「あら、修一。また来たの?さっき帰ったばかりじゃない。」

「まあな、いろいろあって…」

神社の中の炬燵に入る。これって電気じゃないよな…なんで暖かいんだよ。

「ふぅん。別にここに来たかったわけじゃないのね。」

「いや、来たかったわけじゃないけど、ここにしか来れない状況におかれていて…」

「なに?深~い事情があるわけ?」

「…結構深い。」

まず、俺が外の世界でいてはいけない存在である事。昔に俺のご先祖様が妖怪と戦っていた事…この二つは結構深いと思う。

ん?まてよ。妖怪と戦っていた?その妖怪が…幻想郷の妖怪だとしたら…いや、そうだろう。でもお父さんの言う限り、かなり昔の事と思える。そうだな…ざっと400年ほどなんじゃないかな?いや、それはないか…

「…俺が産まれるよりも昔の事だからな…どうにも出来ない事情だな…」

「…産まれるよりも昔?昔の出来事とか、それぐらいなら全然大丈夫よ。阿求に頼めば?」

「阿求って誰?」

「阿求は阿求よ。会いに行けば?」

「いや、なんでその阿求って奴に頼むんだよ…」

「え、あいつはなんかずいぶんと昔の事を資料に書いてまとめているから…その資料を読めばなにかヒントになるんじゃないかと思うんだけど…」

「…なるほどな。でもずいぶんと昔の資料って言ったって、どうせ日本書紀とか古事記とかだろ?それには載ってないと思うんだけど。全部幻想郷関係ないし。」

学校の歴史で習った歴史書を引っ張り出す。しかもそれを読んだところで何もないと思うんだけど…

「あ、その古事記ってやつ、阿求のご先祖様が書き記したものよ?」

「はぁっ!?」

思わず叫んでしまう。ちょっと霊夢ビビってる。あー…

「あ、いや、いきなり叫んでごめんな…いや、まさか、そんな…」

ごめんなさい。古事記は幻想郷に関係ありました。いや、嘘だろ…霊夢…?

「嘘だと思うなら会いに行けば?」

「…え、まぁ、行こうかな?」

まぁ、行って損する事はないと思うし、行こう。

「でもさ、何処にいるのかわかんないんだけど…」

「あ、そうか。あんたここに来たのついこの前だったしね…分かるわけないか…まぁ、人里よ。」

「あ、妖怪じゃないのか?」

ここに来て人間に会うより、妖怪とかその辺にあった方が多かったから、勝手に阿求を妖怪と思ってしまった。なんかごめん…

「で、そいつ…阿求は人里にいるんだな?」

「いるわ。要件を話せば資料を見せてくれるわ。」

「ふぅん…じゃぁ…今のうちに行っておこうかな?」

「どうせここに居たって何もしないんでしょ?」

「…だな。よし、行ってくる。」

「行ってらっしゃい。」

人里に行くのは始めてだな…どんな人がいるんだろうか…まさかまたみんな女性とか…うわ、怖い。

というような事を考えつつ、スキマを開けようとしたが…まだその人里のイメージを俺は持っていない。故につなぐ事が出来ない。出来るだけ速く行きたいんだが…

「どうしたの?行かないの?」

「いや、スキマから行こうと思ったんだけど、人里の場所を俺は知らないからつなげないんだよ。」

「なるほどね…」

「…速く行ける方法ないかな…」

「だったら、スペカ使えばいいじゃない。」

「でもそんなスペカ持ってないぞ?」

「ないなら作る、それだけよ。」

「簡単に言うなよ…わかった。作った方が身のためだしな…」

「そうよ、作りなさい。」

速く行くってことは、速く動くってことだよな…

そんな試行錯誤を繰り返した結果…

「…また風符か…」

「できたの?」

「うん。風符『ムービングファスト』」

「…相変わらずのネーセンね。」

「はぁ…わかってくれよ、これが限界なんだからさ。」

「で、どんな内容?」

「簡単だよ、周りより速く動ける…それだけ。」

「なるほどね…」

「んじゃぁ、行ってくる。」

「行ってらっしゃい。」

じゃぁ、早速使うとしますか。

「風符『ムービングファスト』!!!」

スペカを発動。まだ実感はわかないが、とりあえず進む。

途中で妖精にあったが、なぜか止まって見えた。自分が速く動いているからなのか、それとも妖精が止まって見えるほどゆっくり動いていたか。おそらく前者だな。でも、ここまで速く動けるとは…あれ?風符って名前だけど風は関係なくね?













そんなこんなで人里と思える場所に到着。着く3,4分くらい前にスペカの効果がきれた。まぁ、構わないけど。

でも、ここはさすがに男がいるな。いや、嬉しい限りです。でも、その阿求って何処にいるんだろうか…聞いてみるか…

「あの、すいません。」

「ん?誰だい、あんた。見ない顔だな。」

「いや、まぁ、その、む、向こうから来たんですよ。」

適当に指を差す。多分この方向は…妖怪の山だな。

「む、向こうからって…あんた、まさか…妖怪か!?服装もどこか風変わりなのはそのせいか!?」

周りを歩いている村人が一斉に振り向く。

「誤解です。それ。」

「な、なんだ…良かったよ…今度こそ人を喰う妖怪が来たのかと思っちまったよ。」

周りの村人も、ドッと疲れたように肩を落として何もなかったかのように歩き出した。

「え、今度こそ?」

「あぁ、あそこに見えんだろ?」

「え?」

よくみるとそれは小傘だった。

「小傘じゃないか…」

「ん?知ってんのかい、あの妖怪を。」

「そりゃぁ、ね。知ってますよ。」

「なんだ、あんたあいつの知り合いかい。」

「小傘は何を?」

「あぁ、最初は炊いた米を売っていたんだがな、そんなに売れなかったんで今日店をたたんだそうだ。まぁ、米ぐらい各家庭で炊けるしな。」

あ…小傘、ごめん。

「あぁ、そういえばお前は俺になにか用があるのか?」

「あぁ、そうでしたね…この近くに、阿求という人はいますか?俺、その人に用事があるんです。」

「あぁ、それならあそこだ。」

ん?と指差す方をみる。あー…なんか屋敷っぽいな。

「あそこに阿求さんが住んでる。言っておくが、意外と毒舌だぞ。」

「わかりました。ありがとうございます。」

村人にお辞儀をする。あ、名前聞いておけばよかったな…

と思いつつ、屋敷っぽい家っぽいところにむかう。

表札には『稗田』と書かれている。なんて読むんだろ。まぁ、用があるその阿求という人が住んでいるから…本名は、稗田 阿求…なのかな?

まぁ、ピンポンするか…

あ、ないんだった。

「…すいませーん。」

「はーい」

ドタドタと足音が近づいてくる。

ガララッ

「はい。」

中から着物を着た、髪がピンクっぽい感じの女性が出てきた。

「あ、こんにちは。あの、ここに住んでいる、阿求さんという方に用があって…」

「あ、私ですが?」

「えぇっ!?」

まじか。これはある程度予想していたが、まじか。

「…なにか御用ですか?」

「あぁぁ、少し歴史書を見せてもらいたくて…見たい理由は話すと長いんですけど…」

「まぁ、入ってください。寒いでしょうから。」

「え、あ、はい…」

屋敷っぽい家の玄関に向かうが、庭がある。その庭の中には池もある。うん。これは屋敷だな。

「お邪魔します…」

「さぁ、こちらへ。」

廊下を渡って行く。なんていうか、清潔感あふれる屋敷だな。

そして、とある引き戸の前に到着。

「さぁ、どうぞ。」

「ぁ、はい。」

中にはいる。この部屋の第一印象は、日本の味が溢れ出ていると言った感じの部屋だった。

「さて…改めまして、私の名前は、稗田 阿求と言います。あなたの名前は?」

「あ、俺の名前は、暁 修一と申します。」

「修一さん…でよろしいですか?」

「あ、はい。」

「わかりました。では修一さん、御用というのは…いや、歴史書を見る理由をお聞きしたいのですが…」

「あ、はい。それはですね…」

うんたらかんたらと家の言い伝えと、その妖怪と俺の関わりの件を話す。

「…と言うわけです。」

「…なるほど、わかりました。では修一さんに、私の歴史書をお見せします。」

「ありがとうございます。」

「少し待っていてください。」

ててててて…と、部屋から出ていく。でもな~、多分歴史書ってちゃんと名前あると思うんだけど…まぁいいか。