【2006年の日本の外国人登録者は208万人】
【日本の人手不足解消には今後50年で1,000万人の外国人受入が必要】
■「人材鎖国はもう限界」
2008年5月11日付「日本経済新聞」のコラム「中外時評」の見出しです。
「外国人と日本社会との摩擦を嫌い政府が続けてきた“人材鎖国”」政策は、本格的な少子高齢社会を向かえ、様々な分野で人手が足りなくなる今後の日本においては、「もはや限界ではないか」と論じています。
自由民主党の外国人材交流推進議員連盟では、「看護師、介護士のほか森林保全や農業などの分野でも外国人の助けが要る」として、50年で1,000万人の外国人受け入れを念頭に、具体策を検討しています。
50年後の日本の総人口は9,000万人を下回る見込みですので、9人に1人以上が外国人、となれば、どうにか、日本が世界に一定の存在感を保ちつつ、国を存続させていくことが可能、という試算になります。
ところが現在の日本の外国人登録者は208万人(2006年)。
一方日本の総人口は、2005年の国勢調査では1億2,700万人ですので、外国人の割合は、100人に1人強に過ぎません。
50年間で外国人を208万から1,000万人、現在の5倍に増やす・・・可能なのでしょうか?
■1割が外国人
住友化学株式会社の今春の新卒採用者約140名のうち、1割の14名は外国人でした。
つまり50年後の日本が目指す姿に近い状態です。彼らは海外事業を担う幹部候補としての採用であり、人材獲得競争が激化する中、研究開発担当者を安定的に確保する狙いもあります。
つまり、事業の国際化への対応と、人手不足を解消する手段として、新卒外国人が増えているのです。
外国人労働者を増やすことが目的ではなく、企業の成長発展を考えた結果、必然的に外国人が増えた。
「ダイバーシティ」という言葉を頭で理解しようとするより、とても自然な流れのように思えます。
■企業を救う外国人
住友化学の場合は新卒ですが、経営トップとして活躍する外国人もいます。
日産自動車株式会社のカルロス・ゴーン氏は日産V字回復の立役者として有名ですが、ここでは2人、紹介します。
1人目はグレン・ガンペル氏。
大阪市にあるユニバーサル・スタジオ・ジャパンを運営する、株式会社ユー・エス・ジェイの、代表取締役社長です。
ユニバーサル・スタジオ・ジャパンといえば、火薬の不正使用や食品の安全性の問題で、来場者数が激減、破綻寸前に追い込まれた時期もありました。
それを社長就任からわずか2年で再建し、東証マザーズへの上場も果たしたのが、このガンペル氏です。
米国映画業界ではその名を知らぬ者がいない、元ユニバーサル・スタジオ会長である、故ルー・ワッサーマン氏に声をかけられ、米ユニバーサル・スタジオ・ハリウッド法務・事業担当副社長に就任。
エンターテイメントの真髄を学びます。
米MCAで、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの交渉を担当したことがきっかけとなり、2004年、社長に就任します。
当時は不祥事が多発し、設備投資もできなくなるほど、収益が落ち込んでいました。
ガンペル氏は、資金調達を進めると同時に、第三セクターのお役所体質を一掃。
一方で東京ディズニーランドのやり方を学ぶ等、リサーチを徹底的に行い、設備投資を、メガアトラクションを対象とする大規模投資から、女性や家族層に好まれる、イベント重視に転換します。
これらの施策が功を奏し、2006年には来場者が上向きに反転。2007年3月には、上場を果たします。
ガンペル氏は、ユー・エス・ジェイを救い、テーマパークという「感動」と「サービス」を提供してくれている人です。
2人目はスチュアート・チェンバース氏。
2007年から日本板硝子株式会社の副社長を務めており、2008年6月の株主総会ならびに取締役会を経て、取締役代表執行役社長兼CEO(グループ全体の執行統括を担う)に就任します。
チェンバース氏は、日本板硝子が買収した、世界ガラス3位の英ピルキントンから迎えられました。
ピルキントン買収により、世界的に注目を浴びた日本板硝子は、海外向け売上高が全体の8割、外国人株主が4割まで増加しました。
顧客と株主への対応の複雑化に「日本人の手には負えない」と感じた藤本勝司現社長は、「外部の知恵を入れて経営を学びなおすことが必要」と、チェンバース氏の就任を決断します。
チェンバース氏は、「激化する世界競争を勝ち抜くためには、日本人中心の企業統治体制では通用しない」ことを教えてくれている人です。
2人はまさに、外国人の視点を日本に持ち込んだことで、日本企業の経営を救いました。
つまり、企業を再建し、新たなステップを踏み出す手段として、外国人経営者が選ばれたのです。
■開国が日本を救う
【2006年の日本の外国人登録者は208万人】
【日本の人手不足解消には今後50年で1,000万人の外国人受入が必要】
「まず数ありき」ではなく、国際社会における日本の存在感、世界視点が求められる産業地図の中での企業経営を考えれば、外国人がいることは必然になるのではないでしょうか。
「今後の少子高齢社会を踏まえた、企業のグローバル化と持続的成長を実現するための、戦略的人事」これを本気で実行しようとすれば、いやがおうにもダイバーシティは推進されますね。
2008年5月11・12・13日付「日本経済新聞」
「日経ビジネス」2008年5月12日号
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