オーティス・レディングもロッド・スチュワートも憧れた、偉大なるソウル・シンガー、それがサム・クック。


サム・クックには生前にリリースされた「サム・クック・アット・ザ・コパ」と、死後20経ってリリースされた「ハーレム・スクエア・クラブ1963」の二枚の素晴らしい名ライブ盤が存在している。


コパの方は白人の聴衆を前に、スタンダードを中心に自身のR&Bナンバーを絡めて、粋でスタイリッシュにジャジーで軽快に歌うサムのボーカルが楽しめる名作だ。ちなみに、とある大御所のソウル評論家はこのライブアルバムをお気に召さなかったらしいが、僕は大好きなアルバムの一枚である。




今回取り上げるのはハーレムでの黒人のオーディエンスを前にしてのライブアルバム「ハーレム・スクエア・クラブ1963」。


このアルバムは実に素晴らしい。バックの演奏がキング・カーティス・バンドだと言う事も影響しているのだろう。


白人の前ではいなせなスタンダード歌手風情のサムも、クロスオーバー的な音楽性のキング・カーティスも、黒人のオーディエンスの前では泥臭く黒光りするくらいに、真っ黒な自らのアイデンティティを剥き出しにしているのが印象的だ。


ここではサムが熱くアグレッシブにソウルフルに歌い上げ、キング・カーティスは唸り上げていくようにサックスを吹きまくり、中盤くらいからオーディエンスをも巻き込んで、会場全体がまるでソウルの渦の様な熱気に包まれていくのが分かる。


これこそミスター・ソウル、サム・クックの本領発揮とも言える、ぶっといソウルフル魂が生み出した最高傑作ライブアルバムなのだ。