遠い昔、中国東北地方が満洲と呼ばれていた頃、その首都新京に一組の日本人夫婦が仲睦まじく暮らしていた。


夫は妻をとても愛し、夫に深く愛され大切に扱われている妻も甚く幸せに感じていた。


そんな幸せな夫婦の生活も長くは続かなかった。何故なら日本が敗戦濃厚となった時期を見計らって、ソ連軍が満洲に侵攻してきたからだ。


それから満洲に住む日本人居留民の地獄の日々が始まった。日頃日本人に怨みを抱いていた満人、朝鮮人もソ連軍と共に、日本人への虐殺、強奪、強姦等の残業行為を繰り返し行ったのだ。


例の若い夫婦も例外ではなかった。新京駅で新京を離れて大連に向かう途中でソ連兵に遭遇した。


夫は突然背中に焼ける様な激痛を感じて倒れていく瞬間、美しい妻の泣き叫ぶ顔と、後方にいやらしい目つきをしたソ連赤軍の男達が立っているのが目に入って、まるでシャッターが閉じる様に目の前が暗くなって意識が遠のいていったのであった。