沢田研二の「女たちよ」は極めて異質なアルバムだ。ファンの中でどの様な位置づけなのかは分からないが、シングル曲もなくエンターテイメント性も希薄で実にマニアックな作品だと言える。


詩人の高橋睦郎が源氏物語をモチーフに書き上げた歌詞を、当時アイドルの曲を多く書いていた筒美京平が全作曲、それを沢田研二が歌うと言うコンセプトアルバム。


だがこのアルバムを際立たせているのはそれらの人たちではなく、ポストパンクの洗礼を受けニューウェーブなサウンドに色づけしたアレンジャーの大村雅朗の貢献が大きい。





土着的なパーカッションが鳴り響く「藤いろの恋」から始まり、テクノやニューウェーブなサウンドがアルバム全編を覆っている様は、まるでブリティッシュなニューウェーブバンドの様相を施している。


このアルバムからは歌謡曲のメインストリートを走っていた筒美京平、大村雅朗の顔は一切見えず、当時隆盛を極めていたニューウェーブに見事に呼応した作品となっている。


ではこのアルバムに収められている作品を、歌謡界のスーパースター沢田研二が歌う必然性がどこにあったのかと問われたら、沢田研二が歌ったからこそ、ここまで耽美的で妖美な世界観を演出出来たと思うのだ。


やはりそれは沢田研二の持つ天性の才能の成せる技だとしか表現しようがない。


つまりジュリーと言う存在そのものが一つの芸術作品として成立していたのである。それを見事に証明したアルバムだとも言える。