「ベガーズ・バンケット」を初めて聴いたのは僕が17歳の頃だった。その時のアルバムを聴いた印象は、なんと地味でフォークぽい音楽なんだろう。


その前に如何にもロックというサウンドに包まれた、スティッキー・フィンガーズを聴いていたので尚更そう感じたのかもしれない。


ただA面一曲目の「悪魔を憐れむ歌」と、B面一曲目の「ストリート・ファイティング・マン」だけは初めからカッコいいと感じたが。


でも僕はしばらくこのアルバムを聴き続けたんだ、まるで修行の様に。するとどうだろう、それまで地味に感じていた楽曲達も、それぞれの個性が立ち上がってきて、アコギを多用した酷く魅力的なアルバムだと思える様になってきたんだ。


オープニングナンバーの「悪魔を憐れむ歌」は言うまでもないけど、続くブライアン・ジョーンズのスライドが光るカントリー・ブルースな「ノー・エクスペクテーションズ」も、卑猥な歌詞のタフなブルース「パラシュート・ウーマン」に、またもブライアンのスライドが唸りまくる「ジグソー・パズル」と、どれも一筋縄ではいかぬ魅力に溢れていた。


B面一曲目はキースのアコギが独特の音色を奏で、まるで天にでも舞い上がる様な上昇していくリズムの「ストリート・ファイティング・マン」は極上なロックンロールだし、戦前ブルースのカバー「放蕩息子」はシャッフルのリズムが軽快で、高揚感を誘ってくれる個人的には大好きなナンバー。


カントリーブルースの「ファクトリー・ガール」も激渋で、当時20代のストーンズのメンバーがそれを生み出している事に驚愕する。


ラストナンバー「地の塩」はキースのアコギとボーカルに導かれて幕を開ける感動的なナンバーで、この歴史的な名盤はこの曲で大団円を迎える事になる。