1995年にリリースされたデヴィッド・ボウイの「アウトサイド」のジャケットを目にした時嫌な予感しかしなかった。それからすぐにCDをカーステにセットして聴いて見ると案の定僕の苦手な音楽が流れてきた。


アルバム「ネヴァーレットミーダウン」から続くボウイの不調は、一度はバンドのいちボーカリスト「ティン・マシーン」という立場に逃げて、ボウイなりのリハビリをしたのだが、ティン・マシーン解散後リリースされたソロアルバムも、久々にミック・ロンソンとの共演という話題があったものの、正直凡庸な出来だったと言わざるを得ないものだった。


それでも僕はボウイはきっといつかまた素晴らしい作品を作ってくれると信じて新作が出る度に律儀に買っていたのだ。しかしこの「アウトサイド」から聴こえてくるサウンドはひたすら暗くダウナーなサウンドで、正直アルバムを一度聴いただけで二度と聴く事は無かった。更にはこのアルバム以降ボウイの新作を必ず買って聴くという行為を止めにした。それ程このアルバムには失望したという事。


数日前僕はCD棚の整理をしていた。その時29年前ボウイ離れのきっかけとなったこの忌わしいCDがたまたま目に留まった。それでどれだけ酷い作品なのかもう一度確かめるために面白半分で聴いてみる事にしたのだ。


一曲目から予定通り陰湿なサウンドが聴こえて来たが、あの当時感じた強烈な違和感というか拒否反応は無かった。それどころか七曲目の「ザ・モーテル」でハッとさせられた。そこでのボウイの音楽的盟友マイク・ガースンの弾く魅惑的なピアノに強烈に惹きつけられて、自然とこのアルバムを聴き入っている自分がいた。


確かに全体的にみた場合、曲と曲の間に奇妙な繋ぎの語りやインストがあったり、とんでもなく陰鬱で退屈な曲もあるが、それをカバーして余りあるほどの素晴らしい曲が収録されている事に気づかされた。


あの当時深く聴き込む事もせず嫌悪感を抱いてボウイから離れていった自分を反省する。


ただ起死回生を狙ってイーノをプロデューサーに選んだり、ツインピークスの影響からか猟奇事件を題材にしたコンセプトアルバムを作ってみたのはいいが、楽曲そのものが大衆受けするポップさが希薄だったのは、やはりボウイとしては失敗だったのでは。



だってロックンロールとは大衆の心を掴んでなんぼのポップミュージックそのものなのだから。