「…そろそろスペカを大量に作らないとね。」

「えー、アイデアか浮かばないんだけど。」

ルーミアの件について霊夢に話すと、スペカが足りないのと、あなたの技量が足りないと言われた。確かに本気モードになったら、嫌でも大量の情報が頭の中に入って頭痛が起こるからな…できるだけ本気モードにはなりたくない…だったら、自分の技量を上げればいい。

「どうすればいいんだろうか。」

「まずはスペカを作りましょう。一つの属性に対して、一つのスペカ。普通に弾幕を生み出すスペカをいくつか。それぐらいは作ったらいいと思うわ。」

…じゃぁ、最低でも8つは作る事になるな。

「…まずは火から作るか…」

「火だったら…」

霊夢がアドバイスしてくれる。ありがたいな。

「…じゃぁ、こんな感じかな…」

とにかく、円形の弾幕を何重にも重ね、、広がりながら回るという、よけにくそうなスペカを生産。結構よけにくいと思うんだけど…

「まぁ、いいんじゃない?っていうか、それって別に属性関係ないわよね…」

「あ、確かに。」

よく考えてみると、霊力を放つのとほとんど同じだ。っていうか、同じだ。

「…まぁいいわ。気をとりなおして、火、いくわよ。」

「え?あぁ……そうだなぁ~…」

とにかくアイデアを練る。

「火…あ、俺の手のひらの魔法陣で強化できるスペカってのは…」

「それも有りね。」

「よしきた。」

だったら、相手のいる方に魔法陣で強化したでっかい火球を放ちつつ、ゆっくりと動く小さい火球を撃つ…ってのはいいんじゃないか?

「……し。できた。」

「あら、どんな内容?」

内容を説明する。

「…なんか、どっかでその弾幕見た気がするわね…気のせいかしら…」

「いや、気のせいなんじゃないか?それか偶然似たようなスペカができたとか。」

「…そうよね。あんた、ここにきてそんなに妖怪妖精に襲われてないものね。」

「そうそう。偶然。」

「それより、スペカの名前は?」

「あー…火符『プレッシャーファイヤー』とか…ほら、なんか、圧力が強そうだから…」

「名前付けのセンスがまるでないわね。」

「そ、そんな事ねぇよ!!」

ったく…今の俺はこれぐらいが限界だ。

「…次は水か…」

「水って特に思いつかないわね。」

「今思った。」

水って…あー、魔力で圧縮した水玉をいくつか放って、一気に解放し、細かい水玉を放つ…とか…

と話してみると、

「もうそれでいいんじゃないかしら。だんだん面倒くさくなってきたし…」

「…まぁ、うん。」

さっきのアイデアでいいか。腑に落ちないけど。

「…よし、これで…」

「で、名前は?」

…霊夢…もうすでに笑いをこらえてるってどういう事だ。そんなにネーセンがないか?俺。

「…水符『ディフュージョンウォーター』とか。」

「ぷっ…」

「っるっせぇ!!」

「ご、ごめん…ふふっ…」

あー、畜生、なんでそうなる…

「あー、もう、やめだやめ。また今度考える。」

「ふふっ…えぇ、ぜひそうして、頂戴…ふふっ…」

「だぁぁぁ!紅魔館行って来る!」

「いってらっしゃい…くく…」

…あの名前はそこまでおかしくないと思うんだけどな…














「………」

「あれ、おまえ髪の色…銀色じゃなかったっけ?」

「いや、黒だと思うぞ。」

「まぁいいや、とにかく、お前は倒してやる!!」

…面倒くさい事に、チルノに出くわした。…新しいスペカを試したい所だが…

「ここは逃げる!!」

「あ!ちょっと!待てー!」

なんか後ろから弾幕が迫ってくるが、今は逃げる事に集中しよう。あ、覚醒しない程度に。え?何が覚醒だって?自分で考えました。かっこいいもん。ちなみに、聖槍『スピア・オブ・ロンギヌス』は処分した。霊夢曰く、強くて逆に危ないから。

「あーーー!もう!早く当たれ!」

「誰が当たるか!」

正直、自分の飛行速度はそこまで速くない。鳥のちょっと速いかな?ぐらい。だから、自分の横を弾幕が追い抜く形になっている。正直、後ろを向くと、当たりそうで怖い。まだそこまで慣れてないから…命が危ないから…

「くそっ!雪符『ダイアモンドブリザード』!!」

「ちょ!スペカ!?」

これはまずい。とりあえず後ろを向く。通常弾幕なら背中を向けてよけることが不可能ではないが、スペルカードは、少し無理がある。よく前をみると、むすっとした顔のチルノがいた。ははぁ。

「いよっ、はっ。」

「あーーもーー!はーやーくーおーちーろー!」

「やなこった!」

誰が落ちるか!今は紅魔館に行きたいんだよ!紅魔館!

「あーー!時間切れじゃない!」

「ははは。」

「笑うなー!」

「じゃぁ俺は退散するぜー!」

「氷符『アイシクルフォール』!!!」

「やめろー!」

あああ!やけだ!弾幕くぐり抜けて直接火球ぶつけて退散してやる!

「………は?」

弾幕をくぐり抜ける前に、弾一つ一つの速度が思ったより遅く、くぐり抜けるのに手間がかからなかった。その上、チルノの正面についた時、そこは安全地帯。

「な…な……」

「………おいおい。」

数秒してからチルノが驚きの声をあげる。そりゃぁな、目の前に敵が来られたら少なからず驚くものだ。

「…俺を紅魔館に行かせてくれないか?」

チルノの目の前に魔法陣で強化した火球を見せつける。それにはチルノもまいったようで、

「…覚えてろー!」

「…ふぅ、よし。」

さぁ、紅魔館へ行くぞ。




















到着。

「…美鈴?」

なんとも気持ち良さそうに眠っている。いい夢でも見ているのだろう。そうっとしておくか?いや、待て。美鈴って確か…門番だよな…門番って寝てたらダメだよな…起こすべきか?いや、熟睡しているから、起こしたら怒られそうだ。起こさざるべきか?くそっ、どうすれば…

っ!そうだ!何か他のものを混入させれば…咲夜さんとか……っ!咲夜さん!?まずいぞ…咲夜さんに見つかりでもしたら、美鈴は…美鈴は…

THE・END!!

ここは起こしてあげなければ!美鈴に明日はない!!

「美鈴、起きろー」

咲夜さんにばれては困るので、小声で起こす。

「んーー…ここは通しませんよー…」

思いっきり通られるよ。マジで。

「おい、美鈴、起きて。ウェイクアップ!」

「…だから…」

「…なに?」

「キリンも鳩を食べるんですよ。」

……嘘だろ……


いやいやいや、そうじゃなくて、起きろ!!キリンも鳩を食うなんてのは多分嘘だろうけど!ってかなんでキリンを知ってんだよ!

「おい、美鈴。起きろ。」

「んーー……」

起きる気配がない。少し強引に起こすか?

壁に寄りかかって寝ている美鈴を、膝かっくんで起こす…それとも、ほっぺをぺちぺちってやる…

どっちもどっちだな…やるなれば…




ほっぺをぺちぺち。




いざ、決行。

美鈴の目の前に立ち、手を構える。そして、美鈴の真横に手を持って行った瞬間ーーーー

バシッ!!







「………え?」

なんか俺の手が握られていた。いや、握るというより、掴むか?で、つかんでいるのは………美鈴?なんだ、起きてたのか。いや、なら問題なーーー

ドスッ!!!

「あぐぅ!!!!!」

今までに味わったことのない激痛がみぞおちに走る。まるでハンマーで殴られるように。いや、それ以上に。例えることが出来ない。

「あがっ………げはっ………」

叫ぶ余裕もなく、血を吐く。吐いた血は殴られた時に突き出した両手の右手の方に付着する。

ドサッ

前に倒れる。手を出して衝撃に備えたり、足でバランスをとることすらままならないので、顔から落ちる。幸いなのは、顔を横に向けたことで、顔面の負傷はまぬがれた。

「うぁぁぁぁ…………」

自分の血で口の周りが赤く染まっている。地面がどんどん赤くなっていく。自分の腹はどうなっている?力を振り絞り、腹を見る。

…通りで血を吐いたり、今までに味わったことのない激痛が走るわけだ。肉が無理やり押し込まれたから肋骨が突き出てる……やばい……自分のこんな姿を見て、冷静を保っているのが幸いだ。

「ぅ……」

手を頭に添え、妹紅の能力を使用。死ぬのは勘弁。この時点で"死"をとても強く意識していた。ただ、これだけの怪我はすぐには治ると思えない。妹紅は慣れているから治りが速いのだというが。

「ぅ…ぁ……………」

そこで意識は途絶えた。