高速道路を降りてCちゃんの実家まで残り2時間くらいになった時、時計を見たら午前10時を回っていた。


このまま順調に行けば昼過ぎには着く予定だ。全く気の利かない僕にCちゃんから言われて買った、両親へのお土産のお菓子もしっかりあるし、あとは僕がシャキッと両親に挨拶出来れば完璧だ。


何より世界一大切なCちゃんを絶対に失望させたく無いからね。そう思うと余計に緊張してきたんだけど、ここまで来たなら兎に角やるしか無いと思ったんだ。


「そこの交差点を右に曲がったところに私の実家があるの、ほらあの赤い瓦の二階建てがそう」Cちゃんが指差した先に、この辺りでは比較的珍しい赤瓦の一軒家が目に入ってきた。


それから僕はCちゃんの言う通りに実家に面した道路脇に車を停めた。


「E君、どうしたの?急に無口になって。もしかして緊張してるの?」Cちゃんが必死で笑いを堪えているのが分かった。普段あまり感情を表に出さない僕がテンパっているのが余程面白かったらしい。


「そんな事無いよ」僕は必死で動揺していない振りをとり繕って、Cちゃんにそう返すのがやっとだった。

実際その時僕は酷く緊張していた。だって学生の頃しっかりトラウマを植え付けられたCちゃんのお父さんに対面して、正直どう言ったらいいか分からなくなって頭が真っ白になってしまっていたんだ。


それからどうやって玄関まで行ったのか全く覚えていないけど、気がつくと僕とCちゃんは玄関の前に立っていて、Cちゃんがチャイムを鳴らすと、中からお母さんの声が聞こえて来て玄関の扉が開いた。


そこにはCちゃんに良く似たCちゃんのお母さんが優しい笑顔で立っていた。


何故だか分からないけどその瞬間僕の頭の中に、ビートルズの「ディア・プルーデンス」が流れて来たんだ。