僕が初めて買った沢田研二のシングルは「背中まで45分」。
何故このシングルを買ったのかというと、ラジオで流れて来たこの曲があまりにロキシー・ミュージックのアヴァロンしていたから。
猿真似とまでは言わないがサウンド・プロダクション的に極めて似た匂いを感じて興味を持ったのがきっかけ。
今から思えば表面的な部分は似ているのだがロキシーの「アヴァロン」はもっと、よりブラック・ミュージックの、例えばマーヴィン・ゲイなどのソウル・ミュージックの影響を感じるのだが、沢田研二のこの曲からはブラック・ミュージック的要素は皆無で、どちらかと言えば当時流行っていたニュー・ロマンティックの香りが色濃くしてくる。
それからはっきり言ってしまうと沢田研二には井上陽水の楽曲は全く合わない。それは水と油の如く。
全曲井上陽水作詞作曲のアルバム「ミス・キャスト」とこのシングルこそが、沢田研二の失落の始まりだった。それから沢田研二は白井良明によるアルバムアレンジもかなり気に入った様でその後も度々起用しているが、それもまた完全なるミス・キャストだった。
確かにメリハリがあるサウンドだけど、無駄に分厚く暑苦しいんだよな、良明さんのアレンジは。
だから白井良明のアレンジではない、エキゾチックスの吉田健によるシングルバージョンの「背中まで45分」に僕は惹かれてシングルを買ったんだと思う。