安心なお産 | 考えてみよう

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【妊婦が受け入れられない】

あなたはどこで産まれましたか?

ほとんどの子どもが病院で生まれる現在。ところが妊婦を受け入れる病院の環境は、残念ながら整備されているとは言いきれません。

ここ最近では、比較的環境が整備されていると思われていた東京都で、重い脳障害を起こした妊婦が受け入れを拒否される事例が相次ぎました。

また厚生労働省が2008年11月に発表した、全国の周産期医療ネットワークの運用状況などに関する調査結果では、2007年度に妊婦の受け入れを断ったことのある総合周産期母子医療センターは、全体の7割に上ることが分かりました。

そんな中、助産師の協力のもと、通信システム活用や電話相談での対応を始め、安心なお産の実現に取り組んでいる自治体があります。


【ねっと・ゆりかご】

岩手県遠野市は、2002年4月以降、常勤の産婦人科がいない「無医村」の状態になりました。最寄の産婦人科までは車で約40分。そんな妊婦を支えるために開設したのが、「ねっと・ゆりかご」です。

健康福祉施設の一室を改装した助産院と、遠野市の近隣である盛岡市や花巻市の医院・病院とを遠隔健診システムで結び、テレビ電話で妊婦と産科医がやり取りをできるようになっています。胎児の心拍数や妊婦の腹部の張り具合などのデータは、インターネットや携帯電話で産科医に送信され、不安を解消する適切なアドバイスが受けられるようになっています。妊婦からは「移動で疲れることもなく、待ち時間もない」と好評です。

遠野では古くから、地域全体で出産や子育てを支えあう「お産文化」が発達していたそうです。無医村になった今、情報通信技術が、お産文化の復活に役立っています。


【深夜の電話相談】

北海道札幌市では、2008年10月から、病院の閉まる午後7時から翌朝7時まで、妊婦からの電話相談を開始しました。電話に応じるのは、2人の助産師。話を聞いて軽症の場合は翌日に医療機関にかかるよう勧め、緊急の場合は夜間救急に対応している病院への受診を即座に手配します。

北海道内では医師不足により、救急医療の忙しさが慢性化しています。その結果、軽症の患者への対応で、緊急の手術が必要な患者に対する余力が乏しくなる悪循環に陥りました。そこで札幌市産婦人科医会は札幌市に対して、夜間急病センターへの産科医設置を提案。しかし市は財政難などを理由に、産科医は置かないことを決定。代替案として、電話相談の試行を始めました。

施行後1ヶ月での電話相談は181件、そのうち夜間救急で対応したのは28件でした。医会では「救急にはあくまで産婦人科医が対応すべき」との立場を強調、救急医療を巡る試行錯誤が続いています。


【命が守られる環境へ】

出産は妊婦、そして生まれてくる子どもにとって、命がけの行為です。「財政難」という理由で、出産に関する支援を減らすことは、母子の命を軽んじていることではないでしょうか。少子化への対策が叫ばれる中、お産すら安心してできない環境は、ますます「子どもを産み育てることは大変」と考えるパパママを増やしてしまいます。

夫婦の宝、そして社会の宝でもある子どもたちを安心して産み育てることができる環境づくりは、すべての人が安心して生活できる環境につながっていますよね。


2008年11月17・21日付「日本経済新聞」より


岩手県遠野市HPはこちらをクリック 

http://www.city.tono.iwate.jp/

北海道札幌市HPはこちらをクリック

http://www.city.sapporo.jp/city/

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