁ…魔理沙、箒につかまっていいか?」
少しおねだりをしてみる。
「いや、これも慣れないとな。後少しなんだし、頑張れよ。男だろ?」
「いや、まぁ男だけど…分かったよ。
」
渋々普通に飛んで行く。距離的には本当に少しだった。例えるなら…電信柱2~3本分ほどの距離だった。…割近かったんだな。
「越えるぜ!」
「ぁ、うん。」
結界を越える。この結界は異様な程に薄く、簡単に越えられた。
結界を越えた時、修一は愕然とした。
「…嘘だろおい、これって…」
「さ、着いたぜ。今から階段登るからな。」
「がぁぁぁ…」
「けど今日は病み上がりだからな…無事に越えられそうにはないな…とりあえず修一、行くぜ。」
目の前にあるのは、頂上が見えないほど長い階段だった。これを魔理沙は越えると言うのだが、正直そんな体力は残っていない。飛んでも歩いても一緒だと思う。
「…まぁ、行くか。」
階段に足を乗せ、進んで行く。一歩一歩踏み込むたびに、足に負担がかかるのが分かる。飛ばない理由は、歩く負担と、飛ぶ負担は少し違っていて、歩く負担は、簡単に説明すると、疲労そのもの。飛ぶ負担は、また少し違って、精神的に疲労がたまるため、心身ともに疲労がかかる。ただ今回は、長時間、上昇だからまた少し違うのだろう…まだそういう理由は分からないけど。
そして、下が見えにくくなる程の高さあたりで、
「はぁ…はぁ…はぁ…こ、これで、半分か?」
自分より上にいる魔理沙に尋ねる
「いいや、まだ半分の半分以下ぐらいだろうな…俺もそろそろ疲れて来た…」
「魔理沙…大丈夫か?」
「え?あぁ、大丈夫だ。とりあえず、行くぞ。」
そして再び歩み始める。正直なところ、喉がからっからであった。
それからさらに進む。
「…はぁ…はぁ…はぁ…ま、魔理沙…だい、だい、大丈夫…か?」
「ごめん…そろそろ…俺も…やばいかも…」
魔理沙が一瞬フラッとする。
「おっと…危ない危ない…魔理沙、大丈夫じゃなさそうだな…」
「いや…大丈夫…だ。よし、行くか…」
魔理沙が進んで行く。すると、足を滑らせたのか、階段から落ちてしまった。
「ちょ!嘘だろ!」
すぐさま魔理沙の真後ろにつき、受け止める。
「…うぇぇい。大丈夫じゃぁないな。おぶっていくよ。」
「…ごめん。」
とりあえずおぶる。ただ、ここでいくつか問題が起きた。
まず一つは、体にかかる負担がぐっと上がったこと。
そしてもう一つは、おぶるのはいいが、そうすると、腕が自然と『いろいろヤバイ』所に行くので、心拍数が半端じゃない。その上に、修一の顔の横には息を切らしている魔理沙の顔。このシチュエーションで登り切ることが出来るのかどうかは、正直無理だと思える。だが下ろすと言うことも出来るわけがない。もう、登るしかない。
「…ふぅ。」
一息整え、再び歩き出す。
3000段目。
「ぜぇ…ぜぇ…」
頭の中は既に真っ白だった。もうなにも考えていなかった。とにかく、進んで行く。それしか頭に無かった。魔理沙の件も、それどころでは無かった。今の修一は、とにかく進む。それだけだった。
6000段目
「つ…着い…た…のか…?」
目の前にあるのは、大きくそびえ立つ門だった。
「くっ…開…け…!」
ぐーっと片手で門を押す。この状況を例えるなら…もの○け姫のあのシーンを想像して頂きたい。
「あい…た…」
人一人分が通れるぐらいに門を開け、中に入る。
「もう…無理…」
体力の限界、身体共に疲労困憊、緊張の糸が切れる、これらが重なり、修一は魔理沙をおぶったまま、前にぶっ倒れた。
それを建物の天井から見ている一人の男がいた。
「…ここに来てどうするつもりなんだ?別に何も変わんないのに…無駄な努力なのにな。」
ぶっ倒れた修一をみて嘲笑う男は、屋根の奥の方へと姿を消した。
「あぁ、私はもう大丈夫だ。」
冷斗の件から、もう一週間が経った。ちなみに今は魔理沙の…じゃなくて、藍さんの所に来ている。今は回復しているらしく、普通にお茶と煎餅を食べている。正直、服装とのギャップがすごいがために、びっくりした。魔理沙の服装ならショートケーキとか、でなければ紅茶…などが似合いそうなのだが…あ、話がそれた…ちなみに藍さんも近くにいる。無言だけど。え?どうやって来たかって?もちろん紫の能力ですよ。一度行ったことがある場所へなら、簡単につなげられる。ただ、一度も行っていない、イメージを持っていないなどの状況なら、つなげられない。この点は不便である。これはオリジナルの能力と比べて内容が違うと思うので、俺が真似た能力はオリジナルより少し性能に衰えがあるのでは?という疑問を持たせた。
「ていうか、博麗神社はどうなったんだ?」
「あぁ、俺と霊夢と…ほかの妖精達に手伝ってもらって再建した。それも元の形に戻した訳じゃなく、少しリフォームもした。」
「ほぅ。どう変わったんだ?」
早く教えてくれよ~。って、好奇心溢れる魔理沙の発言。まぁ教えない理由もないし、いいけど。
「例えば。部屋を増やした。俺が泊まる時、部屋に少し困ったからな。」
「そんなの、お前と霊夢が同じ布団で一緒に寝ればいいじゃねぇか。ほれほれ、この色男め。」
「うるせぇ‼殺されるッ‼」
なんという事を言うんだ。ドキッとしたぞ。ほら、まだ心臓がバクバクしてる。
「それより、よく倒せたな。あんな奴をよ。」
「え?うん、なんとか…ただ、憶測だけど、冷斗は復活するんじゃないかって紫は予想してる…今回よりも強くなって。」
根拠は無いが、そんな気がしてならない。
「おいおい、それってまずいんじゃないか?あいつ、スペルカードルールを知らないうえに肉弾戦だぜ?無理だって。まずいって。」
「…俺もそう思うんだけど。今回の冷斗が序盤にすぎないとしたら、これからはとんでもなく恐ろしい敵になると思う。」
「もう既に恐ろしいんだけど。」
「俺もだよ…なんとか倒せたレベルなんだから。」
実際、あのスペルカードがなければ負けていたと、内心思っていた。
「じゃぁさ、これからあいつを倒す手助けをしてくれそうな奴を探さないか?」
「え、…でもそんな、迷惑かけるわけには…」
ふと、ある言葉が頭をよぎった。
『戦力は一つでも多いほうがいいだろ』
この前阿求に向かって言った言葉だった。
「…じゃぁ、話だけ聞こう。」
「決まりだな、よし、いくぞ。まずは私と面識がある奴からな。」
魔理沙がすっと立ち上がる。
「おぉぉ、大丈夫か?」
「あぁ、バッチリだ…激しい動きは危なっかしいだろうけど…」
「まぁ、病み上がりだし…あれ、魔理沙は病気とかじゃないから病み上がりって表現じゃないよな…じゃぁなんだ?…怪我上がり?…んな訳ないか…じゃぁなんだ…怪我仕立て?それじゃぁ意味もガラッと変わるよな…じゃぁ、怪g…」
「何ブツブツ言ってんだ、ほら、行くぜ?」
え?と振り向くと、既に魔理沙が準備していた。
「あぁぁ、ごめん、行こうか。」
「よし、まず向こう当たりかな?行くぜッ!」
土煙を散らしながら魔理沙が飛ぶ。それについて行くように修一も飛ぶ。
「…結局、私の出番は無かったな…一言ぐらい喋りたかったんだが…まぁいいか。さてと…買い物に行くか。えっと…豆腐と味噌と、油揚げと…」
遠くなって行く二人の姿を見ながら、今日の買い物のリストを考える藍であった。
「…で、誰の所に行くんだ?」
「そうだな…レティ•ホワイトロック…そろそろ冬も終わるし、どっかに行くだろうから無理だな…橙は…藍次第だとして…アリスは…大丈夫だな。リリー•ホワイト?あれは無理だ。プリズムリバー三姉妹?無理だ。妖夢には来てもらえそうだが…幽々子は無理だな。」
「…何を言ってるんだ?」
話についていけない修一。無理もないと魔理沙が言う。
「まぁ、とりあえず一番頼りになりそうなアリスの所は置いといて、妖夢の所に行くか。」
なんで頼りになりそうなヤツの所を飛ばすんだよ!と思ったが、魔理沙と面識があるなら、暇な時にでも行くんだろう。と、とりあえず理解しておいた。
「というか、ようむってだれ?どこに住んでるんだ?」
「冥界。」
「は?冥界?」
予想もしないキーワードに思わず聞き返してしまった。
「め、冥界って…死後の世界じゃなかったっけ?」
「まぁそうだな…でも死にはしないって。」
「?」
疑問を抱えるが、今は魔理沙について行くしかない修一であった。
「お、修一、あれがさっき言ってたプリズムリバー三姉妹だ。」
「どれどれ…?」
修一の目に映るのは、ヴァイオリンを持った人、トランペットを持った人、そして、キーボードを抱えた人の三人だ。
「…楽器関係か?」
「そうだな。ヴァイオリン持ったヤツは、確かルナサで、トランペット持ったヤツがメルラン、んで、キーボード持ったヤツが、リリカ…だったっけか。」
「ふ~ん…なぁ、ちょっと寄っていいか?」
「ん?あぁ、別にいいぜ。」
ふら~っと、プリズムリバー三姉妹の元に飛んで行く。
途中で三姉妹は気づいたらしく、こちらに向けて弾幕を…って⁉
「うぉあ⁉まてまて‼」
抵抗しないよ‼という仕草をして、なんとかやり過ごそうとする。
「俺は戦いたいんじゃないって‼」
そう叫ぶと、声が届いたのか知らないが、弾幕が止む。その間に、三姉妹の元に駆け込む。
「…あんた、魔理沙といるから私たちを潰しにきたのかと思った。」
ヴァイオリンを持った人が、そうつぶやく。なんか、暗いというか、そんな雰囲気が。服を白黒っぽいし。魔理沙っぽいけど、なんか違うな。
「…キミが、ルナサ…か?」
「そう。ルナサ・プリズムリバー。」
なるほど。覚えておくか。
「それでそれで、私がメルラン‼メルラン・プリズムリバーッ‼」
や、やけにテンション高いな…服も明るい色だし。
「メ、メルランな…ok…」
なんか暗かったり、明るかったり、不思議な三姉妹だな…
「で、私がリリカ・プリズムリバーよ。」
あ、この子は普通だな。
「それより、あなたは誰?」
「あ、俺は修一、暁 修一だ。よろしく。」
「よろしくね。」
軽い挨拶を交わした頃に、魔理沙が後ろからゆっくりと飛んでくる。
「で、修一はなんでプリズムリバー三姉妹の所に寄ってったんだ?好みの娘がいたのか~??」
何か裏があるような笑みを見せる。
「いや、そうじゃなくて。」
なんだよ。と言いたげな顔つきになる魔理沙。
「実はここ最近、楽器に触れてなくてさ、久々に吹いてみたいな~って…」
「…何?あんた、楽器の演奏ができるの?」
ルナサが疑問をぶつける。
「まぁ、フルートを吹いてた。今もだけど、幻想郷に来てから吹いてないんだよ。」
「幻想郷に来てから?まさかあなた、外の世界から迷い込んだ人間?」
リリカも疑問をぶつける。
「まぁ、うん。」
「ねぇねぇ、どうしてここにやって来たの??ねぇねぇ‼」
メルランも疑問を…って、疑問ぶつけられすぎじゃないか⁉
とりあえず、各々の疑問には答えた。
「…で、フルートは上手いのかしら。」
ルナサがつぶやく。
「まぁ、上手ではないな…」
「ちょっとまって…フルートか…」
何やらリリカが持っていたであろうカバンをあさり出す。
「…これね。」
リリカの手には、横長の箱が持たれていた。
開けて中を見ると、リングキー仕様のフルートだった。
「リングキーか…で、H足部管ときたか…」
俺のフルートはリングキーじゃないし、足部管なんてC足部管だぞ。そんな高価な物、買えない買えない。
「あら、割と詳しいのね。」
リリカが意外と言った顔を見せる。
「まぁ、ある程度は…ちょっと借りるよ。」
久々にフルートを吹く。
「んー…ちょっと、音が揺れてるわね…もう少し息のスピードを安定させたら良いかもしれないわね。」
「それ!よく言われる。」
「それ以外に言うなら…圧力をもう少し安定させて…」
それからなぜかレッスンが始まった。というか、こんな専門用語というか、そんな言葉をバシバシ言いまくって、大丈夫なのか⁉
そしてレッスンが終わり…
「じゃ、また今度な~。リリカ、ありがとう‼」
「どういたしまして~!」
「まったね~‼‼」
「また今度。」
三姉妹そろって、別れを告げる。にしても、不思議な三姉妹だったな…あれ、本当に三姉妹なのか?と思うぐらい性格がバラバラだったけど。
そしてしばらくして…
「だいぶ上に来たな…魔理沙ぁ、疲れたぁ…」
「あったぞ。あれだ。」
「…ん?」
よく見ると空の上によくわからない空間の歪み?か何かが見える。なんていうか…結界で遮っている感じ。
「あれを越えるのか?」
「ご名答。」
「うわ~…疲れるなぁ…魔理沙、箒につかまっていいか?」
少しおねだりをしてみる。
「いや、これも慣れないとな。後少しなんだし、頑張れよ。男だろ?」
「いや、まぁ男だけど…分かったよ。
」
渋々普通に飛んで行く。距離的には本当に少しだった。例えるなら…電信柱2~3本分ほどの距離だった。…割近かったんだな。
「越えるぜ!」
「ぁ、うん。」
結界を越える。この結界は異様な程に薄く、簡単に越えられた。
結界を越えた時、修一は愕然とした。
「…嘘だろおい、これって…」
「さ、着いたぜ。今から階段登るからな。」
「がぁぁぁ…」
「けど今日は病み上がりだからな…無事に越えられそうにはないな…とりあえず修一、行くぜ。」
目の前にあるのは、頂上が見えないほど長い階段だった。これを魔理沙は越えると言うのだが、正直そんな体力は残っていない。飛んでも歩いても一緒だと思う。
「…まぁ、行くか。」
階段に足を乗せ、進んで行く。一歩一歩踏み込むたびに、足に負担がかかるのが分かる。飛ばない理由は、歩く負担と、飛ぶ負担は少し違っていて、歩く負担は、簡単に説明すると、疲労そのもの。飛ぶ負担は、また少し違って、精神的に疲労がたまるため、心身ともに疲労がかかる。ただ今回は、長時間、上昇だからまた少し違うのだろう…まだそういう理由は分からないけど。
そして、下が見えにくくなる程の高さあたりで、
「はぁ…はぁ…はぁ…こ、これで、半分か?」
自分より上にいる魔理沙に尋ねる
「いいや、まだ半分の半分以下ぐらいだろうな…俺もそろそろ疲れて来た…」
「魔理沙…大丈夫か?」
「え?あぁ、大丈夫だ。とりあえず、行くぞ。」
そして再び歩み始める。正直なところ、喉がからっからであった。
それからさらに進む。
「…はぁ…はぁ…はぁ…ま、魔理沙…だい、だい、大丈夫…か?」
「ごめん…そろそろ…俺も…やばいかも…」
魔理沙が一瞬フラッとする。
「おっと…危ない危ない…魔理沙、大丈夫じゃなさそうだな…」
「いや…大丈夫…だ。よし、行くか…」
魔理沙が進んで行く。すると、足を滑らせたのか、階段から落ちてしまった。
「ちょ!嘘だろ!」
すぐさま魔理沙の真後ろにつき、受け止める。
「…うぇぇい。大丈夫じゃぁないな。おぶっていくよ。」
「…ごめん。」
とりあえずおぶる。ただ、ここでいくつか問題が起きた。
まず一つは、体にかかる負担がぐっと上がったこと。
そしてもう一つは、おぶるのはいいが、そうすると、腕が自然と『いろいろヤバイ』所に行くので、心拍数が半端じゃない。その上に、修一の顔の横には息を切らしている魔理沙の顔。このシチュエーションで登り切ることが出来るのかどうかは、正直無理だと思える。だが下ろすと言うことも出来るわけがない。もう、登るしかない。
「…ふぅ。」
一息整え、再び歩き出す。
3000段目。
「ぜぇ…ぜぇ…」
頭の中は既に真っ白だった。もうなにも考えていなかった。とにかく、進んで行く。それしか頭に無かった。魔理沙の件も、それどころでは無かった。今の修一は、とにかく進む。それだけだった。
6000段目
「つ…着い…た…のか…?」
目の前にあるのは、大きくそびえ立つ門だった。
「くっ…開…け…!」
ぐーっと片手で門を押す。この状況を例えるなら…もの○け姫のあのシーンを想像して頂きたい。
「あい…た…」
人一人分が通れるぐらいに門を開け、中に入る。
「もう…無理…」
体力の限界、身体共に疲労困憊、緊張の糸が切れる、これらが重なり、修一は魔理沙をおぶったまま、前にぶっ倒れた。
それを建物の天井から見ている一人の男がいた。
「…ここに来てどうするつもりなんだ?別に何も変わんないのに…無駄な努力なのにな。」
ぶっ倒れた修一をみて嘲笑う男は、屋根の奥の方へと姿を消した。