日本経済新聞社が主催する「にっけい子育て支援大賞」の第三回受賞者が決定しました。
この賞は、働く場としての企業、地域で大きな役割を果たす地方自治体、そして子育てしやすい社会づくりに努める民間団体・住民グループの三社からそれぞれ優れた取り組みをしている企業・団体を選出、表彰しています。
今年は201件の応募の中から、9団体が大賞を受賞しました。
受賞団体と取り組みを紹介します。
■企業は「制度利用実績」「女性社員の活躍」「男性を含めた働きやすさ」を評価
企業は5つが大賞を受賞しました。
【ソニー株式会社】
http://www.sony.co.jp/
エレクトロニクス製品を製造・販売するソニー株式会社様。各種制度が総合的に充実していることが評価されました。妊娠期のフレックスタイム勤務、20日間の育児休暇や育児休職者への月5万円の支援金支給、復帰後の1時間単位での有休取得など、ライフステージに合わせた、使いやすいメニューを用意することで、ワーク/ライフ・バランスの実現を支援しています。
【株式会社資生堂】
化粧品の製造・販売を手がける株式会社資生堂様。事業所内託児所の他社への開放など、企業の子育て支援を先導する役割を担っています。社内での取り組みはソフト面まで充実しており、本社医務室の看護師が妊娠・出産・子育ての相談に応じる他、小学校3年生以下の子どもを持つ社員は、社内では転居を伴う異動対象にならないとともに、配偶者に同行した異動の希望を出すことができる等、非常に使い勝手の良い仕組みが作られています。
【株式会社高島屋】
http://www.takashimaya.co.jp/
1831年(天保2年!)創業の株式会社高島屋様。女性が多く、子育て支援が進んでいる百貨店業界の中でも、特に制度が充実。子育て中の社員が勤務時間や休日を柔軟に選べる5種類の育児勤務制度の他、就業時間の前後は申請がないとパソコンが使用できなくなるといった、ユニークかつ効率性を向上する仕組みが機能し、年間総実労働時間は、受賞企業の中で最短の1,825時間となっています。
【オリックス株式会社】
金融系企業では初めて大賞を受賞したオリックス株式会社様。5つの育児勤務制度で柔軟な働き方を可能にしています。また休職中の社員向け懇親会を年2回開き、会社の状況や経営トップの意思を伝えるとともに、働く母親の情報交換・共有の場とすることで、円滑な職場復帰を支援しています。
【サイボウズ株式会社】
http://cybozu.co.jp/
インターネット・イントラネット用ソフトウェアの開発・販売を手がけるサイボウズ株式会社様。ワーク重視とライフ重視の2つの働き方を社員自身が選べる、ユニークな制度が評価されました。育児休暇制度は最長6年間、子の看護休暇は取得日数無制限、短時間勤務制度の時限も無制限と、男女ともに多様なワーク/ライフ・バランスを実現できる仕組みを整えています。
■自治体は縦割り行政を脱却、1つの施設で多彩なサービスを実施
自治体は2団体が大賞を受賞しました。
【山形県東根市】
http://www.city.higashine.yamagata.jp/
さくらんぼ生産日本一の山形県東根市。子育てサービスの基点となっているのは、「さくらんぼタントクルセンター」です。保育所から保健福祉センター、休日診療所まで、ワンストップでほとんどのサービスが受けられます。「子育て応援五つ星」と銘打つ子育てに関する5つの新規事業(未就学児医療費の無料化など)等が功を奏し、「子育てするなら東根」との口コミにより、人口が5年前より1.5%増となりました。
【島根県海士町】
http://www.town.ama.shimane.jp/
隠岐諸島180余りの島々の1つ、海士町。高校卒業後、若者が就職で島を出てしまい、「町が消える」と危機感を持った村長が、自分の報酬をカット。それに賛同する助役、教育長、町議ほか職員もカットに応じ、浮いたお金を子育て支援に充てました。10万円(1人目)から100万円(4人目)までの出産祝い金や20万円の結婚祝い金、妊娠・出産交通費助成等、金銭面での支援を拡充した結果、出生率向上という成果が出ています。
■民間団体は「先駆性」と「活動内容の充実」を評価
民間団体は2団体が大賞を受賞しました。
【特定非営利活動法人・フローレンス(東京)】
http://www.florence.or.jp/
病時保育を手がけるNPO法人フローレンス様。保育スタッフが会員の自宅に赴き、病気になった子どもの面倒をみてくれます。病児を受け入れる施設はほとんどないため、働くパパママにとって強い味方となっています。ひとり親家庭を対象とした低料金サービスも開始。提供エリアは都内17区まで拡大しています。
【特定非営利活動法人・NPO昭和チャイルド&ファミリーセンター(東京)】
http://www.npo-showa.net/index.php
NPO昭和チャイルド&ファミリーセンター様の母体は昭和女子大学。大学のある世田谷区と連携して、大学の財産である「施設」「人材」等を活かし、認証保育所である「子育て広場」や、一時預かり事業などを手がける「子育てステーション世田谷」を運営しています。
■子育て支援のトレンドは「利用者目線」による「地に足のついた」制度
大賞を受賞した団体の特徴は、「使い勝手の拡充」に向かっていること。つまり「制度があっても使えない」のではなく、「制度が使える環境を整備する」すなわち「利用者目線」による柔軟な制度設計が進められているということです。新規の制度・アイディアの創出よりも、既存制度をいかに活用していくかという点では、まさに「地に足のついた」、充実度・持続性を重視する結果となっています。
まずは「なぜ自社の制度は使いづらいのか」を考えてみると、次へのヒントが見つかるのではないでしょうか。
2008年12月1日付「日本経済新聞」より
「にっけい子育て支援大賞」HPはこちらをクリック
http://www.nikkei-events.jp/honor/kosodate.html