保育所の転換 | 考えてみよう

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あなた、もしくはあなたのお子様は、保育所に通いましたか?

その保育所は、公立だったでしょうか。それとも民間だったでしょうか。

働くパパママにとって欠かせない存在である保育所は、転換期を迎えています。


2008年4月1日時点の保育所数の統計で、施設の広さや職員数などで国の基準を満たした民間の認可保育所数が、市町村などが運営する公立保育所数を上回りました。背後には、働く女性の増加や、官から民への業務委託等があるようです。

現在の保育所は、どのような実態となっているのでしょうか。


■保育所の利用は増えている

「子どもの数が減っている」と言われて久しい状況が続いています。ところが、保育所を利用する子どもは増えているのです。

2003年の保育所の定員は199万人、利用は192万人でしたが、5年後の2008年には、定員212万人、利用は202万人と、ともに約10万人の増加となっています。

これに伴い保育所施設数も、年々増加しています。

保育所数は22,909ヶ所で、前年から61ヶ所の増。このうち公立は11,328ヶ所と、前年比-273ヶ所。一方で私立は11,581ヶ所と、前年比+336ヶ所となっています。公立の減少よりも私立の増加のほうが上回っているため、全体数は増加。初めて民間が公立を上回る結果となりました。


■保育所を利用する子どもが増えたのは・・・

子どもの数が減っているにも関わらず、保育所を利用する子どもが増えているのはどうしてでしょうか。

それは働く女性が増えているためです。

厚生労働省「平成20年厚生労働白書」によると、パパママとも働いている「共働き世帯」の数は、1997年以降、男性雇用者と専業主婦の妻からなる「片働き世帯」の数を上回りました。また「夫は仕事、妻は家庭」という考え方については、2007年には「反対」(52.1%)が「賛成」(44.8%)を上回りました。このように「女性が子どもを授かった後も働く」ことは、考え方においても、雇用の現場においても、当たり前になっています。

このため、パパママが働いている間、子どもを安心して預けることのできる保育所への需要が高まっているのです。


■民間の運営する保育所が増えたのは・・・

保育所に対する国民のニーズが高まっているにも関わらず、

公立保育所が減っているのはどうしてでしょうか。

それは民間がニーズを察知し、対応していることもありますが、

財政難に直面した自治体が、運営を民間に

委託・譲渡していることも、大きな要因です。

福岡県福岡市では、認可保育所約170ヶ所のうち9割程度が民間です。市はコスト削減を目的として、公立を民営化した他、民間に保育所をつくる土地を貸し出す等、積極的な民営化を進めています。

公から民への移行により、福岡市は年間約6,000万円の補助金を削減できるとしています。全国で最初にPFI方式での保育所を開設した東京都三鷹市でも、3割のコスト削減効果があると試算しています。

民間の保育所は公立のように予算などに縛られないため、「保護者の要望への対応が早い」という利点から、民営化を進めている自治体もあります。


■大切なのは「子どもの権利を守ること」

パパママのニーズに応じて保育所が増えることは素晴らしいことです。しかし、健やかに育つ環境が整備されていなければ、安心して預けることはできません。コスト削減だけを目的に、公から民への移行が進むのであれば、手放しに喜んではいられません。

「保育所の転換」が、より一層「子どもの権利を守る」転換になるよう、しっかりと見ていかねばなりませんね。


2008年11月3日付「日本経済新聞」


厚生労働省「保育所の現状(平成20年4月1日)等について」はこちらをクリック

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2008/08/h0828-1.html

厚生労働省「平成20年厚生労働白書」はこちらをクリック

http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/08/index.html

日本経済新聞HP「NIKKEI NET」はこちらをクリック


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