「いやー、結構飛んできたな。」

後ろを振り返ると、博麗神社が見えない。その代わりに前を向くと見えるのが、妖怪の山と聞いた山だが…あれ、結構高いよな…

「ん?誰だあれ?」

なーんか、白い服装に白い髪、両手には剣と盾が。なんていうんだろ。門番?あ、美鈴の同類?

「ここから先は天狗達の領域だ。勝手に立ち入る事は固く禁じられている。悪いが、方向転換してさっさと立ち去れ。」

「…えー…ただの観光なのに。ぶーぶー」

…可能な限りただの観光客としてやり過ごす。いや、本当に観光なんだけどね。ここ行ったことないから。

「ダメだ。勝手に入っていい領域ではない。」

「えー、ちょっとだけ、ちょっとだけ。」

「ダメだ。」

…なんか、口調的に美鈴より忠実な気がする。美鈴、頑張れ~

「…なんでそんなに入るのを拒むんだよ。いいじゃん、ちょっとぐらい。」

遊び半分で門番の横を通ろうとすると、首元に何か鋭くて冷たい感覚がぁぁぁぁぁぁ…

「ああああの…こここれ、ななんですか?」

「わからないのか、剣だ。これ以上進むな。進んだら…分かるな?」

ひ~、口調的に怖えよ…やめて。

「あ、あんた、名前は?」

「犬走 椛。ここ、妖怪の山に侵入者が来ないか警備をしている。」

「…入るのは諦めた方がいい?」

「そうした方がいい。」

「なんだよ~ただの観光なのによ~」

「無理なものは無理だ。さぁ、帰れ。」

うーん、このまま帰っても何もすることないよな…

「じゃぁ、帰る代わりに、いい観光スポット教えてくれないか?俺、幻想郷きて間もないから、地理力なくてさ…」

椛の眉がぴくっとする。

「…幻想郷にきて間もない?ここの住民ではないのか?」

「え…まあ…そうですね。紫さんに連れてこられました。」

「確かに見ない顔だな…そうか。そういう事か。」

「まぁ、うん。」

「あぁ、いい観光スポットだったな。幻想郷で一度は行くべき所は…いろいろあるけどな。」

「ふーん…っていろいろって…答えになってないよ。」

「残念だが私は知らない。」

こいつ、ずっと見張りをしてて、出かけた事がないのか?

「…それより、剣、どかしてくれる?」

「ここから立ち去るなら。」

「…じゃあここに入るのは諦めます。」

「ならよろしい。」

首から剣をどけてくれる。いや、ここに入ることは当分できなさそうだな。

「はぁ~…帰ります。」

方向転換して帰って行く。畜生、山行きたかったのに。

「…博麗神社しか行く所ないよな…」

実際、お世話になった所は、妹紅の家、紅魔館、博麗神社、この3つだけ。…向こうの森にでも行くかな…
















「まいったな…苦しい…」

森に到着。ただし、湿気がすごい気がする。そこら辺危なそうな色をしたキノコいっぱい生えてるし。

「…来たのは失敗かな…」

帰ろうとした時、目の前に黒っぽい球体が浮かんでいた。不思議なものもあるものだな。さ、帰ろう。

「…あれ?」

黒っぽい球体が喋る。

「博麗神社は…あっちか。」

こういう得体のしれない物は無視するに限るなぁ。本当。

「あれ、君いたっけ~?」

質問には答えないとダメだな。

「今まではいなかったぞ。この前来た。」

適当に返事をする。

「…あ、あの時食べ損ねた人間だ!」

「…は?」

記憶を蘇らせる。あの時たしか、金髪の少女に襲われて、喰われかけた気がする。…もしや…

「…あの時の金髪?」

「ピンポーン。」

周りの変な雲っぽいのが解き放たれる。

「…げ。」

「それじゃ、食べていいよね?」

金髪の少女が笑いながらこっちに歩み寄って来る。

「まて、相手をいきなり食べるのはいかんぞ。常識だ。」

「そーなのかー。じゃぁ、食べてもいいですか?」

「いい訳あるかー!」

「もう食べてしまおう。まてーっ」

「ちょっ!やめっ!あー!」

再び食うか食われるかの戦いにめぐり合う。しかし、今の俺は昔と違う。逃げ方が違う!

「ははは!どうだ!俺は飛べるんだぞ!」

「わはー。そーなのかー。」

…しまった。ルーミアも幻想郷の住民なら飛べるよな…

「うあー!!」

とにかく、前へ前へ!

「うーん、このままじゃ時間がかかるな…仕方ない…月符『ムーンライトレイ』!!」

「ス、スペカ!?」

とっさに振り返る。

「いけー!」

「うおっ!」

あっぶねー!振り返ってなきゃ直撃だったぞ!

「ちょ!まて!ふぉあっ!」

「早く当たって気絶してよ~」

「まてまてまてまて!」

「嫌だ~」

いや、断るとわかっていたけど。

こうなったら…俺もスペカを使わないとやばいな…そうだな。

「くそっ!くらえっ!風符『風の逆転劇』!!」

「えっ!?」

上から超ド級の暴風が吹き、弾の軌道をそら…さない!?

「…なんの効果があるの?」

「効果がないようだ!!!」

そして、弾に効果がないままスペカの効果は継続。ルーミアに対して超S級の暴風が吹く。

「うわっ!強い…風が…」

お?これは意外と効果ありか?

「…でもまぁ、大丈夫か。」

効果無しかよ‼人間じゃねえ‼(まぁ妖怪だし。)

「もう、もたもたしていたからスペカの効果切れちゃった。」

「ははは!諦めろ!」

「夜符『ナイトバード』!!」

「なんでそうなる!?」

再び弾幕をかわすかわす。

「まだ弾幕には慣れていないのに、こんなにやられると、かなりやばいな…‼」

「そーなのかー。」

そーなのかーじゃねぇよ!くそっ!こうなったら、もう一枚のスペカを…

ピッとスペカを取り出す。

「まだあったの?」

「まだある!聖槍『スピア・オブ・ロンギヌス』!!!」

赤い光と共にロンギ○スの槍が出現。こいつのA.T.フィー○ドで、弾幕を防げたら…

ブンと一振り。A.T.フィー○ド発生。弾幕を防……いだ!!

「な、なに!?あの壁!?」

「す、すげぇ、このスペカ。」

「でも、ずっと当てて行けば、いつかは壊れる!」

「し、しまった!」

さすがのA.T.フィー○ドも、ずっと攻撃されれば壊れるイメージが無くもない。こうなったら一か八か…槍を使って弾幕を生み出す…

「はあっ!」

槍を前に突き出す。…何も起こらない。

「わはー。失敗失敗。がんばれ~!」

く、くそぅ!俺だって無理だと思「キィン…ドガァァアア‼」

「きゃああああ!」

「うわっ!」

な、なんだ!?爆発音が!!

よくみると、突き出した槍の方向に○徒を殲滅した時に出てくる十字架ができている。その爆風にルーミアは吹っ飛んだらしい。ちょ、ロンギ○スの槍、半端ないっす。

「お、覚えてなさい~!」

ピューっと逃げて行くルーミア。

いや、割とここの生き残り方を学んだ気がする。さぁ、ここは物騒だな。帰ろう。

博麗神社しか行く所ないし、向かう。




もちろん、風符『風の逆転劇』は、後に処分した。あれほど役に立たないものはないだろう。何が逆転だよ…