1981年ストーンズ北米ツアーのオープニングアクトとして登場したプリンスは、観客からの罵声を浴び続け楽屋で一人涙を流していた。そんな苦い経験の後に制作された二枚組アルバム「1999」。


このアルバムはセカンドアルバム「愛のペガサス」から続くプリンス流ヌメっとした湿度の高いファンクで、猥雑さとさざなみの様に静かに押し寄せてくるマニアックなリズムの応酬が続く中毒性のある作品となっている。


威勢の良いタクシーを呼び止めるプリンスの声で始まる、気の抜けたボーカルで歌われるエロティックな歌詞と、オーバーな女の喘ぎ声が充満した「レディ・キャブ・ドライバー」こそがプリンスのマニアックなファンクの真髄。こんな変態ファンクが延々8分も続くのだからやはりプリンスは只者ではない。


それから、毎度の事ながらこんな変態ファンクの中にさりげなく挿入されている美しいバラードが一際引き立つ仕掛けになっているのも憎い演出だ。


ところで、ストーンズの「エモーショナル・レスキュー」とか「刺青の男」のB面とかしっかり聴き込んでいたら、プリンスにブーイングとか浴びせないと思うんだけどな。


能天気なヤンキーにはプリンスの密室の中で展開される粘着質な変態ファンクは理解出来ないか。