1984年8月、僕が20歳でCちゃんが19歳の時に、彼女の住む土地の駅で再会を果たしてから、僕達は毎週の様に週末に出会い、学生時代全く進展の無かった二人の関係を急速に深めていった。
この頃には僕はCちゃんの好きなものは何なのか、嫌いな事は何なのかハッキリと明確に把握する様になっていた。例えばCちゃんはカレーや卵焼きが大好きな事とか、学生時代大好きだったオフコースに代わって、今では松田聖子の歌が1番のお気に入りだという事とか 。
それから秋になり冬になって3月生まれのCちゃんの誕生日が来て20歳になった時、Cちゃんの実家に行って一度両親に挨拶して欲しいと僕に言って来たんだ。
それを聞いて僕は飛び上がりたい程の嬉しさと同時に、強烈な緊張感を感じたんだよね。だって学生の頃Cちゃんの家に電話をすると、ほぼ必ずと言っていいくらいCちゃんのお父さんが電話に出てきたから。
僕が緊張しながら「Cちゃんはいますか」と言うと、毎回「うちの娘になんの用だ」って威圧的に攻め立てられたんだよね。それが強烈なトラウマとなってCちゃんのお父さんの事が苦手になってしまったんだ。
その怖いCちゃんのお父さんと直接出会って挨拶とか出来るのかなって正直不安になったけど、そんな事も出来ないようじゃ、これからCちゃんを守ってあげる事なんか到底出来ないよね。
「じゃあ、今度の日曜日にCちゃんの実家に行こうよ」僕が思い切り不安に駆られながらもそんな素振りはCちゃんには一切見せずにそう言った。
Cちゃんはさっきまでちょっと不安そうな表情だったけど、それを聞いて一瞬にして明るい表情に変わったんだ。