武道館コンサート・ジュリーマニアを今更ながら聴き返して見ると、実によく練られた選曲と演奏だったんだなと痛感させられる。


リリース当時僕はこのCDとビデオを予約したのだが、世間の雰囲気は沢田研二は最早終わった存在扱いで、田舎に住む僕のところでは僕くらいしか予約注文していなかったのではと疑う程ジュリーの人気は低迷していた。


そんな中僕は意地になって沢田研二を推していたのだ。ジュリーの素晴らしさを何故世間は気づかないのか、1990年代初頭の頃でもジュリーの魅力は70年代の全盛期と変わらず色褪せる事は無いのだと。


だが真実はと言えば熱烈なるジュリーマニア以外の世間は沢田研二を見放した。そんな時期にリリースされたライブアルバム。悲しいかなあまり聴き込む事もなくCDは棚の奥の方に消えていった。


そんな酷い扱いを受けたジュリーのライブアルバムを今こうして聴いていると、あの当時全く気づかなかったジュリーの熱い思いや、もっと他の様々な事が分かってくる。


ジュリーの魅力はやはりなんと言っても歌謡曲とロックの絶妙なるハイブリッド感だという事は以前にも書いたが、ここでのジュリーはそれを見事に体現したパフォーマンスを見せてくれている。


オープニングナンバー「アイ・ビリーヴ・イン・ミュージック」に於いて、ジュリーの当時の思いをアカペラで歌い上げ、それから新旧おり混ぜた「歌謡ロック」としか表現出来ない名曲の数々を矢継ぎ早に披露してくれている。ファンは只々その「ザ・ジュリー」としか言い様のない唯一無二の世界感を堪能すればいい仕掛けとなっているのだ。




それからアンコールでジュリー作の比較的地味な「ステッピン・ストーンズ」を演っている事に、如何にもジュリーらしい強烈なる意地とこだわりを感じた。