ストーンズをブルース、R&Bを基調とするロックンロールバンドとして見た場合、「サタニック・マジェスティーズ」はそこから途轍もなくかけ離れた異質なアルバムだ。


発売当時評論家受けも悪く、メンバーからもゴミ扱いされたアルバム、「サタニック・マジェスティーズ」。


別にカッコつけて言う訳ではないが、僕はメンバーすら見放したこのアルバムを初めて聴いた時から、悪いアルバムだとは思わなかった。


強いて言うなら「魔王讃歌 二部」と「ゴンパー」の後半部分の遊び半分の冗長な演奏は蛇足だったが、残りの楽曲はポップでサイケでイカしている。


例えて言うなら下町の洋食屋のナポリタンや、町中華の炒飯や中華そばの様なB級グルメの趣きと味わいがある。


このアルバムの頃はミックもキースもブライアンも麻薬に溺れて、三人とも立件され裁判に発展して禁固刑の可能性すらあり、なかでも繊細なブライアンの精神的肉体的な状態は最悪だったらしい。


そんな中で制作されたこのアルバムの楽曲たちは、先にも述べた様に意外とポピュラーで、ジャガー/リチャーズの非凡なソングライターの能力がここでも遺憾無く発揮されている。


更には殆どレコーディングに顔を出さなかったと言われているブライアン・ジョーンズが、多くの曲で様々な楽器を使いこなし、天性のマルチプレイヤーぶりを披露しているのも注目したい。