僕は正直酷く迷っていた。何故なら毎晩Cちゃんの家に電話をかけて、二人楽しく会話をしていた頃から一年以上過ぎていたし、今では僕とCちゃんとの繋がりなど皆無だったからだ。


今更Cちゃんと話す事なんて無いと思った。あの頃の僕にはCちゃんのお母さんの具合はどうかとか訊く様な思いやりのカケラも無い、至って身勝手な思考回路だったし。


それでも僕はやはりもう一度Cちゃんと話したいと思った。だって嫌いで別れた訳じゃなく、単に自分の我儘で愚かな行為でCちゃんから離れてしまったのだから。


もう一度Cちゃんの気持ちを確かめたい、そう思いだしたら居ても立っても居られない。

僕はその日の夜、怖いお父さんが出て来るのを覚悟の上で、本当に久しぶりに思い切ってCちゃんの家に電話をかけたんだ。


するとCちゃんが直接電話に出てきて、僕はビックリしてしばらくの間何も喋れなかったけど、やっとの思いで「Cちゃん、久しぶり。」そう言った。


「久しぶりだね、E君が電話かけて来てくれるの」その時のCちゃんの電話口での雰囲気は、如何にも嬉しそうな感じだった気がする。


それから僕とCちゃんは、まるであの頃に戻ったかの様に、色々な取り留めのないたわいのない事を話したんだと思う。


二人楽しく話をしているのを遮る様に、僕は意を決してこう言った。「Cちゃん、直接出会って話したい事がある」


不意に僕がそんな事を言うから、Cちゃんは少し戸惑っていたけど「いいよ、じゃあ私がバイトした事がある喫茶店でいい?」と言うので、僕は二つ返事でOKしたんだ。