あの時代に戻ってもう一度二人がやり直せたら、今の見すぼらしい僕は少しはまともになれたのかな。


1984年10月君に逢いに行った最後の日、君が待っていてくれる大阪のH市の夢と希望に満ち溢れたアパートを思い出しながら、僕はウキウキしながら深夜高速道路のオレンジ色のライトのトンネル内を走行していた。


高速のインターチェンジを降りてしばらく走った後、君のアパートの近くの空き地に駐車して、既に肌寒くなっていた屋外を数分程歩いて、君の住んでいるアパートまで行きドアをノックすると、如何にも嬉しそうな笑顔の君が僕を出迎えてくれた。


学生の頃より更に伸びた君のロングヘアは、玄関の上に付いている照明で美しく輝いていた。あまりに美しい君の笑顔を見ていると僕は無性に気後れして、部屋に上がるまでずっと俯いていたんだ。


それから君は僕に「どうしてずっと下ばかり見ているの」って笑いながら訊いて来たね。僕は恥ずかしくて本当の事なんか言える訳がなかったよ。


それから君の「どうぞ上がって」と言う言葉に導かれながら、僕は多分三度目となる君の住むアパートの部屋へ上がっていったんだ。