僕がロックを聴くきっかけになったのがザ・クラッシュのシングル「トミー・ガン」からで、それからはパンクを中心にロックを聴いていった。


そうなると様々な意味でパンクと対極に位置するロックであるヘビメタとプログレは敬遠していた。ただ当時はNWOBHM真っ盛りで、それなりにヘビメタは聴いていたがプログレに関しては殆ど聴いて来なかった。唯一聴いたのがピンク・フロイドの数枚とキング・クリムゾン。


フロイドはシド・バレットのいたバンドという事で聴いていたし、クリムゾンは当時エイドリアン・ブリューを擁して活動を再開していたので、ある意味ニューウェーブ的な感覚で聴いていたと思う。


それからクリムゾンの旧作にも興味を抱きファーストとラストアルバム「レッド」を聴いたのだ。


ファーストの全く隙のない名作さ加減には勿論感動したけど、僕的にはラストアルバム「レッド」の一切の妥協を許さないヒリヒリとした演奏には、パンクにも相通ずる緊迫感を感じた。


それからこの名盤の白眉はラストの「スターレス」に尽きる。救いようの無い絶望感溢れる歌と演奏は聴くものを深い悲しみのドン底にたたき落とし続ける。中盤沈鬱で単調な演奏が続き、その後絶望と混乱が延々と続くかと思われるこの曲は、ラストに向けて魂の救済へと導く目の前が明るく開けて行く様な感覚の曲展開が、例えようのない程のカタルシスを聴くものに与える事によって大団円を迎える仕掛けとなっている。


この至上の感覚を味わう為だけに僕はいつもラストまでへと続く長い演奏を耐え忍んでいると言っても過言では無い。