それから私達は自然と寄り添うように南京路を歩いた。すれ違う人達が彼女のあまりの美しさに振り返って見ているのが分かる。


人々が振り返るもう一つの理由は美しい彼女と平凡なルックスの私があまりに不釣り合いな事。


でも今の私達にはそんな事などどうでも良かった。昨夜から今に至るまでの間で二人はとても気が合う間柄だと分かったから。


その後タクシーに乗り込み新天地へ行き、フランス租界時代の古い洋館を利用したオシャレなレストランで食事を摂っている間も、私達二人の間に会話が途切れる事は無かった。何故ならきっとお互いがお互いの事をもっともっと知りたかったからに違いないからだ。


私達は食事をしているこの僅かな間に、お互いの生立ちから今に至るまでの人生の全てを知る事になる。それはとても不思議な感覚であった。まるで幼馴染のずっと想い続けている初恋の相手に出会ったかの様な。


突然、彼女が「外灘は夜景が綺麗だから行きましょう」というので私達は新天地からタクシーで外灘へと向かった。あっという間に時は流れて夕暮れになっていたのだ。


タクシーから降りると私達は薄暗くなった長江の支流である黄浦江のそばを手を繋いで歩いた。爽やかな風が心地良く二人の間を吹き抜ける。


向こう岸に見える東方明珠電視台の灯りがとても綺麗だ。夜景に照らされた彼女の麗しい横顔を見ていると私は自然とこんな言葉が出て来た。


「我很喜欢你(僕は君が大好きだ)」


それを聞いた彼女は私の方を振り向くと少しばかり恥ずかしそうな表情を浮かべて「我也是(私も)」と言って抱きついて来たのであった。