その時、私は目の前に人の気配を感じ、さらに、そいつは私の顔に両手をかざしたので、反撃に出た所、あっけなく追い払うことが出来ました。ただ、問題は、追い払った人間が、修一さんだったということです。
「ぅ…ぁ……………」
「………え?」
おそらく、気絶…いや、死んだ…?声がでなくなりました。
…ってヤバッッ!!
「あわわわわ‼と、と、とりあえずパチュリー様の所へ!!」
「どこに行くつもり?美鈴。」
「ひッ」
この声は紛れもなく、咲夜さん…いつもなら門番をサボったりすると、ナイフでサクッとやられるので、今回もそれを覚悟…
というか、どうしてすぐにバレたりするんでしょうか…
何はともあれ、正直に言うのが無難ですね。
「いや、あのですね…その…私が…殺っちゃいました…」
「あ…え…えぇッ⁉」
あぁ、殺される。
「…あなたは門番をしていなさい。修一はこちらでなんとかするから。」
…え?嘘、ナイフが飛んでこない⁉熱でもあるんじゃ…
でも今は素直にいう事を聞こう…
「あ、はい。」
待って…修一はこちらでなんとかする…?いつもならだいたい無視したりするのに…?妖精なら無視だとしても、さすがに同じ人間として、心配したのか、それとも、レミリアお嬢様の友人であるパチュリー様の友人だからでしょうか……ややこしい。まぁ、恐らくは後者でしょう。
「じゃぁ、門番頼むわよ。」
「り、了解です。」
というか、どうしたらいいのか…
修一は見たところ、死んでる…と。まぁ、美鈴の拳を生身の人間が受けたんだし、当然っちゃ当然ね。
「…まって、なんかおかしいわね…」
美鈴が修一に拳を?普通、そんなことしない…稽古でああなった?美鈴は生身の人間相手に加減をしないほど馬鹿じゃないし…しかも自分が殺ったにもかかわらずあの慌てよう…まさか、寝ぼけてた?
あ、そんなこと考えてるあいだに着いちゃった。
いつも思うけど、パチュリー様は読書以外本当に何もなされていませんね…
とりあえず、修一をなんとかしてもらおう。
「パチュリー様、大変です。」
パチュリー様は、顔をあげる素振りをしない。やっぱり、興味がないのか…?まあ当然か。
「どうしたの、咲夜。紅茶がきれたのかしら。それともクッキーを美鈴がかっぱらったとか?」
「いえ、修一様が大変なことに。」
「え?」
パチュリー様がお顔をあげた時の顔は、割と驚いた顔でした。あら、興味はあったようですね。
「修一!どうしたの!?」
「美鈴が拳を一発食らわせたそうです。」
パチュリー様は、壁の向こうにある門を数秒ほど、無表情で見つめる。
「なるほど。咲夜、あとは任せて。」
その声は呆れているようなそんな感じの…
「わかりました。」
まぁ、美鈴はお仕置き確定と…
…死んでるわ。脈がない。
美鈴の拳を一発受けた……妖精ならさほど心配しなくてもいいのだけど、修一は生身の人間…ダメージは大きいはず。
蘇生しようと魔法を使うとしても、血流操作とか、心臓を動かすことしか…どっちにしても、この傷は厄介ね…それに、私にその知識があっても、実際に死んだ人間を蘇生したことがないし、リスクも割とある。蘇生させる魔法は最終手段にしましょう。
それ以外の方法は…………永遠亭の永琳に頼む……その方が蘇生する可能性が高いけど…なにか嫌な予感がするから、これは最終手段の一つ前にする方がいいわね。
それ以外の方法…駄目、思いつかない。
ただ、自然に蘇生する可能性はゼロ。
…能力を使っていれば別だけど。むしろ、使ってないとこっちが困るわ。
修一…頼むから、能力を使っていて頂戴………
一方美鈴は、壁に寄りかかって、空を見ていた。
運が良かったとわかったのは、咲夜さんに修一を預かってもらった時…わずかですが、修一さんの気を感じました。そう、完全に死んではいなかった。本当によかった…でも………
「あぁ、私はどうすれば…」
修一さんには本当に申し訳ないことをした。どうお詫びしていいものか…この私の帽子をプレゼント…いやいや、修一さんには向いていない…というか、まず受け取らないと思うし…なら焼き菓子……私にそんなことできない…ご飯ぐらいは作れても焼き菓子は…咲夜さんに作ってもらっては意味がないし…
「あぁぁ、全力で謝る……あ。」
そうだ。いざという時の護衛というのは…修一さんは幻想郷にきて間もない人間。速攻で馴染んではいるけど、この幻想郷のルールに慣れているとは思い難い。そこで妖怪、妖精などに襲われた時、私が助太刀する……これなら、なんとかなるのでは…
「でもなにか違う…」
…ん……?ここは……どこだ?
なんか、布団をかぶってる。あれ、俺って寝てたっけ?なんでだろう…あ、そうか、美鈴起こそうとしたら、いきなり拳が飛んできて、倒れたのか…でも、いまは痛くないな。能力の発動が間に合ったか…
「あ、修一、起きたわね。」
目の前で本を読んでいたのはパチュリーだった。
「えっと…なんで俺はここに?」
「死んでいたからここに運んできたのよ。」
「死んで……えぇ!?死んだ?俺が?」
「そうよ。あなたが運ばれた時には死んだ状態だったのよ。本当にびっくりしたんだから…」
「あぁ、ごめんごめん。」
「ごめんじゃないわよ…まぁ、何より無事でよかった。」
「全然無事じゃないんだけどね。」
腹部が面白いことになっていた(と思う)んだからな。無事じゃないぞ。
その後、咲夜さんに紅茶をいただいて一服したり、魔法の勉強したり、美鈴が『護衛させていただきます!』とか言ってついてきたり(いや、いいよ。と言ったら渋々帰って行った)、博麗神社に帰る(途中、美鈴の叫び声が聞こえた気がする。)と霊夢や魔理沙に笑われたりと、散々だった。
そして帰宅の時間
「そんじゃ。」
「またね。」
「また会おうぜ!」
「うーい。」
スキマをあけて笑顔で家に帰る。
この後、騒動の中心になるも知らず………