「ただいま~」

いやー、まさかあの時俺が死んでいたとはな…意外意外。

「…あら、おかえり…」

…?元気がないな…なにかあったのかな?

その後、とくにおかしいことはなく、母さんと晩御飯を食べた。美味い。

そして、しばらくした時…

ガチャ。

「あれ?父さん?」

変だな、父さんはしばらく帰れないと言っていたんだけどな…もう帰ってきたのか。ものの4日じゃないか。

「ただいま。」

「おかえりなさーい」

軽いノリで返事をする。

「修一、お前、この家の言い伝えを知っているか?」

え?と不思議に思った。実はお父さんから話しかけてくる事は極稀なのだ。そのため、修一は驚きを隠せなかった。というか、帰って早々何言ってんだろ。

「言い伝え?」

…知らないな。

「知らない。教えて。」

「ああ、かなり昔の話しなんだがな、とある家に妖怪と深い関係にあった家があったんだ。そして、その妖怪の血を引いた子供がいたんだ。」

「妖怪の血を引いた?」

「ああ、いわばハーフみたいな感じだ。そして、その子供は妖術や魔法などの術が使えるようになったんだ。ところがだ、ある日突然その子供が暴れ出し、自分の家族も、近所の人も全て、自分の住んでいる村を一晩で滅ぼしてしまった。」

「気が狂った?」

「妖怪の血を抑えられなかったんだ。そこへ偶然通りかかった一人の男がいたんだ。その男はその村を見て驚いた。まぁ、人間が周りでゴロゴロ死んでいるんだから無理はないが…」

「…なるほど。」

「そして、その男は瀕死の人間を見つけ、看病をしだした。しかし、出血がひどく、助かるとはその男は思っていなかった。それでも必死で看病をしていた。その時だ。瀕死の男が口を開いた。」

「遺言?」

「そうだ。その男の言うには、子供が赤黒い煙のようなものをまとい、俺たちを襲いだしたと…逃げろ。ここにいてはいけないと…」

「………」

「瀕死の男はそれを言ったら、息を引き取った。男はその村から逃げ出した。そして、名のある術師に妖怪退治を依頼したそうだ。その術師の名は、暁 喜助という。」

「暁…ご先祖様なの?」

「そうだ。ご先祖様だ。そして、喜助さんは、その妖怪を退治したそうだ。その代わり、自分も死んでしまったが…」

「え、死んでしまったの…?」

「ああ、ギリギリ子孫を残していたから、家系は終止符をうたずにすんだが。」

「それが、この家の言い伝え…」

…どこか嫌な予感がする。フラグ?フラグなのか?これは。

「修一。お前は術が使えるな?」

「…いや、え?無理だって。この家で使えるの父さんぐらいじゃん。」

「嘘を言うな。父さんには分かる。嘘をついても無駄だ。」

その目はNOと言わせない圧力があった。

「…使えるから何なのさ…」

「間違いないな…修一。」

「なに?」

「お前はここにいてはいけない。」

「…え?」

「この世界にいてはいけない、お前は生きていてはいけない存在なんだ。」

「…つまり、殺っちゃうってこと?」

「そうだ。」

父さんが腰から銃を…え?

ちょ…やめて…冗談はダメっすよ。

「ちょ…母さん…」

「修一…ごめんね…私も若干わかってたわ。」

…まじでやばいかも…

「おい、やれ。」

父さんが何かを言った。

首の後ろの方で鈍い音がした。

「うぁっ…」

意識は途絶えた。






























「う…」

ここはどこだ?っていうか、意識とんでいくのこれで何回目だ?よく気絶するな、俺。

呑気な修一に対し、修一の親父、茂は戸惑っていた。

それもそのはず、実の息子をいとも簡単にやるなんてこと、できるはずがない。だが、やっておかないと家族が巻き込まれる上に、多量の人間が巻き込まれる…

「茂さん…一体どうすれば…」

茂の仲間がつぶやく

「わかってる。やらなきゃならない。だが、俺は父親でもある。他人なら関係ないからすぐにやれるが、実の息子をやるのは気が引ける…できればやりたくない。」

当然のことだった。仲間も同情しているだろう。

「…でもなんですぐに仕留めなかったんですか?」

仲間が気になると言わんばかりに聞く。

「いいか、あそこは住宅地だ。もしあそこで殺してみろ。叫び声とかいろいろ面倒だろ、その上、家にもいろいろ証拠が残る。だから今わざわざこうやって山奥の小屋まで来たんだ。ここで仕留めた方がいい。」

「…そういう事ですか。」

その時修一は、茂らが殺しにくるともしらず、呑気にいた。

「あ~、お腹空いたな…」

グーとお腹がなる。
晩御飯を食べた後なのにまだ食べるのか、俺は。

「っていうか、これはないわ、マジで。」

今の修一は、椅子(背もたれがない)に座った状態、柱に背中を当て、胸部、腹部を柱ごとロープでくくりつけられ、さらに手足を使えないようにお互いをロープで結ばれている。

「動けねぇよ。」

小学校のころはよく動きたくないなどとだだをこねる物だが、実際なってみると、とんでもなくしんどい。動けないだけでストレスが溜まっていく。

「…まぁ俺には関係ないけど…」

そう、能力さえあればこっちの物。誤解を解くのは難しくなるが…(誤解じゃないけど。)

あれ?手が使えないから能力は使えないんじゃ…あ、大丈夫だ。あれがあった。

「ふぅ………」

意識を集中させる。

「う………」

意識が別の場所へ飛んでいく。

『はぁー…また来たな…』

いつも通りの真っ白けっけだ。ただ、台の数が増えてるけど…

博麗 霊夢、八雲 紫、藤原 妹紅、多々良 小傘、チルノ…ぐらいか。

いや、でも今はどれも必要ない気が…いやまて、父さんがもし正気なら、俺は消されるってことになる…それはまぬがれたい…なら死ななければいい。よし、妹紅、お借りします。

妹紅のカードをセット。よし、ok。ほら、扉が出てきた。…これって能力を発動しないと出てこないのか?いや、そんなことないだろう…

出て行こうと扉に向かおうとしたその時、テロップみたいな何かが出た。

『…え?』

なんと、能力の多重使用が可能らしい。

『ちょちょちょちょ、すげぇな。』

あー、今まですぐに扉を出ていたから気がつかなかったのか…でも、多重使用が可能っていったって、他に使う能力なんて……

『…紫さんの能力を使うか?』

カードをセット、うまくいった。

『…今度こそ帰ろう。』

扉に向かう。そのまま………





















「う…」

「…あ、茂さん、目を覚ましてしまいました…」

「…そうか。」

父さんがこっちに向かってくる。いや、向かってくるのは構わない。ただ、その手に持っている物さえなければね。

「…茂さん…本当にそれでいいのですか?もう一度気絶させた方が…」

「一秒でも早く始末しておかないといけないんだ。」

そう、父さんが手に持っている物とは、拳銃。どこで手にいれたんだろう。

「…父さん?」

「修一、すまんな。少し痛むぞ。」

父さんが額に銃口を向ける。

パァァァァン

「ぁッ!!」

鈍い音と叫び声が部屋全体に広がる。

修一の額からは赤黒い血が流れ出ている。

「…これで大丈夫だ…」

「茂さん…帰りましょう…」

「…ああ。」

茂らは、修一がすでに死んだと思っている。しかし…

「何すんだよ!!!」

修一、復活。

「なにっ!?」

パァァンと、再び銃声が響く。銃弾はみぞおちあたりに当たる。しかし、

「がッ!痛いって!」

「なぜだ!どうなっている!?頭を撃ち抜いたはずだぞ!」

「この野郎…いくら父親だろうと許し難いぞ!!」

自分の周りに闇を創る。自分の視界を遮ることになるが、部屋全体を闇で包むと誰も前が見えなくなるはずだ。

「な、何をするつもりだ!」

闇で部屋全体を包む前に茂が叫ぶと共に、再び拳銃の引き金を引く。

パァンと再び銃声が響く。今度は喉に当たる。だが、ひるまない。何せ不老不死だ。

「はっ!」

部屋全体を闇で包むことに成功した。

「くそっ!」

茂らは完全に視界を遮られた。

「今のうちに…」

紫さんの能力で床に空間の隙間を作る。ロープも紫さんの能力でロープを切っている。

「よっと」

空間に入った直後、闇を消す。

「よし、これでいいかな…父さんどうするんだろ…」

空間に隙間を作る。つないだ場所は、先ほどの部屋の天井。

「なっ…!」

「どういう事だ…修一!出てこい!」

…できれば出たくない。

「おい!あのロープはなぜ切れている!?」

「…修一さんは…切れる道具なんて持っていたか…?どういう事だ…」

「っ……ぁああ!!どうなっているんだ!」

…まぁ、そうなるよな。

「…でもこのままじゃ帰れないな…一旦幻想郷に行って相談するかな…」

修一は博麗神社の近くにスキマを作り、神社の境内に足をおろした。